それは弱い口蓋痛から始まった
9月22日・月曜日。
この日は在宅勤務日だったので、出社する日とは一緒にする必要もなくゆっくり寝ていて構わないのだが、ニワトリのコッコちゃんような気質と性分の私はいつもどおり5時に目を覚ませた。目覚まし時計との張り合いってもんだ。
今日は特別な日である。
帯状疱疹ワクチンの2回目の接種を午後に受けに行くのだ。だからこそ、この日を在宅勤務に充てたのである。
2回目を打ち終えたあかつきには、少なくとも10年近くは帯状疱疹の痛みに襲われる恐怖から解放されるのである、理論上は。
そのためにも景気づけに前日の夕食はトンカツを揚げて食べた。
私が豚肉を叩き、衣をつけ、揚げた。
もうトンカツも私の調理レパートリーに定着した。
昼にはえび天を食べ、夜はトンカツ。このように、ワクチン接種に耐えうる体作りに励んだわけだ。
ところが、この日の朝はめずらしくのどにちょっとした痛みというか違和感がある。
いや、のどというよりはノドチンコの前の辺り、つまり口蓋に辛さを感じるような違和感があったのだ。
でも、こういうことはたまにある。
無防備なライオンが大口を開けて寝ているような感じで、口呼吸中心に寝てしまうとこういう『モーニング・ペパー・マウス』状態になることはある。
そんなのは何か食べて、歯磨きをすれば何ごともなかったように戻る。
そのとき戻らなくても、半日もすれば治る。
それでも治らないときは風邪っけの状況に投げ込まれたことになる。
どうせすぐに治るだろうとは思ったが、この日は午後からワクチン接種という一大イベントが控えている。
そこで念のため体温を測ってみた。
ピピピピピ、ピピピピピ。
そして「ひょえぇぇぇぇ~」。
午前5:00 37.1度
微熱があるではないか!
むかしの水銀式の体温計なら、赤字ラインを突破だ。
私は熱に弱い。
ちょっと上がってもオカンに、いや、悪寒に襲われる。
が、このとき、37.1度も あるのに口蓋の違和感以外はなんの異状も感じなかった。
まあいい。
ワクチン接種は通常は37.5度以下なら可能だと、説明書きに書いてあった。
まだ許容範囲内だ。
そう思いながら、目玉焼き(片目)と、ウインナーとピーマンの炒め物を作り、炊きたての新米をご飯茶碗で2杯食べた。ほら、どー考えても元気だ。
そのあとは夏に別れを告げるため、というよりも妻から「もう使わないんじゃない?」と暗にしまうよう匂わされ、扇風機2台を箱に入れ押し入れ上の棚にしまった。
このとき7時。
朝から精力的な働きぶりではないか!
この肉体労働のあとは(どのように緩衝材をセットするかという頭脳労働も伴う)いよいよもって会社の仕事をし、それを終えて、また体温を測る。
午前9:00 37.6度
まずい。
ワクチン接種可能な体温を超えている。
いやいや、たまたま誤差の範囲に違いない。
だって、私は相変わらず体にだるさやのどの渇き、悪寒などといった症状はまったく感じないのだから。
おでこを触っても熱があるように感じないし、デコピンしても正しき鋭い痛みを感じる。
悶々とした気分ではあるが、でも『測れば熱がある』という、ただそれだけの状態。
午前10:00 38.0度
ええっ~~!38度だってぇ?
こんなんならば、どう考えても体はブルブルガタガタしてくるに違いない。
でも、私にはなんの自覚症状もない。
だが、アレグロ(速く)で体温が上がっている恐れが。
午前11:00 37.6度
ほぅら、下がった。
このまま下がるに違いない。
予定通り、接種しに病院に行こう。
午前11:30 37.8度
やばいではないか。
また上昇気流に乗ってしまった。
果たしてどうするべきか。
早めの昼食にして、善後策を考えよう。
私はマルちゃんの赤いきつねを食べた。
が、なんとなく気持ちが落ち着かず、お揚げは半分残した。
解熱剤でその場をしのごうとする愚策
さて、接種しに行くかどうか?
上に書いたよいうに、私には熱が高いこと以外にほかに症状がないので、コロナやインフルエンザかもしれないとはまったく思わなかった。
問題なのは熱だけなんだから、いっそこと解熱剤で下げて受けようか?
ホントの体温と、解熱させた体温。
高校生物で習った『真の光合成と見かけの光合成』という言葉が頭に浮かぶ。
いやいやそんなことは本末転倒。
見かけで熱を下げて、ほぅら平熱ですから大丈夫と接種を受けて、わが身に何か起こったらたいへんだし、病院にも迷惑をかける。
だが、このまま熱が高い状態で行ったところで、決まりによって接種してくれない可能性が高くなりつつあるし、熱があるのに病院に行くというのは非常識なことであることには違いない。
でも、今日を逃すと次に打つめどが立たないし……
最終的な判断をするために、また熱を測ってみると……



