まどろみを破るTelの音……
土曜日の昼下がり。
昼寝に入って十数分のところ。ようやく眠りに入りかけたところで家電が鳴った。
家電といっても洗濯機が突然うめきだしたとか、掃除機がインドゾウの鼻のごとくホースをもたげたということではない。この家電はカデンではなくイエデン、つまり固定電話である。コードレスなのに固定電話とは、その呼称に不満をもっているかもしれない、ウチの固定電話は(写真は実物ではあるが、過去に撮ったイメージである)。
寝ぼけてはいないが、やや意識が濃霧注意報状態で電話に出る。
この番号を知っているのは家族だけだ。
この時間に家族から電話がかかってくることはよほどのことがない限りない。
つまり、家族はよほどのことでかけてきた可能性が高い。
という三段論法が成り立つ。
フレッツ光って、その名からしてあんた二世か何かかね?
電話の内容のおおざっぱな内容はこんなものだった。
「こちらフレッツ光でございます。いつもお世話になっております」
男性である。
つまり電話の相手は妻でもわが子でもなく、見ず知らずの他人だ。
でも考えてみれば、家族以外でも、契約しているNTT西はこの番号をわかっているわけだ。
私-(不機嫌に)はあ~っ~っ~……
「本日はお客様のフレッツ光の料金が今よりお安くなるサービスのご案内でございます」
-(なんとなくこの先の話の予想がつくが)はぃ~……
「光のコラボで現在のプロバイダー料が一切かからなります。工事や変更費用などは一切かかりません。お客様が現在ご利用になっているプロバイダーはどちらになりますでしょうか?」
-ヤフゥですが……
「ありがとうございます。新しいコラボのプランに切り替えていただくと今後はヤフーへのお支払いが一切発生いたしません。お客様はふだん、インターネットはパソコンとスマホのどちらでご利用ですか?」
-パソコンです。
「それではこのあとシステム担当より切り替え手続きの電話をさせていただきます。その際、パソコンでインターネットが利用できるような状態にしておくようお願いいたします」
-それって光コラボってことですか?
「そうでございます。プロバイダーがどこかを気にせずにご利用できます」
-プロバイダーは必要なんじゃないですか?
「お客様はビッグローブというのをご存じでしょうか?」
-知ってます。
「私どもはビッグローブを利用した安い光回線への切り替えをご案内しております。お客様の一帯はほとんどすべての方の切り替えが終わっておりますが、まだお済でない方にお電話しております」(←全然プロバイダーについての質問の答えになっていない)。
-請求はどこからになるんですか?
「いままでどおりNTT西日本からになります。現在はヤフーとNTT西の二本だての請求が一本になります」
-でも24カ月更新のヤフーのオプションを途中でやめることになると違約金が発生しますよね?(実はそういうオプションは契約していないが)
「そんなのがあるんですか?いや、それは考えなくて大丈夫。そんなことないから」(←いきなり友だち言葉)
-ビッグローブの光コラボに切り替えろってことですか?
「いえ。そうではありません。プロバイダーのことはもう考えなくて大丈夫になります」
あんたの方が大丈夫かと思ったが、とりあえず「わかりました」と電話を切った。
引き続きシステム担当からきたTel
この電話が明らかにおかしいのは、すでに最初に明らかになっている。
NTT西からならば「まず〇〇様でいらっしゃいますか?」とこちらの名前を確認するはずである。
それがない。
つまり、かたっぱしから電話をかけているに違いない。
私の頭蓋骨の中に濃霧注意報が発令されていなかったら即座に気が付くところだったが、幸福な昼寝へのいざないを中断されたこともあって思考がダイヤルアップ接続のように緩慢だった。
20分後くらいに電話がかかってきた。
こうなったらどんないい加減なことを言うのか聞いてみよう。
「こちらフレッツ光でございます。さきほどお電話でお伝えしたシステム担当です」
先ほどとは違う、ちょっとイントネーションがおっさん臭い、たぶん正真正銘のおっさんだ。とはいえ、私より若いかもしれない。
-はい。
「パソコンは準備できておりますでしょうか?」
-その前に、これに変えるとプロバイダーはどこになるんですか?
「そういうのはないんです」
-ないってことないですよね?私は光コラボでOCN光の契約をしたことがありますが(実際、自宅はOCN光である)、プロバイダーはOCNですよ。
「光コラボとは違うんです」
-じゃあどういうことですか?
