久しぶりの石勝線
先週は、珍しいことに出張に行って来た。
行き先は帯広である。 札幌駅を午後に出発するおおぞら7号(写真は別な特急。イメージである)に乗って、帯広には17時過ぎに到着。
どうでもよいことかもしれないが、新得駅の駅名標は、サッポロビールの文字がすでに消えていた。
翌日一緒に行動する同僚は帯広入りが遅くなるので、この日は一人。ホテルにチェックインしたあと、夕食を食べに出かけた。
先月は妻とプライベートな旅行で帯広に来て、美珍楼に行こうとしたら建物そのものがなくなっていて、思いつくまま鳥せいに行った(写真は、今回撮った美珍楼跡地)。
「まいったなぁ。さてどこに行こうか?」としばし途方にくれたあと、百里香に行けばよかったのに、なぜか鳥せいに行ってしまったのだ。
建物が古いというだけではない清潔感のない店内に、なんとなく接客もなおざり。
むかしこの店に来て、快い気分にならなかったことを、いまさらながらに思い出した。
そして、1時間も経たずに店を後にした(十勝清水の鳥せいには好印象が残っているのに……)。
そんな妻は、私に「じゃあ、今日は百里香に行ったら?」と言っていた。 なので、私は百里香に向った。
我ながら不可解な行動
店の前のお品書きのようなものを見ると、しかし麻婆豆腐やら餃子は、その一皿だけでおなかがいっぱいになりそうで、ちょっと無理かなと、店に入るのがためらわれた。 そして、何を思ったのか、私は「鳥せい」に向かい、そのうえ店に入ってしまったのだ。やってはいけないと思えば思うほど、それをやってしまうって魔物に憑りつかれたのだ(しかもこの日は、昼も鶏を食べた。弁菜亭の知床とりめしである)。
通されたのは店の奥のカウンター席。
「カウンターへどうぞ」と言われたが、どこに座っていいのかの指示は無し。
まあいい、適当に座った。
カウンターの目の前が焼き台。
これは環境が悪い。まいった。
煙は流れてはこないが、それでも服に臭いがつく。
それより、焼いているだ男性-この人が店主のようで、いちばん偉そうだ-が、ほかの店員をとにかく叱りつけている。「順番違うだろっ!」「早くしろって!」「何やってんだよ!」etc,etc……
見ていて落ち着いた気分になれない。
急速に食欲がなくなり、むしろ胸やけがしてきた。ただでさえ店で独り飲みするのが超苦手な私(手持ちぶさたになる)。そういったストレスが一気に私を襲ったのだ。頭の中にアルビノーニのアダージョが流れる。
入れ間違えたのはあの『焼き手』
そのときカウンターの先客の女性が、「食べきれなかった分を持ち帰りにしてほしい」と店員に頼んでいた。
そっか、その手があったか。私も、気が利かないのか、愛想っけがないのか、接客がなっているとはいえない店員に「頼んだ分はそのまま持ち帰りにしてください」と、料理-鶏精肉、心臓、砂肝の串-が出来上がる前に、早々にお願いした。
持ち帰り用に袋に入れられた焼鳥を持って、なんとも不幸せな気分で店を出た。
店で口にしたのはお通しの枝豆のうち数莢と、ハイボール1杯だけ。
客の前で平気で店員を叱りつける焼き手、気の利いた接客をしようとする意気込みゼロの店員、女性客の笑い声はしていたもののなぜか暗い雰囲気の店内……すっかり気持ちが害されたのだった。
しかも持ち帰った串には、間違って鶏精肉ではなく砂肝が(ダブルで)入っていたし……
むかしこの店に行ったことがあると上に書いたが、帯広に住んでいたときも、同僚たちと飲むのに鳥せいを使ったことは一度か二度しかなかった。
まあ、あの居づらさは何人かで行っても変わらないから、自ずと足が向かなかったのだろう。
あとから百里香のメニューをネットで調べると「チャーシュー」や「ザーサイ」をあった。
チャーシューとザーサイでハイボールを飲んで、〆に丸鶏醤油ラーメン……そうしておけばなんて素敵な帯広の夜になったことか!あのとき、店の前でもっときちんとメニューを見ればよかった……
ホテルの部屋で、鶏精肉ではなく冷めて硬くなりつつある砂肝を噛みながら、セコマで買ったハイボールを飲んでいると、自分はなんて愚かな間違いを犯してしまったのだろうと、悔やんでも悔やみきれなかった。