
1988年11月。
本来ならこの月の札幌交響楽団の定期演奏会は第297回となるはずだった。
ところがこの月、定期演奏会は開かれなかった。
な、なんでだ?
北海道厚生年金会館の改修か?
楽員の集団食中毒か?
11月15日、本来ならば定期演奏会になるはずのコンサートは“特別演奏会”となった。
この年、札響の桂冠指揮者の立場にあった岩城宏之がサントリー音楽賞を受賞した。
その受賞を記念する特別演奏会に、定期演奏会が置き換わったのである。
ひと月ずれた12月の定期が297回となった。
詳しくは知らないものの、この特別演奏会が楽員みなの抵抗もなく企画、開催されたという記憶が私にはない。
ほんのちょっとだが、岩城と札響の軋轢のようなものがあったと地元紙に載ったような覚えがある。
めったにやらないマーラーがせっかくプログラムに取り上げられたのに、きっと良い演奏にはならないんじゃないかと思ったものだ。実際、当夜の記憶が全然ない。もしかして、結局行かなかったのかと思えるほどだ。
仮に特別演奏会が行なわれたとしても、定期は定期でちゃんと開く。
いろいろクリアしなければならない条件はあっただろうが、本来はそうすべきだっただろう。
年史にはまったく触れられず
それを裏付けるかのように“札幌交響楽団50年史 1961~2011”(札幌交響楽団編)には、この特別演奏会のことに一言も触れられていない(この前のページで岩城が受賞したことは記されている)。
いまとなってはむかしの話。
記憶している人も少なくなっているだろうが、岩城と札響の長い付き合いを考えるとき、いつも引っかかるところだ。タワレコから札幌交響楽団アーカイヴ・シリーズのCDがリリースされ、その中に岩城指揮の音源もあるが、ふとこのことを思い出してしまった。
真相はどうだったのだろう。
そんなことを思いながら、もう40年近い付き合いとなったバーンスタイン/ニューヨーク・フィルによるマーラー(Gustav Mahler 1860-1911 オーストリア)の交響曲第1番ニ長調(1884?-88/改訂'93-96)を聴いた。
音場の不自然さはあるが、この演奏はやはりすばらしい。
1966年録音。ソニークラシカル。
なお「巨人(Titan)」のタイトルは交響曲の前身である交響詩のときにつけられたもの。
最終的に現在演奏される交響曲第1番に改訂された際に、マーラーはこの標題を削除している。
私の「巨人」の出会いはラインスドルフ盤です。RCAの1300円盤です。
バーンスタインのマーラー、演奏だけでなくこのジャケットがとっても好きです。