注意報・警報じゃないんだから……
 北海道の雪が尋常じゃない。

 例年のこの時期、雪がぱらつくことがあっても、あるいはひどいときにはうっすら積もることはあっても、何十センチという積り方は記憶にない。まだ11月の半ばまでいっていないのだ。

 まさに大雪だが、高校のときに友人と旅行した際、彼は急行“大雪"のことを「おおゆき」と読んだ。天気予報じゃあるまいし……

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 鉄道に関心がないとそんなもんなんだろうか?

 “しれとこ”や“らいでん”なんかがひらがな名だったのは国鉄の深い思慮に基づく命名だったのかもしれない。でも、知床はともかく雷電なら他の読み方の方が思いつかないけど。って、知床だってわざわざ“ちしょう”なんてひねって読む奴はいないよな。

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 ふつう根雪になると言われるのは12月に入ってからであって、うまくいきゃあクリスマスのころまでたいして積もっていないってこともある。

 頼むから根雪にならないでほしい(あっ、これ“こんせつ”じゃなくて“ねゆき”って読んでね)。
 このまま白銀の世界、ところにより黄色い世界(散歩した犬のお小水の跡)になるのはまだ待ってほしい。

  ネット for You

 問題はわが家の庭のバラたちである。
 とはいっても、バラたちに問題があるのではなく、バラの雪対策をしていない私に問題がある。
 まだ冬囲いをしていないのだ。


 一応支柱は立てた。
 でも、そのときはまだ10月の上旬。いくらなんでもネットをかけるには早すぎる。
 だいいち、そのころはまだ咲いている株、これから咲こうという意気込みを持った株がいくつもあったのだ。

 それがこの雪である。

 早くネットをかけてやらないといけないが、こんな状況下で作業をするとなるとかなりしんどい。人間、最後は自分がかわいいものだ。バラよりも己を選ぶだろう。

 いや、いけない。
 そんな考えはちょっとでも持ってはいけない。
 かわいいバラたちだ。
 あの子たちのためだったら死ねる、とは口が裂けても言わないが、アカギレの5本、鼻水20cc垂れ流し、軽度なしもやけはがまんできる。

 でも、お互いが幸せになれるのは、なんといってもこの積もった雪がいったんは溶けてくれることだ。

  ドーナツよりははるかに売れてそうだ
 で、今日はらいでんの話じゃなく、こうなるとおでんの季節到来である。

 先日もコンビニのレジ前でおでんを容器に入れている客を見た。
 日本人っぽくないけど、日本人の男のさわやかじゃない若者だった。

 これでタイ人とかがチクワとかを選んでいるとちょっと不思議な感じがするだろうが、でもタイ人やインド人がおでんを食べたって一向にかまわない。角界だって外国人だらけだし。

 むしろ日本の若者の方がおでん離れしているような気がするが、でもどこのコンビニでもおでんを用意しているということは、私が知らない世界でおでんは確固たる地位をしめているのかもしれない。

 おでんといえば、こんな話を読んだことがある。

 上品そうな年配のご婦人がデパートの地下食品売り場で店員に「おでんはどこですか?」と尋ねた。
 店員はおでん売り場にご婦人を案内したが、その人は公衆電話はどこかと尋ねたのだった、というオチだ。


 なるほど。
 日本語っておもしろいですわね。

 けど、デパートにおでん売り場なんてあったっけ?
 北海道なら“かま栄”とか、おでんの具材を売っている店は各百貨店に入ってはいるけど……


 おでんについて北大路魯山人はこう書いている。


 ……「なべ料理」は出来たて、煮たてと、すべてが新鮮だからいいので、おでん屋というものがはやるのも、ここに一因があるわけだ。あれは決して料理がいいからはやるのではない。あの安料理のおでんが美味いのは、つまり、出来たてを待っていて食うというところにあるので、実際は美味いものでもなんでもないのである。舌を焼くような出来たてのものを食べるから、おでんは美味いものと評判になってはいるが、その実、粗末な食物なのだ。
 粗末なおでんすら、出来たて故に私たちの味覚をよろこばすのであるから、お座敷おでんといえる「なべ料理」は、相当の満足を与えるに相違いない。

 (北大路魯山人「鍋料理の話」:青空文庫
  底本~「魯山人の食卓」:グルメ文庫。角川春樹事務所。2004年10月18日第1刷発行。
      2008年4月18日第5刷発行。
  底本の親本~「星岡」1934年)

 実は私はコンビニのおでんを買ったことがない。

 店内のちりやほこり、会話によってほとばしるつばきが鍋に入り込むからという理由がないわけではないが、それよりなにより、そもそもおでんは好きじゃないのだ。


 私とっては中途半端な味わいの料理だ。
 酒のつまみにするにしたってビールやウイスキーには合わないし、ごはんのおかずには物足りない。

 魯山人の言う「粗末な食物」とは言わないが、おでんが日本国民誰もが絶賛するような料理とは思えないのだ。

 でもなぁ、日本中のコンビニでおでんが売られている(ということは売れている)という現実があるからなぁ。

 魯山人は、出来たて、煮たて、新鮮だからこそおでんが美味く感じると書いているが、じゃあコンビニのはどうなの?って思ってしまう。

 ただ、おでんは煮込めば煮込むほど美味しくなるという考えの人もいるだろう。

Recorder  歌口とは反対側のパーツをイメージしてください
 それがおでんの正しきあり方なのかどうかはしらないが、すっかり味が浸み込み崩壊寸前のダイコンや、泥水に入り込んだ野球ボールのように茶色くなった卵とか、角がすり減った豆腐、リコーダーの先が混入したかと間違えそうなチクワなんかを目にすることは、ひどく珍しいこととは言えない。

 若き日のブリュッヘンがリコーダーを吹いた「涙のパヴァーヌ~リコーダー名曲集」。

 有名なクープランの「恋のうぐいす」や、アルバムのタイトルにもなっているエイクの「涙のパヴァーヌ」をはじめ、コレルリやテレマンなどのリコーダー作品全7曲が収められている。

 ブリュッヘンのリコーダー、レオンハルトのチェンバロ他の演奏。

 1960年から70年にかけて録音した音源を集めたオムニバス盤。テルデック。

 そんなわけで、明日あたりは“らいでん”の話をしたいと思う。

 にしても、“お座敷おでん”って、なぜかわからないがやらしっぽい響きだ。