Satie  江坂の東急ハンズになかったことで、なぜか優越感
 梅田の大丸の中に入っている東急ハンズで「天青石」を買った日の夜は、地下鉄御堂筋線の江坂駅(吹田市)近くで取引先の方々と食事をした。

 その取引先が江坂駅の近くにあるからだが(言っておくがダスキンでもエースコックでもない)、江坂は私がいまから15年ほど前に大阪勤務していたときに住んでいたマンションの最寄り駅。つまり江坂の住人だったのである。

 取引先の方が「暑気払いしましょう。希望はありますか?」と言ってくれたとき、私は「ぜひ、江坂の大同門で」とお願いした。
 前に住んでいたとときに、いつも見かけていたのに一度も利用したことがなかったからだ。

 こうして、この日は江坂の大同門で焼肉&ビールそののちハイボールということになった。

 会食開始の前に、江坂の東急ハンズをのぞいてみた。
 が、ここのハンズには鉱物も化石も置いてなかった。梅田の店に立ち寄るというアイデアを思いついた自分を誇りに思いたくなった。

20150606Shimizu  予想に反してのどを通過せず
 さて、この日は皆の年齢的な事情もあって、赤身肉主体で注文。食事はおいしく、そして楽しく進行した。
 後半になって出てきた肉。そのなかにちょっと厚めで硬めの赤身肉があって(部位の名は忘れた)、私はそれを口に入れたのだが、なんせ奥歯が1本欠損している身。あまりよく噛めなかったが、まっ大丈夫だろうとそのまま飲みこんだ。
 すると全然大丈夫ではなく、かつて経験したことのない苦しさ。喉つまりしたのだ。
 かつてイカの刺身を噛み切れなくて飲み込めなかった経験はあるが、飲みこんだものが引っかかったことの記憶はない。

 飲み込めないし出せもしない。もちろん声も出せない。出るのは涙だけだ。
 きれいな状況にはなりそうもないので、おしぼりを口に当て周りに気付かれないようにする。

 一瞬、天井が開いて天国への階段が現われたように見えた。
 年寄りが餅をのどに詰まらせて死ぬという状況がわかった。けど私は、餅と違って粘りのない牛肉で死の淵をさまよっているのだ。

 次の瞬間である。吐き気がして、オエっとでき、肉片(というかほとんど最初のままの大きさ)がおしぼりに吐き出された。ゲロゲロとなるのではなく、その肉だけで収まったのも幸いだった。焼肉テーブルの前で嘔吐したら、どんな結末になるのか、想像しただけでもそら恐ろしい。

 あー、苦しかった。
 これから硬めのものを食べるときはうさぎさんのように前歯でよく噛み噛みしたうえで、残り少なくなっている奥歯にバトンタッチするように心がけよう。

 サティ(Erik Satie 1866-1925 フランス)の「天国の英雄的な門の前奏曲(Prelude de la porte heroique du ciel)」(1894)。

 ジュール・ボアの戯曲のために書かれたピアノ曲である。

 レーウの演奏を。

 1974年録音。フィリップス。

 このときは(つまっている最中に気づいた人がいたかどうかはわからないものの)周りに人がいたからいいようなものの、自室で一人のときになんか詰まらせたら本当に窒息してしまうかもしれないのだ。
 そう考えると恐ろしい。