(昨日の続き)私は携帯で千歳の天気予報を見た。いや、航空会社の方がはるかに緻密な予測をしているのは百も承知だ。しかし、ときは大雑把ということも大切だ。
♪ 作品情報 ♪
【初演】 1862年・ペテルブルク(改訂版は1869年・ミラノ)
【本作品について取り上げた過去の記事】
≫ パ-パ・パ・ピョォォォ~という、山下さんの過去の傷
♪ 作曲家情報 ♪
それによると予報は深夜まで曇り。雪が降る予報にはなっていない。
もうひとつ、私は思い出した。
条件付き運航で、引き返す場合があるという場合でも、実際にそうなる可能性は数パーセントという事実だ。万が一のことを考えて、言葉は悪いが引き返したときのクレーム回避のため、「あんた、納得したうえで乗ったでしょ?」ということで、このようにアナウンスするのである。
私も過去、乗った飛行機が出発空港に引き返したことがあるのは、1回だけだ。こうなると確率的には1%未満。いや、0.1%程度である(その1回は、離陸前に引き返す可能性の条件付きではなかった。予想もしない雪雲が千歳上空で発達し、それ以上旋回待機すると燃料がなくなるということで、引き返したのだった)。
彼の『運命力』にかける
ちょうど、機長と副機長(?)がやって来て、搭乗口から機内へと入っていった。
あの人なら降りてくれる。そんな気がしたのだ。私は運命を彼にかけることにした。
ヴェルディ(Giuseppe Fortunino Francesco Verdi 1813-1901 イタリア)の歌劇「運命の力(La forza del destino)」の序曲(Sinfonia)を。
私は「運命の力」を抜粋盤ですら聴いたことがないのだが、この序曲だけはクラシック音楽を聴き始めたころからのお気に入り。とはいえ、曲と作曲者・曲名が一致するまでにはやや時間がかかった。
というのも、この曲をはじめて、そしてしばらくはその形で耳にしたのは、当時の北海道新聞のテレビCFで使われていたためである。
実は持っているCDも、コシュラー/スロヴァキア・フィルによる、よく得体のしれない輸入盤だけ(録音年も不明。けどDDD)。
そこで非常食として空弁を買うことにしたが、あまりロクなものが残っていなくて(いや、失礼。この状況にふさわしい、といった方が良いだろうか)、『たこむす』を買った。
切羽詰まった状況だったので、パッケージの写真を撮るのを忘れてしまったが、なんと『天むす』の天ぷらの代わりに『たこ焼き』そのものがおにぎりにめり込んでいるという恐るべきものだ。まぁ、ラーメン+ライスのことを思えば、別にヘンじゃないけど。
それにしても、この売店は搭乗口近く、つまりターミナルビルの2階にあるのに、なぜ“1F”となっているのだろう。
飛行機は大阪空港を飛び立った。
途中、機長からアナウンスがあった。「現在、新千歳空港は雪は降っておりませんが、このあと降る可能性があります」。機内では特にどよめきは起こらず、CAさんもふつうにハーゲンダッツを売り歩いていた。
そして……窓際席のおばさんの顔の向こうにある窓から、苫小牧か長沼かわからないが、街のあかりがかすかに見えたとき、私は着陸することを確信した。
実際、飛行機はさんざん脅されたにもかかわらず、何事もなかったように新千歳空港に着いた。CAさんが「ご心配をおかけしましたが……」と、私の心中を察するアナウンスをしてくれた。
ところがである。
今度はJRである。
到着口から非制限区域にを出たのが18:58。
JRの出発案内板には19:15発のエアポートの表示がある。うん、予定通りだ。
ところが、駅まで行くとまだ19:00発の表示が出ている。
遅れているのである。
なんでも、翌日の北海道新聞によるとこういうことだった。
何か月か前にも同じようなトラブルに遭遇したような……
それでも札幌駅に着いたのは15分ほどの遅れで済んだ。
さらに江別行きの電車も15分ほどの運転遅れで収まった。
なんだかひどく疲れたが、キュッキュッと雪を踏みしめる音に、なぜかほっとさせられた。
家で『たこむす』を妻と1個ずつ食べた。たこ焼きとおにぎりの味がした。
てなことを書いているが、今日は再びフライト。
順調にコトが進みますように……
♪ 作品情報 ♪
【初演】 1862年・ペテルブルク(改訂版は1869年・ミラノ)
【構成】 4幕8場(約2時間50分)。序曲は改訂版で加えられた(約8分)
【台本】 リヴァス公爵A.P.サーヴェドラの劇『ドン・アルヴァーロ,または運命の力』に、F.シラーの『ワレンシュタインの陣営』の一場面を用いて、F.M.ピアーヴェ。のち、A.ギズランツォーニが改訂。
【編成】 orch,org,舞台裏と舞台上にバンダ(序曲はorch)
マリーンスキー劇場の依頼で作曲。スペインのカストラーヴァ侯爵の娘レオノーラはアルヴァーロと駆け落ちする寸前に父に見つかるが、ピストルが暴発して侯爵は死ぬ。仇を探す兄ドン・カルロはアルヴァーロとの決闘にたおれ、アルヴァーロはレオノーラも殺し、自らも命を絶つ。
(井上和男編著「
クラシック音楽作品名辞典」(三省堂)による)
≫ パ-パ・パ・ピョォォォ~という、山下さんの過去の傷

イタリア・ロマン派歌劇の最大の作曲家。初期のものは、北イタリアの各地でオーストリアからの独立運動の風潮を反映して愛国的題材のものが多い。作風も後期のロッシーニ、ベッリーニの影響を見せているが、1850年代に入り、人間心理のこまやかな描写とドラマティックな表現を獲得し、「リゴレット」「椿姫」「トロヴァトーレ」などの中期の傑作を生む。後期は作品は少ないが、ワーグナーの影響による楽劇への接近を示し、「アイーダ」「オテロ」、唯一の成功した喜劇「ファルスタッフ」で円熟の境地に達した。
(井上和男編著「
クラシック音楽作品名辞典」(三省堂)による)