SSO306th  ヒャッポダは毒ヘビ
 前回は1989年3月の第300回定期演奏会を取り上げた。


 今日はその半年後の9月に行なわれた第306回定期。


 指揮は『のだめ』にも登場していたデプリースト。ピアノ独奏は小山実稚恵。
 プログラムはスボボダの「シーズンへの序曲」、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番、チャイコフスキーの交響曲第4番。


 スボボダという、熱帯雨林に生息する謎の生物を想起させる名の作曲家を、私はこの日初めて知った。そして、この序曲に一目(一聴)惚れした。

 当時はまだ週休2日ではなく、土曜日も仕事だった。
 だから後日、この日のコンサートの模様が放送された毎週土曜日朝のFM北海道の番組を、私は聴くことができなかった。一目惚れした相手を再び経験することはかなわなかったのだ(←ちょっといやらしい言い方)。ようやく再会できたのは23年後のことだった。

 プロコフィエフのコンチェルトも良かった。
 このとき小山はまだ30歳。若くて血気盛んな演奏で(いまでもその傾向はあるようだが)、メカニカルなすさまじさ。プロコフィエフにぴったりだった。


 最後のチャイコフスキーも期待通りの盛り上がり。ブラボー、ブラボー!だった。

  彼が開眼した夜
 実はこの日、妻が別用でコンサートに来られず、来られなかった妻の分の席を仕事でお付き合いのある人に差し上げた(半ば無理やり)。

 「クラシックのコンサートなんて」と苦々しい顔で言っていたが、とても人の好いお方だったのでチケットを受け取ってくれたのだった。

 ところが当日のプロコが終わったときには、ため息まじりに「いいねぇ~」。
 チャイコが終わったあとは、「また来たい」。
 もうっ、彼ったらぁ~。


 プロコフィエフ(Sergei Prokofiev 1891-1953 ソヴィエト)のピアノ協奏曲第3番ハ長調Op.26(1917-21)。


 プロコフィエフのピアノ協奏曲のなかではいちばん人気のある曲だ。

 古い話で恐縮だが、ピアノ・コンクールをテーマにした映画「コンペティション」。
 決勝に進出した女性出場者が、急きょモーツァルトからこのプロコフィエフに演目を替え、みごと優勝した(決勝相手の演目はベートーヴェンの「皇帝」)。

ProkoPf3Argerich このコンチェルトの第3楽章の出だしのメロディーは、プロコフィエフが日本滞在中に耳にした「越後獅子」によるという話は有名。有名だが真偽のほどは不明。
 でもこのメロディー、伊福部昭の「シンフォニア・タプカーラ」の第1楽章で、序奏部が終わりテンポアップするところのメロディーにも似ている。

 若きアルゲリッチが弾いた、アバド/ベルリン・フィルとの演奏を。


 1967年録音。グラモフォン。


  凄いらしいぞ
 この録音のあとアルゲリッチは初来日しているが、そのときに最初に協演した日本のオーケストラが札幌交響楽団。1970年1月の第91回定期でプロコフィエフの第3番を弾いた(指揮はシュヴァルツ)。

 それがSACDで出ている。
 私は未聴だが、なんでも“凄い演奏”らしい。

 ところで乗り気じゃなかったのに、むりやり誘われ私に付き合ってくれた彼。

 すっかり生のオーケストラの響きに魅了され、そのあとすぐに奥さんと2人で定期会員になった。


 私の営業力はたいしたものだ。ではなく、このように実際に会場に来て体験しないとわからないことってある。

 そう考えると、いまだって定期会員の数を増やせる可能性は残っているということだろう。

 もちろん札響も取り組んでいることだが、地道に小学生や中学生、高校生などを招待し続け、将来のファン作りを図ることが大切。それが100人招待したうちの1人だけだったとしても決して無駄ではないと思う。