外見はヒザラガイのように右上の歯ぐきに張り付いているが、じつは根っこは歯ぐきの中にあるけど、ほとんどグリップされていなくて、あっさりと抜けてしまった、その抜歯の儀式をとりおこなってか1週間経ったこのあいだの火曜日に、歯科医院に行った。
抜歯後の経過観察と消毒のためである。
医師が言うには「たいへんきれいです」ということだった。
いや、私の顔ではなく(それは言われるまでもない)、抜歯後のあとのことだ。
自分で確かめていないが、穴はふさがっているものなのだろうか?
それともイクラ-この間の出張の帰りに新千歳空港で買ってしまった-が1玉入り込めるくらいぽっかりと開いているのだろうか?いや、まさか、大きくてもヒジキが潜り込む程度だろう……
でも、痛くなければ抜いた側で物を噛んでもいいと言ってくれたのでふさがっているのだろう。
ところで、医者はこう尋ねてきた。
「MUUSANさん、入れ歯は左と右別々にしますか?それとも左右つながったものにしますか?」
彼女は私にウソをついたのか?それとも冗談だったのか?
ラルキブデッリの演奏で。
1990年録音。ソニークラシカル(原盤:Vivarte)
左だけでも早くしたいのに……
私は医師に尋ねた。
「別々の方ですかね。連結すると前歯の裏に金具を渡すことになるので違和感があります。ただ別々にすると入れ歯に横向きの力も働くので、縦方向の力が弱くなります」
しっかりしていた方がいいが、違和感も困る。それに前歯は差し歯だ。それが老朽化してまた作り直すときにまためんどくさいことが起きそうな気もする。
やはり左右独立型が良いだろう。それに片側だけでも早くなんとかしたい。
「どっちにしろ左側の歯ぐきもまだ落ち着くまでかかります。別々にするか連結にするか考えておいてください。MUUSANさんの場合は前歯があるので、入れ歯を作っても使わなくなる可能性もあります。歯が全然ないと入れ歯を使わざるを得ないのですが、使える歯があると入れ歯を使わなくなるってケースは多いんです」
「はあ」
「何かご質問はありますか?」
「いえ」
「ではまた1か月ほどしたらいらしてください」
私は12月の後半に予約を入れた。
私は年が明けて1か月もしたらもう大阪にいないだろう。ある事情から転勤になる可能性が高いのである。
ということは、この歯科医院ではインプラントどころか入れ歯の製作にさえたどりつかないってことが明確になったわけである(写真は「東福寺」にて。立派な歯ね)。