ブーメラン行動
先日の夜、西日本から来客があった。
氷山係長である。
私たちと旧交を深めるために、仕事を終えたあとわざわざ急行よりも、いや、特急よりも速い、超特急の新幹線でやって来た。そして、アルコール補給してその日のうちに帰った。
これを専門用語で“日帰り”というが、いくら近いとはいえ、飲んだあとの移動はさぞかし疲れたことだろう。
彼を出迎えたのは私と、新婚旅行の行き先をマニアックな国-私はその国出身の作曲家を1人しか知らない-に選び、先週無事帰国したオディール・ホッキーさんである。
仕事のついでではなくこのようにやって来てくれることに私は感激し、彼が名古屋時代にスーパーの棚から消えてしまったことを残念がっていた好物のサイコロステーキピラフが、「復活、いや、おいしくなって新登場!したよ」と、現物を持参して喜ばせてあげようかと考えたが、冷凍食品なので断念した。
お礼の一言ぐらい言ってよ!
話はずれるが、先々週の金沢出張。早めに行動し、特急しらさぎに乗る前に近鉄名古屋駅に切符を買いに行った。 22日、23日と記事にした志摩に出張するときの切符である。
そう混んではいなかったが、待ち行列の流れは悪かった。
窓口の1つが、どういうことになっているのかわからないが、延々と1人の客の対応で占拠されているのだ。
ようやく次が私の番と列の先頭になったとき、後ろから背の高さがコロポックルのようなおっさんに声をかけられた。
その前からずいぶんぴったりと背後にいるなと妙な気配は感じていた。焦りも伝わってきていた。
いま思えば、このときの私は絵皿の乙女に似た状況に置かれたのだった(おっさんが後ろから手でいきなり私を目隠しする恐れだってゼロではなかったはずだ)。
「兄ちゃん、半のに乗んの?」
ぱっと案内表示を見ると、9:30に難波行がある。
いまの時刻は9:23。あと7分だ。
「いえ」
「じゃあ、先頼むわ!」
「どうぞ」
私はそのおっさんを先を譲った。
私がこれから乗るJRの特急は9:48発。まだ余裕があったからだ。
しかも、いま買おうとしているチケットは翌週のものだ。
「Non-non、1週間後に乗んの」なんて、どうして言えようか?
「よっしゃ」と瞬時に私の前に移動したおっさん。
にしても、さすが関西人だ。遠慮のなさ、申し訳なさのなさは脳の隅々にまで浸み込んでいるのだろう。しかも「よっしゃ」ときたかい……
おっさんはだらっとしたポロシャツにでろっとしたズボン。足にはぼろっとしたつっかけ。
難波から-いつのことかわからないが-やって来て、朝のうちに帰る人のいでたちにしてはあまりにも軽々しかった。
オディールさんが行って来たのはバルトークの祖国の近く
そんなたいへんな地から、氷山係長はおこしやすだったのだ。
仕事のたいへんさ、難しさについていろいろと語り、悩みを打ち明けながら嗚咽するとは思っていなかったが、
実際、ト長調のように明るい話題に終始した(オディールさんの新婚旅行の話や、オディールさんの新婚旅行の話や、オディールさんの新婚旅行の話など)。
組曲「グランド・キャニオン」で知られ、そのほかにもアメリカ観光地シリーズの組曲を書いたグローフェ(Ferde Grofe 1892-1972 アメリカ)の組曲「ナイヤガラの滝」(‘Niagara Falls’Suite.1961)。
滝のことは瀑布ともいうが、そのためこの曲のタイトルも「ナイヤガラ大瀑布」組曲なんて書いてあることがあるが、瀑布って一般的でもナウくもないので、私は避けたい。
曲は次の4曲からなる。
1. 滝の轟き(Thunder of the Waters)
2. デビルズ・ホールの大虐殺(Devil's Hole Massacre)
3. 新婚旅行者たち(Honeymooners)
4. ナイヤガラの力(Power of Niagara)
4曲の中でも私が出色だと思うのが第3曲の「新婚旅行者たち」。
ラブラブな感じがたっぷり伝わってくる、リンゴとはちみつ的甘いメロディーが耳に残る。
ストロンバーグ指揮ボーンマス交響楽団の演奏で。
1998年録音。ナクソス。
実は氷山係長は端午の節句にも名古屋に来ている。
オディールさんの結婚式に出席するためだ。
オディールさんはこどもの日に挙式したのだ。
そのおめでたい席に出席しなかったバチで、私は氷山係長に会うことがなかったし、三笠まで行ったのに梅の一輪すら目にすることができなかったのだ。
なお、節句とはまったく関係ないが、これを見たとき一瞬ドキッとしたことを申し添えておこう。
ドキッとするような年じゃ全然ないんだけど……
でも横には“みるく”とか“ぷりん”なんて書いてあるし……