CD に対しリッピング音源は……
アンプを入れ替えたあと、CD の音が劇的に変わったことを報告した。
もちろん、もともと録音が良いディスクに関してで、そうでないものを再生した時には部屋のなかにコンサートホールのような雰囲気が生まれることはない。
また SACD が通常の CD よりもなるほどスーパーオーディオの名に恥じないわい、と納得できるようになった。
もっとも、fontec のホームページに書かれているような、
ハイレゾは、CDでは入りきらなかった音の情報量をたくさん持っています。音の量、つまり「音の太さ・繊細さ・奥行き・圧力・表現力」が段違い。アーティストの息づかいやライブの空気感など、CDでは聴こえなかったディテールやニュアンスを感じ取れるのがハイレゾなんです。
ってところまでは感じ取れていない。
それは私の感受性が低いってことだけではない。特に休日の日中は外界からの騒音やら何やらでデリケートなところがなかなか聴きとりにくい環境にあるというのも大きな要因だろう。
そしてまた、SACD じゃなくても、例えば高関/札響の伊福部昭のライヴ録音CDのように、通常のCDでも録音が優秀なら“それまで聴こえなかったディティールやニュアンスを感じ取れる”ようになったことに驚き桃の木切ったのはナツツバキだった。
アグリーコラの「良いことばかり(De tous bien plaine)」。
って、輸入盤だが日本国内流通仕様のため日本語の帯がついているこのCD。帯に書かれている曲名は「良いことばかり」(1番から3番までの3曲が収められている)なのだが、NAXOS MUSIC LIBRARY を見てみると日本語の曲名が「私の愛しい女はあらゆるすぐれた才にたけ」になっている。
そりゃそれなら《良いところばっかり》ってことではあるが、全然違う曲みたいな差がある。
へんなの。
さてさて、CD に関しては良いことばかりなのだが、もう一つの重要な再生機であるネットワーク・オーディオ・プレーヤー(NAP)の音はどうか?
実は、CD の音質・音場の向上度に比べ、NAP(NA6005)の再生音については旧アンプ時代とあまり変化が感じられない。
誤解しないでいただきたいが、新アンプで NAP の再生音が悪くなったということではない。
CD の音が、自分とスピーカーとの間にあった霞が無くなったようにクリアになったのに、NAP の音には劇的な違いが聴きとれないのだ。
可逆でも圧縮したら劣化する?
これはどういうことか?
2つのことが考えられる。
1. 可逆圧縮と言えども、リッピングした音源データはもとの CD の音よりも劣化する?
2. 使っている NAP の能力の限界によって、CD プレーヤー が本来の実力を発揮できたようにはいかなかった?
第1の「音源データは可逆圧縮と言えども劣化するのか?」
今日はまずそのことについて。
ネットをみるとよく見かけるのが CD 音源と同じである非圧縮の WAV ファイルと、可逆圧縮の FLAC のどちらの音質が良いか?という話題。
そりゃあ WAV の方が FLAC より音が良いに決まってるという主張も少なからずある。
こういうのを見ると FLAC 形式で CD を HDD に取り込んでいる私としては心穏やかではない。
ただ、科学的にいろいろと調べたサイトの結果を見ると、FLAC でデーターが欠落するってことはない。そうだよね。じゃなきゃ、可逆圧縮って言えないもんね。
じゃあ他の要因は?
WAV では混乱のもとになっているが、FLAC では有用な管理ができるタグ情報。そのタグデータが音質に影響を与えるっていう話もあるんだが、それも都市伝説っぽい。 データに劣化はない。個性のせいだ。それが私の結論
結論として、WAV も FLAC も変わらないってことなんだろうけど-この先、新たなる研究結果が出てこないとも限らないが-WAVの問題点はそもそも圧縮していない生まれたままの姿なので(って、ちと違うか)、容量が大きいことだ。
神崎洋治・西井美鷹著「体系的に学ぶデジタルオーディオ」(日経BP社:電子版発売2015年)のなかの、WAVについての記述。
非圧縮のため高音質化によって1曲当たりのファイルの容量がどんどん大きくなってしまいます。しかし、再生時に圧縮音源のように大量の演算が必要ないため、再生プレーヤーの負荷が少ないという特徴があります。
ということは、圧縮音源を耳にできるようにするためには、演算能力がしっかりした機械を使わないとまずいってことである。
何度も書くがFLAC音源は圧縮音源である。可逆圧縮なので、圧縮を解くと元と同じデータになる(「いや、何か欠落するはずだ」というのは一部の強硬なWAV 崇拝者の主張らしい。この本の著者は“可逆圧縮方式(ロスレス)なので圧縮による音質の劣化はありません”と断言している)。
布団を圧縮しても、包んでいるビニールを破けば勝手にもとに戻るが、音源ファイルはそういうわけにはいかないのだ。圧縮を解くことをデコードというが、そのために公文式でも追いつけない演算が必要だというわけだ。
……可逆圧縮であっても圧縮音源の場合は大容量のファイルを伸張するため機器の演算部(CPUなど)に負荷が大きいことが挙げられます。そのため、機器によっては同程度の音質の楽曲再生であっても、非圧縮の WAV は正常に再生できるものの FLAC は負荷がかかって正常に再生できないものもあります。また、逆にネットワーク環境では転送するファイル容量の多い非圧縮音源が問題になることもあります。
なるほど、FLACにデメリットがあるとすれば、頭の良くない機械ならデコードのときにギブアップしちゃうかもってこと。ただ、WiFi を利用しての再生ならどでかい容量の WAV だとうまくいかないことがあるかもってことになる。
さらに私にとっては、音源管理はひじょうに重要。タグ管理がうまくできない WAV は、仮に FLAC より(わかるかわからないかぐらい)音が良いとしても、使い物にならない。つまり WAV 形式を選択することは、私にはやっぱり起こりえないことなのだ(だから今回、1つの音源を WAV 形式でもリッピングして、FLAC のものと聴き比べるという実験もしなかった)。
音楽データの圧縮形式である FLAC に問題があるため(音楽のいくつかの要素が欠落してしまったため) CD ほどの再生音の変化(向上)が見られなかった、というわけではないことが(私のなかではほぼ断定的に)判明した。
となると、NAP のデコードの能力に問題があるか、はたまたこの機種(NA6005)固有の音質(個性)ってことになる。
NA6005 は希望小売価格が68,000円(税別)という、NAP としては入門機である。
入門機ではあるが、専用機である。
専用機のくせにデコードの能力が低いってことは考えにくいことだが…… ……続く♪ 作曲家情報 ♪
♪ 紹介したディスク ♪
ポッシュ主宰のアンサンブル・ユニコーン。
1995年録音。NAXOS。
そのCD(カルミナ・ブラーナ)は持っておりませんが、アグリコラのと演奏者は同じですので、同系列の絵をジャケットに用いているのかもしれません。ナクソスは一時期一世を風靡するほど勢いがありましたが、すっかり存在感がなくなりましたね。いまの価格では買いたいと思いませんものね。