HandouShowashi1945_MatsumotoSeicho  霧が黒けりゃ顔は真っ黒け
 半藤一利の「昭和史 戦後篇 1945-1989」(平凡社ライブラリー)のなかの、『戦後三大事件』(下山事件・三鷹事件・松川事件)について書かれた箇所。

 ここで半藤氏は松本清張の「日本の黒い霧」を紹介してくれている。

 紹介されたからには読んでみなくてはならない。いや紹介されるたびに相手にしていたら、こっちの身がもたない。だがこれを読まなくてはならないと思ったのは、おもしろそうだからだ。

 それにこのところ出張が続いていて、移動中の読書に充てる時間が私にはたっぷりある。

 そんなわけで「日本の黒い霧」(文春文庫)を購入した(電子書籍版)。

  山口果林さんはお元気なんでしょうか?
 考えてみれば、私は松本清張の著書を読むのは初めてのことである。

 氏の作品では、映画化された「砂の器」は観た(テレビで放送されたものを)。
 加藤嘉が感動的な演技をしていた。
 出演していた、美人じゃないけどなんとも言えない雰囲気をもつ山口果林が私の心をとらえた。
 画面が暗くてよくわからなかったが、とっても美しい島田陽子がヌードになった。よくわからなかったので「詐欺!」と毒づいてしまった。その後島田陽子がヘンになっていったのはご存じのとおり。ヌード写真集も出したはずだが、もう見たいとも思わなかった。
 この映画で効果的に使われている「宿命」という曲は、しばしば芥川也寸志の作と誤解されるが、作曲者は菅野光亮。この映画の音楽監督を務めていた芥川が菅野の作曲に協力したのだった。
 
MatsumotoS_KuroiKiri_Jou 松本清張の他の作品を私は知らないのだが、きっと2時間サスペンスドラマ-22時ころになると他のチャンネルに替えられないようシャワーシーンとか濡れ場があって、そりゃ楽しみでござんした。この22時作戦にしばしば起用されていた佳那晃子さんとか加山麗子さんはお元気なのでしょうか?-や連続ドラマなんかで、知らず知らずのうちに接したことはあるのだろう。

  えっ、ここで教えてくれないの?
 1960年の『文藝春秋』1~12月号に連載されたというこの「日本の黒い霧」だが、お世辞にも読みやすい文章とは言えない。
 小説でもこのようなスタイルなんだろうか?

 あまり使われない漢字や熟語が頻出するし(漢和辞典を用意しなければならなかった。連載当時はよく使われていたのだろうか)、“その話はまたあとで詳しく触れる”というような、話の先送りが多い。読者をじらすのが好きなんだろうか?また、同じような内容を再度繰り返す箇所も少なくない。蒸し返すのが好きだったんだろうか?
 
 上巻を読み終えたところだが、文体がまどろっこしくはあるものの、それの嫌がらせを上回るおもしろさがある(日本の闇の世界のことをおもしろいというのも変だが)。
 下巻も、悩まされることは間違いないが、読むのが楽しみである。

 ところで、上巻第4章は「白鳥事件」。

 昭和27(1952)年1月21日の午後7時半ごろに、札幌の南6条西16丁目の路上で、自転車で帰宅途中だった札幌市中央警察署の白鳥警部が射殺された事件である。

  書けないけど活字化成功?
 このなかにある記述。

 ところで、使用した拳銃はブローニングである。ブローニングは決してパンパンというような音には聞こえない筈だ。これはもっと大きく、もっと腹にこたえるような、文字では書き表せないが、活字にするなら、ズバァーゥン、というような響きであろう。決してパチパチというような軽い音ではないのである。


 “文字では書き表せないが、活字にするなら”って……?

 パンパンがパチパチに変わってるし……

SchubertSchwanengesang シューベルト(Franz Peter Schubert 1797-1828 オーストリア)の歌曲集「白鳥の歌(Schwanegesang)」D.957,965A(1828/1829出版)。

 「白鳥の歌」はシューベルト自身がこの名を冠した歌曲集ではない。彼の死後に友人たちや出版社によってまとめられた遺作14曲からなる歌曲集である。そのため、14の歌を通しての関連性はない。
 詩はレルシュタープ(第1~7曲)、ハイネ(第8~13曲)、ザイドル(第14曲)による。

 なお、『新シューベルト全集』では「白鳥の歌」という作品は存在せず(認知しておらず)、「レルシュタープとハイネの詩による13の歌曲」D.957と「鳩の使い」D.965Aとして収録されている。

 また、第4曲「セレナーデ(Standchen)」はとりわけ有名で、ヴァイオリンとピアノなどの器楽用に編曲されて演奏される機会も多い。

 昭和史の裏話の本を読み始めてからというもの、三浦綾子の「氷点」はそれっきりになっている。
 綾子さますいません。
 
♪ 作品情報 ♪
【構成】 14曲(約45分)
【編成】 独唱, p
【本作品について取り上げた過去の主な記事】
  つぶやき仲間に入り切れず不満をつぶやく

Schubert♪ 作曲家情報 ♪
 

 ロマン派音楽の開拓者。とくに〈ドイツ歌曲(リート)の王〉といわれる。音楽は小学校校長でチェロを弾いた父と、ウィーンの宮廷礼拝堂合唱団にいた時代に行っていた神学校での師サリエーリから学んだ程度である。早くから才能をあらわし、家庭や仲間たちで演奏する歌曲や室内楽曲、管弦楽曲を多数作曲。1821年に「魔王」がop.1として出版されるまでに、すでに700曲に達する作品がある。この間、父の学校の助教師、エステルハージ伯爵家のピアノ教師を務めたほかには定職はなく、詩人や音楽家の友人に支えられ、彼らの家に寄宿するなどしてボヘミアン的生活を送った。自作だけの演奏会を催したのは死の年であり、その頃、友人たちの奔走で宮廷礼拝堂副楽長やケルントナートーア劇場の指揮者の地位をねらったが果たしていない。ウィーン体制下にあって新興市民階級に基盤をおいたロマン主義芸術を志した彼は、生前に認められることが少なく、死後高く評価された作曲家の一人である。D.はO.E.ドイッチュ編の作品目録(Thematisches Verzeichnis seiner Werke in chronologischer Folge)の番号。

 (井上和男編著「クラシック音楽作品名辞典」(三省堂)による)

♪ 紹介したディスク ♪
 F=ディースカウ(Br),ブレンデル(p)。
 1982年録音。フィリップス PHCP-10547(廃盤?)。
 それにしてもブレンデル、なんであんなに困った顔してるんだろ?