物おじしない人なつこい子
皆川おさむ――あなたは「黒猫のタンゴ」をご存知か?――の訃報記事が新聞朝刊に載っていた先週の金曜日。
この日は道新花火大会が開催されるということとはまったく無縁に、仕事が終わりいつものように札幌駅で江別行きの193M 列車に乗り、駅に着いて暑い中、家に向かって歩いた。
翌日の新聞によると、この日、札幌市中央区では今季最高の35.7℃を観測したそうだ。
江別は前の日ほど暑くはなかったようだが、それでも北国育ちの私には十分に暑い。
ドルーピーを陥れるために数々の策を講じるがことごとく失敗し疲労困憊しきっているスパイクのように、体力も気力も限界になった姿で私は歩き続け、途中の交差点で歩行者信号が青に変わるのを待っていたときのこと。
自転車に乗った小学1年生か2年生くらいの男の子が横断歩道を渡るために私の横に停まった。
その後ろには、もう一人、その友だちらしき男の子も停まった。
私の横の男の子の自転車の前輪が車道に飛び出しているので、もし左折車が来たら危ないと思って見ていたら、その子と目が合った。
しかし、左折車が来る様子もないので、私は何も言わず、視線を歩行者信号に戻した。
男の子の視線の気配を感じ続けたのでそちらを見ると、ニコッと笑って私に言った。
「おじさん、なにかの先生?」
「えっ?」
「先生じゃないの?」
「違うよ」
後ろで同じく自転車にまたがっている子が言った。
「じゃあ、どっかの店長さん?」
なぜ、先生じゃないとしたら店長ではないかと思うのか、そのあたりがわからないが「じゃあ、駝鳥さん?」と言われるよりは的を得ている。
私は答えた。
「ううん。会社に勤めているんだよ」
そりゃそう言うしかない。
「サラリーマンだが、もう会社を定年になって、いまは第2の人生として別な会社で嘱託社員として雇われているんだ」と答えたところで、彼らには理解できないだろう。
信号が青になって、私たちは横断歩道を渡った。
渡ったところでまっすぐ先に行こうとしていた2人に、右に曲がる私は「じゃあ、気をつけてね」と声をかけた。
最初に私に声をかけた方の男の子が「えっ、一緒にまっすぐ行くのかと思った」と残念そうに言った。
不思議な出来事というか、古き良き時代の日本の下町的出来事だった。
ほのぼのしたやりとりだが、危険もはらむ
今回は微笑ましい会話だったが、しかし、いまの世の中、悲しいことに油断はできない。
「自転車に乗って信号が青になるのを待っていたら、このおじさんが『おじさんは先生だから、ついてきなさい』って言ったんです」なんて、突然陥れられる恐れだってあるのだ。
それにしても、なんで先生だと思ったのだろう。
この日の朝刊に、道東地区で自校の女子生徒2人と性的行為をした高校教諭が懲戒免職になったとか、校内で着替え中の女児を盗撮した疑いで埼玉の小学校教諭が逮捕されたって記事が載っていたが、そういう人たちと同じ怪しさが私から漂っていたってことじゃないだろうな……
まあいい。
私のことを「おじいさん」と呼ばなかったことに感謝したい。
信号を待つときは、あんまり車道の方まで行かないようにね。
この出来事のおよそ4時間前。
この日の昼に私が食べたのはファミリーマートの「ガーリックチップが決め手の大きな鉄板焼ハンバーグ弁当(にんにく醤油仕立て)」(まあ、長いお名前ですこと)。
ファミマのハンバーグの弁当はこれまでもいろいろ食べているが、これは初めて。
この弁当の子孫ってものだろう。
ハンバーグはとてもジューシーで(ジューシーすぎるくらいだ)、味付けもすばらしい。
が、レンジアップの時間が長すぎたのか、ご飯がやや硬めになってしまった。




