補導されないなんてARIENAI!
2002年秋、80万人の中学生が学校を捨てた。経済の大停滞が続くなか彼らはネットビジネスを開始、情報戦略を駆使して日本の政界、経済界に衝撃を与える一大勢力に成長していく。その後、全世界の注目する中で、彼らのエクソダス(脱出)が始まった――。壮大な規模で現代日本の絶望と希望を描く傑作長編。
村上龍の「希望の国のエクソダス」(文春文庫)を読み終えた。
上の文は、本のカバーに書かれているものである。
読んだ感想はビミョー。
SFではなく実際の西暦2000年前後の日本を舞台にしているのに(中学生ネットワークであるASUNAROが買収したものの1つに“洞爺湖を望む山の上に建つ有名なホテル”という、実際の建物(ホテルエイペックス洞爺)が出てきたりする)、ここまで現実離れしていると、おいおい作者はまじめにストーリーを考えてんのかよ、って思ってしまった。
ちなみに、植物のアスナロは北海道で言うところのヒバのこと。
檜(ヒノキ)に似ていて、明日は檜になろう、というこの木の願望からアスナロという名になったという俗説がある。井上靖の「あすなろ物語」でこの話が有名になったらしい。
Amazonのレビューを見ても評価が分かれており、希望がもてたという賞賛の声から、アホか?ってなものまで両極端。
私は読んでも希望はもてなかったし、そもそもいくら優秀な中学生たちとはいえ、こんなにトントン拍子で思いを実現していけるわけがないだろうと読み進むうちにしらけてきた。
だいたいにしてあんなに稼いで所得税はどうした?
それと、これもレビューで指摘されているが、ストーリーの展開上ここまで必要ないだろっていうくらい経済に関する話が披露されていて、疲れた。
もしかして、記者も勘違いした?
私がこの本を買ったのは、ここに書いたように、北海道新聞で紹介されていたから。
希望の国に選ばれたのが北海道の野幌(のっぽろ)だというので読んでみようと思ったのだ。
野幌は札幌の隣の江別市に実際にある地名。
小説の中でも“野幌”市と、漢字表記は同じだ。
ただし、読み方は“NOHORO”となっている。
物語では、NOHOROの場所は札幌と千歳の間にあると書かれている。しかし、江別は札幌と千歳の間ではない。札幌と岩見沢の間だ。
北海道新聞の記事ではこの小説にからめて江別市野幌の千古園(野幌を開拓した関矢孫左衛門の住居跡地)という場所を紹介していたが、もしかすると村上龍の頭にあったのは上野幌の方かもしれない。
新千歳空港から札幌に向かうときにJRがここを通るので、窓から見える景色に「おっ、この一帯に移住させればいいかも」と考えた可能性は低くないような気がする。
上野幌駅は札幌市内ではいちばん千歳寄りの駅で新札幌駅と北広島駅の間にある。というか、すぐ横が北広島市との市境。住所としては上野幌というのはない。
上野幌も、江別の野幌も広い野幌丘陵に位置するが、北海道新聞の記者の着眼と異なり、村上龍は江別市野幌は知らなかったかもしれない。
もっとも、野幌市は13の市町村が合併したものなので、江別も北広島も、あるいは恵庭や南幌、長沼、安平などいっしょくたということだろう。
新たなるリーダー。ではなく、領主様
今日の曲は、なんとなくバッハ(Johann Sebastian Bach 1685-1750 ドイツ)の世俗カンタータ「おいらは新しい領主様をいただいた(Mer hahn en neue Oberkeet)」BWV.212(1742)。
俗に「農民カンタータ(Bauernkantate)」と呼ばれている作品で、詞はC.F.ピカンダー。24曲からなる。
1742年の夏、ライプツィヒの近くのクラインチョハー村の新しい領主になったC.H.v.ディースカウの着任を祝う宴席で演奏された。
私には理解できるわけがないが、歌詞にはこの地方の方言が用いられていて楽しいらしい。
ピカンダーはそれまでもバッハのカンタータの台本を手掛けていたが、彼の本業は税金を徴収する役人だった。伝えられる話では、ピカンダーはディースカウに雇われることになり、上司となるディースカウをヨイショするためにこの台本を作ったという。
曲の前半(第1~13曲)はディースカウを讃える内容。また、後半(第14曲以降)は祝宴で歌う歌を選ぶという展開で、民謡などが披露される。
カークビーのソプラノ、トーマス(おやおや、またまたトーマスだわい)のバス、ホグウッド指揮アカデミー・オブ・アンシェント・ミュージックの演奏を。
1986年録音。オワゾリール。
長いけどウナギじゃありません
ところで江別はレンガの街として有名である。
毎年夏に“やきもの市”というのが江別駅前で開催されるが、そのイベントの1つにれんがドミノ倒しという
のがある。それが楽しいことなのかどうかはわからないが……
また江別市のもう1つの名産に(といってもマニアックな人向けだと思うが)ヤツメウナギがある。
石狩川で獲れるそうだ。
ヤツメウナギはウナギと名はついているものの、本当のウナギとは別物の生物。
私は江別ではなく、札幌市は手稲の居酒屋でヤツメウナギのかば焼きを食べたことがあるが、一口でギブアップした。味も食感もNo!ニ度と食べたいとは思わなかった。
滋養強壮に良いらしいが、これを食べなきゃならないなら精力はあきらめて去勢牛のように暮らしたほうがマシだ。