「フレッツ光が1年後に使えなくなります。それはお客様のプランにもよりますが。その前に切り替えておく必要があります」
フレッツ光・プレミアムが廃止され光ネクストに移行するということは知っていた。
このめりはりのない語り口のおっさんはそのことを言っているのだろうか?
でも、私の契約は最初から光ネクストである。
それにNTT西の人なら、私の契約内容を知らないでこのMUUSAN様に切り替えのあっせんを言ってくるはずがない。
-あなたはNTT西の方ですか?
「いえ違います。NTT西にこのようなことを行なう部署はないです(←言い方になんだか牛河を想像してしまった)。前はビッグローブにそういうことを委託していたのですが、ビッグローブが独立した会社になったので、それを受けて代理店である私どもがサービスを行っております」(だんだん話し方の丁寧さが崩れ、どこかの地方の訛りが混じってくる。もともと希薄だった話の内容の論理性も崩れつつある)。
-さきほどのフレッツ光が契約内容によって使えなくなるという話をしてましたが、そういうのってNTT西から書面で通知が来るべきものではないですか?
「送りましたよ」(←偉そうな、でもこれ以上深い話にしたくないという突き放した口調。そもそもあなたが送ったわけではないでしょうに……)
-受け取ってませんけど(だって、最初から光ネクストだもんね)
「それはおかしいです。確かに送ってます」
-おかしいですよ。確かに受け取ってません。
「みなさん新しいプランに変えてますし、1年後には使えなくなるかもしれません」
みなさんって、all じゃなくたとえば美菜さんとかのこと?
そういえば、マンションの1階ホールの掲示板にフレッツの切り替えの案内広告が貼られていた。
つまり、全世帯がこのおっさんの言うようにしているわけではない。でなきゃ、別などこかの回線へ切り替えしましょう!なんていう広告は意味をなさない。
-そういうのって、こんな電話で済ますことなんですか?OCN光に変えたときとずいぶんと感じが違いますね。話がどうも変だ。切ります。
こうして私はガチャンと受話器を置いた、としたかったが、コードレスで充電台は別な部屋なので“切”のボタンを押した。
その後、イエデンは地蔵のように黙りこくったまま。
再び“フレッツ光”さんから電話がかかって来ることはなかった。
そっくり一緒というわけではないが、ネットに書かれている話に類似している。
私の場合は、じゃあ今の料金がいくら安くなっていくらになるのか聞かなかったし、話の中でビッグローブが結局どのくらい重要な位置づけを持っていたのかを含め、さらに話を進めていくとどういう発見があったのかまで付き合いきれず、その手前の前奏段階で見切りをつけてしまったが、詐欺ではないかもしれないものの信じたところで幸せにはなれない、悪徳悪質悪行ホラ吹き業者であることは間違いないだろう。
そしてまた、安くなるという甘い言葉は(そして、「あなただけがまだですよ」という自分だけが世の中に取り残され損をしているような煽り方は)、高い授業料への前奏曲なのである。 合唱曲の前奏曲が、ストーリーをもつ「前奏曲」に
リスト(Liszt,Franz 1811-86 ハンガリー)の交響詩「前奏曲(Les Preludes)」S.97(1848/改訂1852,’53)。
リストが書いた交響詩の中でも最も人気が高い作品。
交響詩「前奏曲」は、リストが1844年から翌年にかけて作曲した合唱曲「四大元素(Les quatre elements)」(J.オートランの詞による「大地」「北風」「海の水」「空」の4曲からなる男声合唱とピアノのための作品)のテーマを使い、この合唱曲の前奏曲として書かれた。
しかし、改訂時にラマルティーヌの「詩的瞑想録」の一節、“われわれの一生は死への前奏曲である”を目にし、これに基づいた交響詩に仕上げた。当初は文字通り音楽形式上の“前奏曲”の位置づけだったものが、曲の内容にマッチした(というか、こりゃ使えるという)詩の発見によって、ストーリー性を持つ交響詩になったのである。
ここでもちょっと取り上げているショルティ/シカゴ響による演奏を。
1992年ライヴ録音。デッカ。
なお、リストの作品につけられている S. 番号は、グローヴ音楽事典第5版(1954/'61補巻)でのH.Searleによる整理番号である。
牛河っぽい奴と話してなんだかイライラさせられたが、夜にたまたまテレビをかけっぱなしにしていたら、ANAのコマーシャルに(旧姓・福原の)愛ちゃんが出ていて-初めて観るCMだった-笑うようなCMじゃないんだけど、なんだか温かな気持ちで笑えた。
はい。けっこうバツリと切れない性格です。