今ではあまり良く言われなくなったグリュ版
ザッケローニは日本から消え去った。
代わりに来たのはアギレ監督だ。
それはともかくとして、今日はボッケリーニ(Luigi Boccherini 1743-1805 イタリア)のチェロ協奏曲第9番変ロ長調G.482。
はっきりした作曲年はわかっていない。1785年ころにウィーンで出版されたという説がある。
優れたチェロ奏者だったボッケリーニは、10数曲のチェロ協奏曲を残している。そのなかでも、この第9番は最もよく知られている作品。しかしながらこの曲、現在2種類の版が存在する。
残っている正確なこの曲の楽譜は、ドレスデンにある19世紀末の写本のみで、これは1949年に原典版として出版された。
しかし、原典版出版のずっと前の1895年。同じ写本からチェリストのグリュツマッハーが校訂版を作った。グリュツマッハー版である。これによって、この作品は広く知られるようになった。
しかし、グリュツマッハー版は第2楽章(ト短調。アダージョ・ノン・トロッポ)でボッケリーニの他のコンチェルトの楽章を転用していたことなどが判明。さらに過度な装飾も施されていることがわかった。
1949年に原典版(シュトゥルツェッガー版)が出版されてからは、原典版で演奏される機会が多くなってきている(第2楽章は変ホ長調。アンダンテ・グラチオーソ)。
磯山雅氏はグリュツマッハー版のことを、“ボッケリーニの主題によるロマン的幻想曲”だと言っているが、巧みに“編曲”されているグリュツマッハー版の方も、いまでも忘れ去られずに残っている。
でも、この中間の短調が曲の表情を豊かに
そのちょっと悪者扱いされているグリュツマッハー版による、ヨーヨー・マのチェロ独奏による演奏を。指揮はズッカーマン、管弦楽はセント・ポール室内管弦楽団。
落ち着いたチェロの語り、陰影の表情がしっかりとしているオーケストラ。決して厚化粧のように感じない、清潔感漂う演奏だ。
1982録音。ソニークラシカル。
このコンチェルト、第3楽章がどうも軽い。となると、私としては、短調のアダージョが中央の楽章にあるグリュツマッハー版の方が、実はしっくりくる。まがい物が好きじゃいけませんか?
なお、チェロ協奏曲第9番とほぼ共通の楽想のチェロ・ソナタ変ロ長調G.565が、1900年代半ば(1962年以前だという)に発見されたそうで、このチェロと通奏低音のためのソナタが協奏曲第9番の原形と考えられているという。
それがどうしたと言われると、いえ何でもありませんと答えるしかない私だが……
うん、違うと言われても、母ちゃんはこの人だ!って感じですよね(笑)