
還暦祝賀で荒谷が指揮台に上がった第134回定期の翌月(第135回)は、常任のシュヴァルツの指揮。
この日のプログラムは、
①プフィッツナー/小交響曲
②ラロ/スペイン交響曲(ヴァイオリン独奏:江藤俊哉)
③ブラームス/交響曲第1番
正直言ってあまり印象に残っていない。
唯一言えるのは、スペイン交響曲(この交響曲という名のコンチェルトは5つの楽章からなる)の第3楽章が「ジャン!」と力強い一音で終わったときに、ヴィオラの誰かがその勢いのまま弓を床にバタッ!と落としたことぐらいだ。もちろん本人はとっても恥ずかしそうに苦笑いしていたが。
また、「小交響曲」は、コンサートでの印象は残っていないものの、この年の5月に発売された初の札響のレコードにベートーヴェンの交響曲第3番とともに収められた。
その、おそらくは小交響曲としては初録音だろうと言われた演奏を何度も聴くうちに、私はすっかり好きになってしまった。
ベートーヴェンが札響の響きでは物足りなかったのに対し-モーツァルトのような「エロイカ」だった-、プフィッツナーはぴったりはまっていた。
すぐ赤くなるんだからぁ~
このシーズン最後の、3月の第136回定期は若き日の内田光子がメンデルスゾーンのピアノ協奏曲第1番を弾いたが、これまた彼女の姿は記憶に残っているものの演奏は覚えていない。
136回定期も指揮はシュヴァルツだったが、メインはムソルグスキーの組曲「展覧会の絵」(ラヴェル編)。
初めて聴く曲だったが、冒頭のトランペットのメロディーで「あっ、聴いたことのある曲だ」と引き込まれ、そこからはすっかりテンション上がりっぱなし(私の)。吹けばどんどん顔が真っ赤になるトランペットの金子義人さんの顔を見るのも楽しかった。
いろんな楽器が鳴り響くこの曲は、このシーズンで最も私を感動感激させた。
また、この日のプログラムにはヒンデミットの「ウェーバーの主題による交響的変容」も入っていた。これまた打楽器が活躍する曲で、すっかりお気に召してしまった。
さて、次の春季シーズンは会員継続をしなかった。できなかったというのが正しい。
中学生だもの。お金がないんですもの。次に会員になったのはこの年の12月。第144回定期からだった。
無料コンサートにも数多く登場したシュヴァルツ
その間は無料の演奏会に行った。
そう、札響第2の定期演奏会と言われる“北電ファミリーコンサート”である。
5月(指揮:三石精一)、10月(飯守泰次郎)、11月(シュヴァルツ)に行っているが、5月と10月は強烈な印象が残った。

そして、飯守の回の「シェエラザード」。
終演後、どうしたらよいだろうってくらいの気分の高揚。バスに乗って家に帰る、そういう俗っぽいことをしたくないと思ったほどだった。
そしてまた、この2回はようやくシュヴァルツ以外の指揮者の演奏を聴く良い機会でもあった(すでに荒谷は聴いたけど)。
良くも悪くも、このころは定期でもファミリーコンサートでもシュヴァルツが登場する回数が多かった。
コンサートに出向く用になって数カ月の私が生意気にもそのとき思ったことは、他の指揮者の演奏も聴いてみたいということだった。

この曲のディスクを検索してみると、いまでもとても少ない。
私が持っているのはアルベルト/バンベルク交響楽団による演奏のものだが、この録音以外はないかもしれない。
1989‐90年録音。CPO。
読んでおわかりのように、このころは演奏が良いとかどうとか-もちろん私にはこれらの多く良い演奏だと感じたし、逆に印象に残っていないものもあるわけだが-よりも、札響の演奏会を通じて新たな曲を知れることがありがたかった。
が、リコーダーすら満足に吹けない私は、やがて評論家じみた見方もするようになる。しかし、それはもっともっとあとのことである。
そして、私が次に臨んだ第144回定期演奏会。
指揮者はテオドール・グシュルバウアーだった。