西村は札商で教師を務めていたことは書いたが、生徒たちのいろいろな相談に対し力を尽くしたという。
……和田という生徒が校内にハーモニカ・バンドをつくり、育てていたが、ある日久蔵に、一度でよいから大衆の前で演奏したい旨を申し出た。聞くや否や、久蔵はさっそく時計台の責任者に交渉し、その館内での演奏ができるよう万端を手配した。当時、時計台内において、このような催しの例はなかったが、立錐の余地もない盛況裡に演奏は終わった。
このハーモニカ・バンドが札商音楽部を生み、この音楽部から札幌交響楽団の指揮者、荒谷正雄が生まれた。この荒谷氏は「私の音楽進学に蔭ながら応援してくれたのが西村先生だった」と述懐している。
その荒谷正雄が指揮した札幌交響楽団第1回定期演奏会(1961年9月6日)のライヴがCD化されている(私は未購入)。
プログラムはモーツァルト/「フィガロの結婚」序曲、J.C.バッハ/シンフォニアOp.18-4、シューベルト/「ロザムンデ」より、そしてメインはベートーヴェンの交響曲第1番である。
幸いなことに、私は第300回の記念となる定期演奏会で、荒谷の指揮によるJ.C.バッハのシンフォニアの再演を聴くことができた。

