今日3月8日は、カール・フィリップ・エマヌエル・バッハ(Carl Philipp Emanuel Bach 1714-88 ドイツ)の誕生日だという。
バッハの次男で、父親よりも人気を博し、ハイドンやベートーヴェンに多大な影響を与えた作曲家。左ききだったのでヴァイオリンが弾けなかったという話はどうでもいいとして、活躍した都市から『ベルリンのバッハ』『ハンブルクのバッハ』と呼ばれた。
作曲家としてのカール・エマヌエルは、当時ヨーロッパを席巻していた新スタイルを代表していた。これは対位法によらない上品なスチール・ギャランで、マンハイム派作曲家が創始し、ハイドン、モーツァルトへの道を開いた。
(ハロルド・C・ショーンバーグ「大作曲家の生涯」:共同通信社)
ちなみにモーツァルトはエマヌエルよりは、末っ子のヨハン・クリスチャン・バッハから大きな影響を受けた。
バロックにはない力強さと躍動感
たぶん、私が初めて耳にしたエマヌエルの曲は、シンフォニア ホ短調Wq.177である(レッパード/イギリス室内管弦楽団の演奏。NHK-FMの「バロック音楽の楽しみ」でだった)。
バロック音楽のような響きが残っているのに、曲は激烈、感情の爆発といった音楽で、とても新鮮に感じたことを覚えている。
これはエアチェックしたしたものの、当時は金のない中学生(金がないのはその後現在に至るまで継続中)。貴重なカセットテープは、そのあとベートーヴェンの「エグモント」序曲に上書き録音されてしまった。
いまと違い、当時はエマヌエルの曲を聴こうと思っても至難の業。レコードはあまり出ていないし、出ててもそこいらのレコードショップにあるわけがなく、あったとしても、あるいは存在を知り取り寄せてもらおうにも、やはり壁となるのは先立つものがないってこと。
いまでは信じられないくらい多かったNHK-FMのクラシック音楽番組でも、エマヌエルの作品が取り上げられることはほとんどなかった。
そんな私が再びWq.177を耳にできたのは、1997年になってから。なんと20数年ぶりのことだった。
ただし、厳密にいえばそれはWq.177ではなく、シンフォニア ホ短調Wq.178,H.653(1756←なんと、モーツァルトが生まれた年)。
実はWq.178はWq.177の異稿。Wq.177が弦楽器と通奏低音のための作品であるのに対し、Wq.178では管楽器が加わるのである。
弦のみのWq.177はその後も耳にする機会がないが、ホルンが咆哮するWq.178が手元にあればWq.177はもう必要ないってもんだ。
♪ 作品情報 ♪
【構成】 3楽章(3つの楽章は続けて演奏される。約12分)
【編成】 orch, 通奏低音
【本作品について取り上げた過去の主な記事】
≫ C.P.E.バッハのシンフォニア
≫ テッテイ的にやりたかったのに……♪C.P.E.バッハ/Wq.178etc
≫ あまりに爽やかすぎて…♪ツァハリアスのC.P.E.Bach/ベルリン・シンフォニーズ♪ 作曲家情報 ♪
大バッハの次男。1740年よりプロイセンのフリードリヒ大王の宮廷音楽家兼チェンバロ奏者。'67年、G.P.テレマンの後を継いでハンブルクの教会総監督として活躍。他のバッハ一族と区別して〈ベルリンのバッハ〉〈ハンブルクのバッハ〉と呼ばれる。前古典派音楽における協奏曲、ソナタの様式の確立のうえで重要な役割を演じた。Wq.はヴォトケンヌの作品目録の番号。
♪ 紹介したディスク ♪
ツァハリアス/ローザンヌ室内管弦楽団。
2013年録音。MDG。