それは第3楽章のことですね
 私は行けなかったが-って、億劫がってもう何年も札響の定期演奏会に足を運んでいないのだが-先日の10月7日と8日の両日行なわれた札幌交響楽団の第656回定期演奏会のバルトークは(いや、きっと『バルトーク以外も』だろう)すばらしい演奏だったようだ。

 X(旧ツイッター)のフォロワーさんたちもそう呟いていたし、15日の北海道新聞のコラム「卓上四季」でも取り上げられた。「卓上四季」でこのような話題が載るのは珍しいことではないだろうか?

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 この文を読むと、ホリガー/札響による「弦チェレ」の演奏がいかに素晴らしかったかがじゅうぶんに伝わってくる。

 バルトーク(Bartok,Bela 1881-1945 ハンガリー)の「弦楽器、打楽器とチェレスタのための音楽(Musik fur Saiteninstrumente, Schlagzeuge und Celesta)」Sz.106(1936)は、実は私がバルトークという作曲者を知るきっかけになった作品。1974年3月23日(土)の20:05からNHK-FMで放送された(その前の5分間はニュースだ)「シンフォニーホール」をエアチェックしたのだった。岩城宏之/NHK 交響楽団の演奏で、「弦チェレ」の前には柴田南雄の「コンソート・オブ・オーケストラ」も流れた(尾高賞の受賞作品)。しかし、これまで生演奏で聴いたことがない。「管弦楽のための協奏曲」は何回も札響定期で聴いているのに、である。きっと私が札響定期に通っていたころは、この曲が取り上げられたことはなかったと思う。もしかすると、今回が札響初演なのかもしれない。

 バルトークは1936年の夏に指揮者の P.ザッヒャーにスイスのグリュイエールにある彼の山荘に招待されたのだが、そのときに着想されたのがこの曲。ブダペストに戻ってから完成、翌年1月にザッヒャー指揮のバーゼル室内管弦楽団によって演奏されたが、この初演は大成功を収めたという。そのすぐの10日後にはフルトヴェングラーがベルリン・フィルの定期演奏会で取り上げ、バルトークは一躍有名人になった(定期演奏会の演目ってそんな直前に決めてよいものなのだろうか?)。

 大成功するには渋すぎる曲のようにも思うが、考えてみれば私もこの曲でバルトークに魅かれ、いまに至っているのだった。

 この曲では、私はやっぱりブーレーズ/CSO の演奏が好きだ。
 札響定期の日に、「今日は定期演奏会か。こっちはこっちで楽しもう」と、私は自室でイソップの「酸っぱいぶどう」の話のように、この CD を聴いたのだった。

BartokMandarin