先月のことだが、マイカーの6カ月点検のためにディーラーに行った。
13時からの予約だったが30分ほど早めに行って車を預け、私は歩いてイオンモール札幌苗穂に向かった。昼ご飯を食べるためだ。 昼のピーク時間も過ぎているし(12:50だった)、平日だ。そんなに混んでないだろう。
確か1階にそば屋があったはずだ。そう思っていくと、店はそれほど広くないうえに、ほぼ席がうまっている状況。私が一人で食事をするには耐えられるような環境ではない。心理的に安心・安全に食事ができない。
ラーメン店が2階にあるようだ。
行ってみると、すすきのにある「満龍」ではないか。満龍のラーメンを私は食べたことはないが、少なくともススキノの店の評判はむかしから良い。
そして店の前にいって、私は小躍りしたい気分になった。
そこはフードコートだったからだ。
一人で外で食事をするときに、私はとにかく店の中で居心地の悪さを感じ、ひどいときには食欲が急激に落ちる。
去年の帯広の「鳥せい」のときも、このあいだの「菅家」のときもそうだった。
店の人が私に注目しているわけではもちろんないが、カウンターで至近距離で対面する形になることが、妙なプレッシャーになる。カウンター席で両隣に先客がいるそのすき間に座らされることに閉所恐怖症的な思いに襲われる。テーブル席では相席のリスクに常にさらされる。
料理が運ばれてきたら早く食べなきゃという急き立てられる感じもつらい。それこそ、料理の味がしないほどだ。いや、しないのではなく、まずく感じるようになってしまう。
FCならリラックスして食事ができる
でも、フードコート-つまり今日のタイトルの『FC』はフライドチキンではなくフードコートのことなのだ-ならよほどのことがない限り、相席になることはないし、とにかく空いている自分の好きな席を使うことができる。広くない店内で待っているときや食べているときに至近距離にいる店の人の存在は、フードコートならないし、どこに視線を向けて過ごすか悩まなくて済む。ただただ、ぼーっとしてりゃいいのだ。フードコートにいる人たちは私をじろっと見たりはしない。そもそも私のことなど視野に入っていないのだ。
ふつうならフードコートはがやがやして落ち着かない場所だろうし実際物理的にはそうだ。誰かと一緒なら私もフードコートを選択することはあまりないかもしれない。しかし、自分一人で食事をするときにはフードコートほどリラックスできる『店』はない。早く食べなきゃという急き立てられる感じもない。
そう思って思い起こしてみると、出張が多かったころに新千歳空港でよく利用していた「ちとせラーメン」(現在は別な店にかわっている)は、味もどストライクの私好みだったが、フードコートの店だった。意識していなかったが、だから私は心置きなくラーメンを味わえたのだ(新千歳空港の「弟子屈」もときおり利用したが、ここは昼どきを外せば適度な混み方で、店も広めで店員とも適度な距離感があり、「菅家」で感じるような圧迫感を感じないで済む)。
すっかり心が軽やかになった私は、おすすめのメニューらしい『極』のなかからではなく、ベーシックかつ王道的に『ふつう』のしょうゆラーメン(830円)を頼んだ。小ライスを頼むか迷ったが、そしてかなり食べたかったが、帰りの運転中におなかがごろごろしては非安全運転になると考え、しょうゆラーメン単品にした。
ブルブル端末をもらい、周囲2メートルは他の客がいない過疎地帯の席を選ぶ。
優雅に水を紙コップに注ぎに行き、あとは出来上がりのブルブルを待つだけだ。視線をどこにやればいいのかとか、どんなスタンスで座っていればよいのかとか、とにかく(誰も見てないのはわかっているが)人目を気にしないで気を遣わないで過ごせるのが、この上なく幸せである。
台車で西山製麺の麺を納入しに来たお姉さんの姿も、ほほえましい気持ちで眺めることができる。
「満龍」を利用するのが初めてなので知らなかったのは当たり前だが、ここは『麺恋処』であり、イメージキャラクターの名前は「めん子」で(ま〇子でなくてよかった)、初代と二代目がいる。二代目がいるが、レシートに印刷されていたのは初代めん子だった。
姿も良ければ、味も良し!
ほどなくして私に預けられた端末が光り、震える。
ラーメンを取りに行き、その素朴ながらも美しい眺めにうっとりする。食べると……うまい!
うまい!これが「満龍」の味なのか!いやいや、ホールインワン的に私好みの味だ。
この店が近くにあるなら東苗穂に引っ越したくなるほどだ。
食べ進んでスープの水位が下がると『満龍』の文字が誇らしげに表れるのも感動的だ。
ご、ご、ご、ごちそうさまぁ~!
食器を下げるときに厨房のお兄さんと目が合ったので「ごちそうさまでした!」というと、「ありがとうございました!」という感じの良い返事が。
このくらいの接触度合いがちょうどいい。
なお、車の点検結果は異状なし。
事前にわかっていた後ろのナンバー灯の電球が1つ切れていたのを交換してもらい、その代金143円を払って帰ってきた(点検パックに加入しているので、点検代はかからない)。
ブクステフーデ(Dietrich Buxtehude 1637頃-1707)のコラール前奏曲「かくも喜びに満てる日(Der Tag, der ist so freudenreich)」H.4-3-3,BuxWV.182を。
廃盤 ↓