悪い予感は的中なんの仲間かというと、歯肉の炎症を抑える抗生物質を飲んだら、おなかが緩くなる仲間たちのことだ。
歯科医師の指示により、そのすぐ近くの薬局で処方されたアジスロマイシン。
1日1回3日間飲み続けると、効果が7日間続くという、よく意味が分からない魔法のような薬である。
でも、これを飲むことによっておなかが緩くなる人がいると、薬剤師は言った。
そのとき、私は嫌な予感はした。
どちらかというとおなかを壊しやすいタイプだ。
しかも、典型的な“病は気から”タイプである。だから、その言葉を告げられただけで、宿命のようにおなかが緩くなるような気はしていたのである。
薬をもらって会社に戻る途中、ほか弁店に寄った。
昼食に海鮮天丼を買った。
口の中は痛いし、気持ちも沈んでいたが、このような重いメニューを選べるということは快方への兆しとも言える。
その海鮮天丼を食べ、1回目のアジスロマイシンを飲み、念のため一緒に出された痛み止めも飲んだ。
1時間ほどしてなんとなくおなかがごろごろしてきた。
果たして抗生物質のせいなのか、天丼の油による潤滑効果なのかよくわからない。
けど、大事には至らずに済んだ。
そもそも抗生物質というのは菌を退治するわけで、悪い菌も良い菌も殺す。
だから有益な腸内細菌も減ってしまい、それがおなかの調子を悪くさせる。
けど、下剤ではないのでこんなに急に来るのも妙な気がする。やはり、気持ちから来ているのだろうか?
この日も潤滑系翌日は金沢に出張したわけだが、ホームの売店(目にも耳にもしたことのない店名だった)で限定という文字に興味をもった缶コーヒーを買い、でもおなかが冷えてはまずいと、電車が終着金沢の1つ手前の小松駅を出発してから飲んだ。ぬるかったので美味しいものかどうかはさっぱりわからなかった。
その金沢での昼食。
いつもならもりもり寿司(回転寿司ではないほう)に行くところだが、今回は趣向を変えてとんかつを。
池中さんと伏草課長は“厚切りロースカツ定食”を頼んだ。
私は例の潤滑問題を考慮し“しょうが焼き定食”にしようと思ったが、注文を取りに来たお兄さんと目が合った瞬間“ヒレカツ定食”と口に出してしまった。
やはりとんかつの店だからとんかつを食べるべきだと、最終的に私の脳視床下部が結論を出したのだ。
おいしいヒレカツだった。3枚である。
それに対して、他の2人が頼んだ厚切りロースカツは、実際看板にウソ偽りなく厚く、そしてまたカロリーも十分摂取できるほどのロースだった。
正直、ヒレカツを選んだ自分の視床下部に感謝したい。
そのあと2回目のアジスロマイシンを飲んだ。
会議の前に、ちょっぴりおなかの中で地滑りの気配を感じたが、1回だけで、それも予兆で済んだのはなによりだった。
漬物の乳酸菌とキャベツの繊維質のおかげかもしれない。
考えるほど記憶はブラックホールに会議はホテルで行われたが、休憩のときにロビーにとてもなじみのある有名な曲が流れた。
しばらく耳にしていなかったので懐かしかったが、はて?、曲名が出てこない。
いくら考えても出てこない。
そして、曲はモーツァルトのピアノ・ソナタ第11番の第1楽章を室内楽にアレンジしたものに替わった。
ところが会議が再開したとき、うまくゆで卵の殻を剥けたときのように、するりと答えが出てきた。
フォーレのシシリエンヌ(シチリアーナ)だった。
やれやれ……
フォーレ(Gabriel Faure 1845-1924 フランス)の付随音楽「ペレアスとメリザンド(Pelleas et Melisande)」Op.80(1898)。
メーテルランクの劇のために書かれた曲で、のちに4曲からなる組曲に改編されている(1901)。
組曲の方は、前奏曲/糸を紡ぐ女/シシリエンヌ/メリザンドの死で構成されるが、シシリエンヌはフルートのソロが切なくも美しいメロディーを吹く、超有名曲である。
言い訳がましいが、あのときロビーに流れていたのはオーボエによる演奏。
だからすぐに気づかなかなかったのかもしれない。
私が親しんでいる演奏は、プラッソン指揮トゥールーズ・キャピトル劇場管弦楽団、シュターデのメゾ・ソプラノによる演奏で、組曲ではなく全曲からの抜粋盤(組曲にはない「メリザンドの歌」と「アンダンテ」が加わる全6曲)。
1980年録音。EMI。
けっこういいお値段かも
夜はもりもり寿司に行った。
会議の後に立食の懇談会があったので、そのあとの食べなおし、というかの飲み直しである。
もりもり寿司をネットで調べると、ひじょうに口コミの評判が良い。
しかし不思議なことにそれは回転寿司の形態の店舗についてのみ。
私たちが行ったふつうのすし屋の形態の方の情報は全然見つからない。
ここは、特上とか上とかの盛り合わせメニューのみで、お好みはない。
正直なところ、価格からみればたまらなくおいしいすし屋ってほどではない(感想には個人差があります)。
いや、おいしいし、特にネタは良いのだが(逆にしゃりはハテナが残る)、特上など上のランクの価格設定が内容からしてちょいと高すぎるんではって感じがする。上握りなどの方が断然コスパが良いよい。
回転寿司の店舗の価格設定は知らないが、皆が回転の方に殺到するのがわかる気がする。
