封印された2階への道
 先日札幌に行ったときに、かつて『シャンボール』があった建物の前を再び通ることがあった。

 今回は写真を撮ってきた。

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 『シャンボール』は階段を上がった2階にあったが、いまはその階段は実に巧妙に目隠しされており、通り過ぎる人はまさかそこに階段があると思わないだろう。

 いや、ジョージアを買おうとして、うっかり100円玉を落としてしまい、それがコロコロと自販機の裏側の方に逃げていくような非常事態が起こらない限り-しかもそうなると救いようがなくなる-、その暗黒の開口部自体に気づかないかもしれない。

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 これは、この名古屋某所の「ジ・エンド」ならぬ『エンデ』や『大名寿司』(ここは夜になると障害物が取り除かれ、なんの問題もなく営業しているのかもしれないが)のように、「あらあら、どうしたことなの?」という姿をさらしていない点では、かつて受験勉強もせずにピザトーストセットを食べに立ち寄っていた私にとっては、『シャンボール』の栄枯盛衰に心を痛めずに済まされている言えよう(栄や盛があったかどうかはしらないが)。

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  この店はセコンドとは全く関係ないのだろうか?
 昨年末に閉店した名曲喫茶の『ウィーン』
 その店主・横山氏は、札幌市教育委員会編の「さっぽろ文庫57 札幌と音楽」のなかで、昭和34年の開店当時のことについて、こう述べている。
 
 その頃、クラシック音楽喫茶といえば、「美松」ではセミプロみたいな人がクラシックを演奏していましたし、ほかには「セコンド」とか「シャトー」などが有名でした。

 私が『シャンボール』に時折立ち寄ったていったのは昭和50年代のことだ。

 『シャンボール』の1階も喫茶店だった。その店の入り口は『シャンボール』への階段の横にあった。『セコンド』である。横山氏が昭和34年当時には名曲喫茶として有名だったと言っているのと同じ名だ。

 『シャンボール』のマッチ箱。茶色の地に白抜きで店の名が書いてあったが、その反対の面は同じく茶色の地で白抜きで『セコンド』と書かれてあった。たぶん横山氏が言っている店と同じだろう。

 『セコンド』に入ったことはなかったが、しかし、私が知っている『セコンド』は軽食喫茶だったはずだ。なんせ、『セコンド』で作ったピザトーストやらカレーライスが、上の『シャンボール』に運ばれてくるのだから。名曲喫茶としての役割は『シャンボール』に譲ったのだろう。

 『シャンボール』はなくなってしまったが、1階の店はまだやっていた。
 しかし名前は『セコンド』ではない。前に書いたように『オットー』だ。

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 かつてサンヨーのオーディオブランドが『OTTO』だったが、それとは関係ないはずだ。店には犬がいるらしい。

FASCINATING ORCH PIECES ニコライ(Otto Nicolai 1810-1849 ドイツ)の歌劇「ウィンザーの陽気な女房たち(Die lustigen Weiber von Windsor)」(1849初演)の序曲

 原作はシェイクスピア、台本はモーゼンタル。3幕からなるが、序曲以外はあまり聴かれることはない。

 ニコライは作曲家としてはこの歌劇だけで名を残しているといっても過言ではないが、指揮者としても活動し、ウィーン・フィル(の前身)の創設者でもある。

 その序曲が入っているCDを、私は1枚しか持っていない。
 それも(という書き方は失礼千万だが)小林研一郎/東京都交響楽団によるもの(「剣の舞/管弦楽名曲集」。録音年不明。DENON)。

 このCDは廃盤になったようだ。

 それにしても、喫茶店の入り口の真横に缶コーヒーの自販機とはねぇ……

 ところで年末のニュースで『ウィーン』の最終日の店内の様子が映し出された。
 びっしりと席が埋まり、その客たちが音楽に聴き入っている映像を見た妻が「不思議な世界……」と言った。
 私でさえも同じように感じた。