MendelssohnDohnanyi  愛と憎しみは裏腹?
 迷った挙句に村上春樹の新刊を予約した。

 いや、そんなに迷うことはないのだが、「すぐに読まなければ後悔するほどおもしろいかもしれない」という思いと、「また鼻につく表現があったり、わけのわからない現象が起きたり、後味の悪い終わり方だったりするのではないか」という、近年ちょっぴり膨らんできた氏への不信感みたいなものもあって、買おうか買うまいか思いが交錯したのだった。

 が、自分の性格からして、発売日(2月24日)当日になると「売り切れてしまって重版ができるまで時間がかかるかもしれない」と気が気でなくなったり、たぶん取り上げられるに決まってるニュースを観て、微笑むニュースキャスターを逆恨みしては困るので、この際だから予約することにした。

 考えてみれば村上春樹に限らず新刊本の予約をするなんてことは初めてかもしれない。

 予約はネットで行なった。
 どれくらいで配送されるのかはわからない。

 えっ、発売当日に読めないじゃないかって?
 いいんです。
 その日のうちに書店に行ける確証はないし、その日のうちから読み始める意欲があるかどうかもわからないから……

 それに(まだ1ヵ月もあるが)、私はまだもう1人の村上氏である龍(“たつ”と読ないように)の「希望の国のエクソダス」もまだ読了していない。


 また、ブログを読ませていただいている“かまど姫”さんが紹介していた篠田節子さんの「讃歌」(朝日文庫)も買って読んでみたいと思っていた。

  よほどの節子マニアじゃなきゃ手を出さない

 しかし「讃歌」はそんなに前の出版じゃないのにすでに絶版。電子書籍にもなっていない。
 中古を探すと、状態が“良”のものでも2000円ぐらいするし、新品だと1万円というすっげえ値段がつけられている。いくらなんでも新品にはばかばかしくて手を出す気はないし、いくら“良”の状態でも出版時に700円ほどだったものが2000円というのも私をばかにしている。


 ということで、さてどうしたものかと思いつつも様子ながめということにした。


 メンデルスゾーン(Felix Mendelssohn [-Bartholdy] 1809-47 ドイツ)の交響曲第2番変ロ長調Op.52讃歌(Lobgesang)」(1840)。

 看板に偽りなく、実際に声楽(独唱と合唱)を伴う作品である。

 凸版印刷ならぬ活版印刷を発明したJ.グーテンベルクは活字による初の印刷を行なって400年という、1840年に行なわれた400周年記念式典で演奏するためにライプツィヒ市から委嘱された作品。

 式典での初演後、声楽部分の改訂が行われ翌年に出版され、ザクセン王のフリードリヒ・アウグスト2世に献呈された。

 メンデルスゾーンは交響曲を5曲残しているが、この第2番は5曲中4番目に書かれた。
 しかし交響曲のなかで2番目に出版されたため、第2番の番号になっている。
 
 曲は2部全10曲。

 第1部は3つの楽章からなるシンフォニア、第2部は詩篇などを歌詞とするカンタータの形式で9曲からなる。

 それゆえ、第1部を第1~第3楽章。第2部を第4楽章と強引に見なせば、4楽章構成の交響曲と思えなくもない。
 その第1部は3楽章合わせて25分ほどで、第2部は40分ちょいと演奏に要する。
 となると、4楽章構成とみなすと各楽章の長さのバランスは悪く、関係ないのにショスタコーヴィチが第10交響曲を発表したときの弁明したのを思い出してしまう。

 ……第2楽章は短すぎたようだ。

 メンデルスゾーンの第2交響曲を、私はあまり得意としていない。
 あっ、こう書くとまるで演奏する立場のようで偉そうだから言いかえると、あまり好きではない。

 ザクセン王はたいそう近年評価が高まっているようだが、私には刺激がなさすぎる。
 でも、深い感動を得る人がいるというのもわかる気がする。

 私が聴いているCDのアーティストは、ドホナーニ指揮ウィーン・フィル、ウィーン国立歌劇場合唱団、ソプラノ独唱はガザリアンとグルベローヴァ、テノール独唱はクレン。オルガンはベック。

 1976年録音。ロンドン(デッカ)。

 私が持っている写真のCDは、

 一つのムラもない、極めて高水準の仕上がり
 1970年後半に、ドホナーニがウィーン・フィルと録音したメンデルスゾーンの作品をまとめた4枚組。緻密で鋭敏なタクトが織りなす絶妙なテンポとバランスに、ウィーン・フィルの極上のオルガントーンが見事にマッチした、極めて高水準の仕上がりになっています。
   ユニバーサル ミュージック/IMS

という、メンデルスゾーン交響曲全集であるが、単売もされている。

 私は未聴だが、ポンマーの指揮による札幌交響楽団の定期演奏会ライヴもなかなか良い演奏だという。
 とはいえ、札響愛にあふれた私ではあるが、別にそれほど焦って聴かなきゃって思う曲じゃないし……。この感動はあなたに託す。

 街の本屋が経営難で減っていっているということが言われて久しい。

 それは実に困ったことだ。


 なのに今回私はオンラインショップで買ってしまった。

 ごめんなさい……