AemenianPmusic  7月3日・月曜日
 伏草課長と丸針係長と飲んだ。この顔合わせとしては久しぶりだ。

 場所はカジュアル・フレンチの店。♂3頭で行くにはちょっと場違いっぽい選択。
 だがそれには深いワケ、ビジネスマンとして重要な目的があったのである。

 8月のはじめにこちらに来る取引先様-事前情報によるとワインがお好みらしい-との夜の会食場所として適しているかどうかの下見を兼ねていたのだ。

 私たちは豚肉を食べ、牛肉を食べ、ブリーチーズで乳酸菌を補給し、仕上げにこの店自慢のハヤシライスを3人でシェアして食べた。とてもおいしいハヤシライスだった。

 関係ないが、世の中の林さんは目の前で「ハヤシライス!」とか注文される声を耳にして、ドキッとしたりいやな思いをすることはないのだろうか?ちょっぴり気になる。


  7月4日・火曜日
 満保係長とオディール・ホッキーさんと飲んだ。この顔合わせは初めてのこと。

 場所は会社の近くのこぎれいな居酒屋。
 この日の目的は、ズバリ、雨宿り!


 夕方から激しく雨が降り始め、帰り際にオディールさんと目が合った私。
 我々は阿吽(あうん)の呼吸で雨宿りしなければならない状況下に置かれていることを瞬時に理解し、オディールさんの上司である満保係長も宿り仲間に招へいして、雨上がり待機作戦を遂行したのだった。


 窓辺のテーブルに案内された私たちは、ほどなくして雨があがったことを、歩道上の水たまりを目視することで確認した。雨宿りの予定が、単なるサラリーマンの飲み会になってしまった。だが、たぶんMr.マンボは雨が上がったことにも、あるいは雹が降ってないことにも気づいていなかっただろう。


 ポテトサラダを食べ、鯵の干物を食べ、豚の角煮でコラーゲンを補給し、仕上げにこの店自慢のカレーライスを食べた。けんかしないように、シェアではなく、ミニカレーを1人1皿食べた。福神漬で乳酸菌も補充できた。

 帰り道、マンションの近くまで来たときに突然雨が降ってきた。
 バチがあたったような気がした。


  7月5日・水曜日
 支社の係長たちによる飲食を伴う情報交換会議があり、私もそれに友情出演を許された。

 場所は中華料理屋。
 麻婆豆腐や青椒肉絲、それにちょいといつもと趣向を変えて牛肉のオイスターソース炒めではなく、黒胡椒炒めなどを頼んだ。

 メニューに麻婆春雨があったので、たまには食べてみようとホール係のツォンさん(空想上の名前)が来たときに私は言った。

 「マーボーハルサ……」
 「ナイ!」


 回平係長が、まるで北朝鮮がミサイルを5発連続発射したニュース速報を耳にしたようにオーバーに細い目を見開き抵抗する。「えっ、ここに書いてあるよ」

 「でもナイ!」


 腑に落ちないが、ないものはしょうがない。
 そこで春にも雨にも婆さんにもまったく関連性は無いが、そしてメニューには載ってないが、私は別な料理を言ってみた。

 「カニタ……」
 「ナイ!」

 
 もし、私は単に「蟹退治」と言おうとしたのだったらどうしたのだろう?

 なので、再び婆さんシリーズで「麻婆茄子!」と言うと、「麻婆茄子ネ!」とこれはOK!
 失敗した。別に麻婆茄子を食べたいわけではなかったので。やれやれ……

 今日は“春雨”ならぬアミルカニアン(Robert Amirkhanian 1939-  アルメニア)のピアノ小品の「春の雫(Spring Drops)」(2009)。

 ムード・ミュージックのような、おしゃれで、ちょっぴり切ない印象の音楽だ。

 ハイラペティヤンのピアノ独奏で。

 2012年。ナクソス。

 ところで雨と雫はどう違うんだろう?

 国語辞典で調べてみると、

 【雨】 水蒸気が空中でひえ、水滴となって落ちるもの
 【雫】 水のしたたり

 なんだかやれやれである。


  7月6日・木曜日の昼
 満保係長、千葉課長、開元さんと支社から少し離れたそば屋へ。

 クソ暑い中、熱中症の危険をおかしてまでわざわざそば屋に行ったのは、翌日の金曜日にやって来るお客さんと昼食を食べる店の下見のため。
 いや、その店自体は何度も利用しているのだが、今回はお客さんを乗せて車で行くため、周辺にパーキングがあるかどうかの確認も兼ねて行ったのだった。

 その北海道からのお客さんは前日に大阪を訪問したあと名古屋に来ることになっていた。われわれは早くから綿密な計画を練り、ひつまぶしの店にお連れすることにしていた。個室も予約できていた。

2017Taira ところが数日前になって大阪支社の総務課長から「大阪での昼食はうな重にしますので」という連絡が、疎茄課長の所に入ったのだった(なぜ、そのタイミングで報せてきたのかも謎が残る。親切心からなのか我々を焦らせるためなのか)。


 常識的に考えれば、翌日に名古屋に行くならたぶんひつまぶしを予定しているだろうと、容易に判断できるはずだ。まったく忖度が無い。

 もしお客さんのこの行程が逆で、名古屋に来たあと大阪に向かうというものだったとしても、私は間違っても名古屋でうどん屋にお連れするとか、お好み焼きセットを汗だくで食べさせるなんて選択はしない。

 大阪にもいろいろ複雑な(もしくはなんにも深く考えていない)事情があるのかもしれないが、事前に(直前ではなく)調整できなかったのは今後の課題だ。

 ってなわけで、同じ長いものでもうなぎからそばへと、私たちは変えざるを得なかったのだ。

 大切なお客さんに名古屋めしを食べていただくことができなくて残念だった(名古屋名物でも味噌煮込みうどんは季節がら除外した方がよいと判断したし、トンカツ屋-写真はイメージで、全然別な場所で見かけて撮っただけ-に行けば名物エビフリャーがあるかとも思ったが、ちょいと腹に重いかと思いやめた。また、お客さんにまさかあんかけスパゲティってことにもならないだろう)。

  7月7日・金曜日当日
 しかし当日になって、鴨せいろを食べたお客さんが「美味しい」と言ってくれて、われわれは救われた。

 そのお客さんは大阪の前日は東京に行っていたそうだが、そこでの昼食もウナギだったのだそうだ。

 もし名古屋でもウナギなら、3日連続。目には良いかもしれないが、プリン体は急上昇し、特に夏場なので痛風発作を起こす危険性もなくはなかったわけだ。

  ⇒ 数日後の記事に続く……