IMGP1759  昼食難民、ブルーな気分でオレンジ通りをあとに
 オレンジ通りを進み、針路を左に変え国道に出る。

 国道沿いなら、よそ者が独り入店しても“よそ者”という目で見られない飲食店が1つや2つあるだろう。

 私の頭の中には、先ほど空港からのバスに乗っているときに窓から見えた百貨店にすべきだという確信みたいなっものがあった。

 西條百貨店。
 2フロアのようだが立派だ。
 本社は名寄市にあるらしい。

 が、1階にはフードコートがある。大きな窓ごしにロッテリアという大きな文字が見えた:
 また、そば屋もあるみたいだ。

 だが、私がフードコートで1人で何かを食べるのにはどこか抵抗感があった(そのとき、2階に“ペリカン”というラーメンやカツ丼もあるファミレスがあるとは気づかなかった)。

 そのとき、国道をはさんで斜め向かい(といってもかなり斜め)に洋食レストランの看板と建物が見えた。

IMGP1761  冒険心は皆無だが安心感はある
 その名は、“レストラン・ノシャップ”とか“ビストロ・かにっこ”とか“シェ・エトピリカ”といったものではなく、ものすごく稚内らしさが感じられない全国展開の勝利の女神ことVictoriaであった。
 あちらへこちらへとさまよい歩いた結果は、全国に味のムラなし(たぶん)のヴィクトリアってことに落ち着いた。

 昼下がりのこの時間帯、マダム達がいくつかののテーブルで話に花を咲かせている(ように感じた)。テーブルの上の状況からドリンクバーでかなり有意義な時間をたっぷり過ごしているようだ。

 私はこの日のサービスランチのなかからハンバーグと春巻のセットを頼んだ。

 ビクトリア(Tomas Luis de Victoria 1548-1611)の「あちらへとこちらへと(Vadam et circuibo)」。

Renaisance ビクトリア(Victoria なのでヴィクトリアと表記すべき気がするが、ここでは三省堂の「クラシック音楽作品名辞典」にならった)はローマでパレストリーナに学んだとされ、ローマ楽派の様式にスペインの神秘主義を結びつけたルネサンス末期の最大の教会音楽作曲家だという。

 「あちらへとこちらへと」もビクトリアの教会音楽のなかの1曲だが、その作品がなんなのかは私にはよくわからない。

 サマーリー指揮オックスフォード・カメラータの演奏を。

 1993年録音。ナクソス。

 だが、私は後悔していない。
 というのも、案外と春巻がおいしかったからだ。

 中華料理好きの私だが、実は春巻は苦手だ。
 中華弁当なんかに入っている得体がしれない、具が無くてただ皮を巻いただけじゃないか、春なんてどこにもないぞ、みたいなものの印象が強いからだ。

 だが、ここの春巻はきちんとしていた。
 これは収穫だった。この収穫が何かに寄与するとも思えないが……

 なお、この日泊まったホテルはニューチコウというところ。

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 新しい恥垢っていう連想をしてしまう人もいるだろうが、そういう意味ではないだろう。間違いなく。