ONにすると良い音になったような錯覚に
 先日の記事でPM8006にはラウドネス・スイッチが備わっていないことを書いた。
 ラウドネスというのは、音楽を小音量で聴いているときには人間の聴覚では高音域と低音域の聴こえ方が弱くなるため、それを増強する補正回路のことだ。

 音楽を聴きはじめたときに使っていたAIWAのラジカセにさえ(というよりも、あのころのラジカセのほとんどにラウドネス・スイッチがあったと思う。ふくよかに聴こえることで、音が良くなったように感じさせる、その効果は抜群だった)。

AIWA_TPR220

  あのころはラウドネスが標準装備
 私が初めて手に入れたステレオ(パイオニアのS-7)のシンプルな機能の(つまりは、安いのでいろいろついていない)アンプにもラウドネス・スイッチはあった。

 その後、まずはアンプだけを買い替えた。1981年のことだ。
 大学生協の『オーディオフェア』で売っていたONKYOの Integra A-815 という機種。
 たくさんつまみやスイッチがあって、さらに緑のランプもたくさんあって、それだけでうれしくなったものだ。もちろんラウドネス・スイッチがないわけがない。

Integraa-815

 なお、写真は《オーディオの足跡》というサイトに載っていたものを勝手に拝借させていただいた。

  今日は左だけをピュアに観賞するか……
 ここまで使っていた LUXMAN のプリメインアンプも Integra とほぼ同じ機能のつまみ類が備わっていたが、結局のところ、 いつも使っていたのは INPUT SELECTOR とボリュームつまみぐらい。

 line straight はほぼいつも ON にしていたのでトーンコントロールつまみをいじることもほとんどなかったし、もうエアチェックするなんて時代ではなくなっていたので、 REC SELECTOR は一度も利用したことがない。

loudness

REC Selector

MODE SELECTOR
 Integra にもあったつまみだが、MODE SELECTORっていうのはあれば便利そうだが、便利だと感じたことはついぞなかった。だって使うことなかったんですもの(どういう場面で切り替えて使うのだろう? mono にしてスピーカーから出る左右の音が中央に定位する、つまり左右のスピーカーの出力に偏りがないってことを調べるためには使えるんだろう。けど、右だけとか左だけって使い方が私には思いつかない)。

Varese ヴァレーズの「アンテグラル(Integrales)」(1924-25)。
 管楽器と打楽器のためのゼンエイオンガクである。
 曲名は「積分」の意。

 でもって、ONKYOのアンプの方は、確か『インテグラ』と呼んだと思う。
 A-815はシリーズの中でもいちばん下の製品で、定価は56,800円。

 保証人もなんにもナシでローンが組めますっていうから買ったんだけど、その場で頭金入れろって言われて、財布にはあんまりお金が入ってなかったんで500円を頭金にした。なんだか恥ずかしい思いをした。

 瀬川氏は“中には、アンプを買って以来いちども活用したことのないスイッチなんていうのがあるはず”って書いているが、「はい、そのとおりです」。

  高音を下げ低音を上げればホールのサウンドに近づく?
 その点、今回買ったアンプは必要最小限もしくは必要最小限+αにとどまっている。きちんと調べたわけではないが、最近のプリメインアンプの傾向として、あまりごちゃごちゃした顔つきのものは少なくなってきているような気がする。

CL_PM8006

 PM8006の特長としては、トーンコントロールに BASS と TREBLE の定番の他にも MID があることだ。

 そのトーンコントロールだが、いよいよもってこれからは積極的に活用していこうと考えている。
 これまでも、瀬川氏や土屋氏の本に限らず、トーンコントロールを活用すべきという説はいろいろと目にしてきたし、その根拠も理解してきたつもりだ。
 “もっとトーンコントロールを使いますです。でも……”と、優柔不断にブログに書いたこともあった。

 でも、どこか罪悪感というか抵抗感を払しょくできなかった。最適な(好きな)トーンにうまくコントロールできないなら、いっそのこと触れないでおこうという気もなくはなかった。
 しかし、『もみの木医院』という那須にある病院のホームページに載っている院長さんが書いた《趣味のページ》を読んで、とても納得、目からうろこ、論より証拠。トーンコントロールは使うべきだと思ったからだ。

 読んだ日の夜、自分がオーケストラのレコーディングに立ち会い、「まだこんなマイクのセッティングをしてるのか!」とスタッフを𠮟りつけている夢を見たほどである。夢とはいえ、ずぶのシロートのくせにスイマセン。

 私は決意した。
 ディスクごと、もっといえばレコーディングごとにトーンコントロールをいじっちゃおうと……

 ちなみに、ラウドネス・スイッチがなくても、トーンコントロールのBASSとTREBLEを上げれば(BASSの方を多めにする)同様の効果が得られる。

♪ 作品情報 ♪
【作曲】 1924-25年
【初演】 1925年・ニューヨーク
【構成】 単一楽章(約10分)
【編成】 小orch(picc 2,ob 1,cl 2,hrn 1,picc-trp 1,trp 1,t-trb 1,b-trb 1,cb-trb 1,17打楽器)
 
Varese♪ 作曲家情報 ♪

 エドガー・ヴァレーズ(Edgard Varese 1883-1965 フランス→アメリカ)。
 スコラ・カントルム、パリ音楽院で学び、初期のロマン主義・印象主義的作品の大部分を破棄。1915年アメリカにわたってからは、近代音楽の最前衛的手法、とくに未来派的なものをとり入れた作風に転じ、騒音主義(bruitisme)といわれた。ミュジック・コンクレート、電子音楽の一つの先駆と考えられる。
 (井上和男 編著「クラシック音楽作品名辞典」(三省堂)による)

♪ 紹介したディスク ♪
 メータ/ロサンゼルス・フィル。
 1971年録音。LONDON。