首席の第1弾はラフマニノフの3番
 1988年に春に札響の岩城体制は終わった

 新しい体制でのトップバッターは高関健。4月の第291回定期でブルックナーの第7番を取り上げているが、私はこのコンサートには行っていない。

 翌5月の第292回は堤俊作が登場。チャイコフスキーの交響曲第5番で熱い名演を聴かせてくれた

 ミュージック・アドヴァイザー・首席指揮者の秋山和慶が指揮台に立ったのは6月の第293回。

 このポストに就任した秋山の方針は「日本ではあまり演奏されない名曲を積極的に紹介する」という、実に勇気のある、そして期待が持てる意欲的な取り組み。

 この回はラフマニノフの交響曲第3番をメインに取り上げてくれた。
 私もはじめてこの曲を耳にしたが、文句なく一発で好きになった。まさに「あまり聴かれることのない名曲」を教えてもらったのだった。

SSO293rd

 またこの日のソリストはルイサダ。初来日で札響にも来てくれたのだが、あのルイサダが札響と協演したというのも、なんとなくすごいことだ。

  あのときの無念を心に抱き続ける私
 秋山が次に登場したのは9月の295回定期。
 メインはエルガーの交響曲第1番。
 この曲も私は聴いたことがなかった。

SSO295th

 だが急に東京出張が入り、私は行けなくなってしまった。

 後日、AIR-G(FM北海道)でこの日の演奏が放送されエアチェックしたが、なんとすばらしい曲、なんとすばらしい演奏と、私は行けなかった不幸をただただ嘆くしかなかった。
 その思いはしつこくいまでも持ち続けている。

  だってティンパニさんがカッコよかったんですもの
 さらに秋山は12月の第297回で、メインにニールセンの交響曲第4番「不滅」を取り上げている。

 この曲はニールセンの代表作ではあるものの、いまの私にとってはおもしろいような、どこか物足りないような曲だ。だが、初めて聴いたこのときには、なかなか聴きごたえのある曲だと思ったし、2組のティンパニの掛け合いに萌えた。

SSO297th

 なお、1曲目の武満徹の「乱」-この曲は札響とは深い縁がある-と2曲目のカバレフスキーのチェロ協奏曲第2番も、私にとっては初めて聴く曲。
 カバレフスキーのチェロ協奏曲には興奮させられたし、いまでも好きな曲である。

 秋山の「知られざる名曲」を積極的に取り上げる姿勢は、私にとって新たな曲を開拓するのに非常に役立ったのだった。秋山の存在というのは、実は私の中で非常に大きいのだ。

Kavalevsky Vc カバレフスキー(Dmitry Borisovich Kabalevsky 1904-87 ソヴィエト)のチェロ協奏曲第2番ハ短調Op.77(1964)。

 ショスタコーヴィチの同時代のカバレフスキーの代表作といえば組曲「道化師」。
 カバレフスキーはわかりやすく親しみやすいことを作曲の基本姿勢としたが、「道化師」は子供向けの作品ということもあって広く親しまれている(よく小学校の運動会などで使われる)。

 しかしチェロ協奏曲第2番にはそんなカバレフスキーの表情はまったく出てこない。この人、血液型はABだったんじゃないかってくらいだ。
 重苦しく、意味ありげ。とても深遠な音楽。
 明るくないとはいえ、決して親しみづらい音楽ではないので、ご存じでない方はぜひ勇気をふるって聴いてみてほしい。第2楽章の最初でアルトサックスが叫ぶように吹くところも聴きどころだ。

 私が愛聴盤は、ウォールフィッシュのチェロ、トムソン/ロンドン・フィルの演奏によるもの。

 1987年録音。シャンドス。