Naminobon   ようやく第1話につながるの巻
 1997年10月の『伊福部昭音楽祭』が私にとっての初Kitaraだったわけだが、その前年の96年3月の定期演奏会をもって定期会員をやめた私は、その後、札幌に居ながらも、札響の演奏会に足を運ぶことがなくなった。
 その主な理由は、仕事の関係でコンサートに足を運べる機会がタイミングとして難しくなったためだ。

 そんななか、おそらく新聞報道で知ったのだと思うが、札響が世界的レーベルであるCHANDOSからCDを出すことを知った。
 ここで、ようやくこの記事と結びつくことになる。えらい遠回りをしてすまんかったのぅ。

  世界に通用する演奏だが……
 これまで自主制作的なLP、CDがほとんどだった札響だが、シャンドスからデビューするとなると、それはそれはたいしたものだ。おそらく尾高のツテだろう。

 尾高の指揮によって、2000年にKitaraで収録されたこのCDは、2001年の2月にリリース。

 私も発売後さっそく購入したが、たいした立派な演奏だった。
 世界に通用する演奏だ。
 しかし収められている曲がちょっと……。

 武満の「波の盆」や「乱」は武満が苦手な私でも親しみやすいものだが、尾高惇忠(オルガンとオーケストラのためのファンタジー)や細川俊夫(記憶の海へ-ヒロシマ・シンフォニー)の曲は好きな人にはたまらないだろうけど、そんなに好きな人はいないかも知れない(この2曲は世界初録音)。

 尾高の指揮ぶりはさすがだ。
 さすがというのは、札響の札響らしいサウンドをうまく引き出している。しかし、ここでも「おおっ!」と耳がダンボになるような求心力を聴き手(私)にはもたらさない。

  世界デビューしたものの、現実は
 そして、札響は2002年になって経営危機が表面化する。
 札響のファンである私も、演奏会に通わなくなると、どーも切羽詰った問題に感じなかったのは正直なところ。定期会員をやめた私にも責任の一端のはじっこぐらいはあるのだが……

 このCDが全世界で爆発的にヒットすれば、危機から脱皮できたのかも知れないが……

 そんな私は、2003年に大阪に転勤、さらに2006年には大阪から東京に転勤した。

 1997年10月の『伊福部昭音楽祭』のあと、札幌から離れた私が再び札響の演奏会に出向いたのは2006年11月の東京公演。会場はサントリーホールだった。

 って、今日のも「感動史」じゃなくて、単なる「体験記」だな……。
 “看板に偽りあり”で、申し訳なく思っている

 ってことで、このCDのなかではいちばん親しみやすく、かつ、とても美しい音楽である武満徹(Takemitsu,Toru 1930-1996 東京)のTVドラマのために書かれた音楽、「波の盆」(1983)を。

 いま思ったんですけど、武満徹さんって三浦綾子さんに似てません?

♪ 作品情報 ♪
【初演】 1983年(放送)
【構成】 当CDに収録されているのは6曲(約18分)
【編成】 orch
【本CDについて取り上げた過去の主な記事】
  
Takemitsu_Port♪ 作曲家情報 ♪ 
 清瀬保二に短期間作曲を学んだ他は、音楽に関することはまったくの独学。1951年、滝口修造、秋山邦晴、湯浅譲二らとグループ〈実験工房〉を結成。武満の出世作は1957年の《弦楽のためのレクイエム》。また彼の名を不動のものとしたのは1964年の《テクスチュアズ》である。1964年からは邦楽器への新たなアプローチをし、1967年の琵琶とオーケストラのための《ノヴェンバー・ステップス》で世界的な名声を得た。
 武満徹は日本の生んだ最も優れた作曲家として位置づけられている。
 (「音楽芸術別冊 日本の作曲20世紀」(音楽之友社:1999年。武満の項の執筆は佐野光司氏)による。写真も同書から)。