タイトル背景写真に偽りなし、のために
ってことで、今日は550でもSOSでもないSSOのCDを。
SSOアーカイヴシリーズ第2弾でリリースされたなかから、岩城宏之/札幌交響楽団のベートーヴェン(Ludwig van Beethoven 1770-1827 ドイツ)。
曲は交響曲第4番変ロ長調Op.60(1806)と交響曲第7番イ長調Op.92(1811-12)。
“レコード芸術”8月号の月評で特選盤に選ばれた演奏で、特に第7番が感動的だとすこぶる評価が高かった(以上、立ち読みの記憶による)。
ちょっと褒めすぎじゃないかって気もしないでもないが、立派な演奏、すごい力演であることは間違いない。
第4番は1977年10月25日に行なわれた第175回定期演奏会のライヴ。一方、第7番は1979年7月27日の第195回のライヴである。
会場はいずれも北海道厚生年金会館(現・ニトリ文化ホール)。 メイン・ディッシュのせいで、その前の味わいがふっとぶ
私は第4番が演奏された第175回は聴きに行っている。
が、正直なところこの演奏はあまり記憶に残っていない。ビシバシと聴き手に迫ってくる演奏なのになぜ印象に残っていないのだろうかと思ったが、すぐに理由がわかった。
そのあとに演奏された本日のメインディッシュである交響曲第3番「英雄」が困惑するほどの演奏だったからだ。というのも、最後の最後、コーダで岩城は急激に速度を落としてそのまま曲を終えた。あれほど遅い歩みのクライマックスは初めての経験だったので、当夜の記憶はすべてそこに集中してしまったのだ。
いま聴きかえせば記憶に残っているほど遅くはなかったのかもしれないし、トラウマになるほどユニークだったってことはないのかもしれない。
トラウマを抱えたままの私を救うと思ってぜひともこのときの「英雄」も SSO Archive Series として売り出してほしいものだ。
オットちゃん、札幌に現る!
この4番が終わった後の、若干1名の叫び声が凄い。
「ブラボー!」ではなく「オォォーッ、オォォーッ、オオオォーッ!」という、発情絶頂期のオスのオットセイがオーガスムスに達したときのような叫びなのだ(イメージです)。
これって周りは引く。大引きだ。心の広い人は苦笑い、箸がころがってもおかしな年ごろの少女なら大爆笑。
ホントかウソか知らないが、あのころ岩城の追っかけをしているオッサンがいて、N響なんかではどんな曲、どんな出来でも岩城が指揮した演奏は、最後の音が消えるか否やで叫んでいるという話があった。 実際、NHK-TVでN響のコンサートの録画中継を観ると、その声はしょっちゅう聞こえてきた(サバリッシュのときも叫んでいたけど)。
純な私はコンサートに行ったらああやって叫ぶのが流儀だと、危なく思い込むところだったほどだ。
そして、岩城が札響の正指揮者に就任して以降、この声が札幌でも生で聞けるようになったのである(望んではいなかったが)。
このおじさん、“ブラボーおじさん”とわれわれは呼んでいたが、実際には「ブラボー」なんて言っていない。
当時は若気の至りで判断を誤ってしまったようだ。“オットちゃん”とか“オッサン”にでもしときゃよかった。
第7番の195回は、私は聴きに行っていない。
力がこもったハイテンションな演奏で、曲が終わると聴衆の叫びが自然発生的にボニージャックスの歌声のように上がる。
下手な合唱団のように突出した1人の声が飛び出すということはない。
つまり“ブラボーおじさん”の声は目立たない。この日は喉の調子が悪かったのだろうか?あるいは、たまには仕事の都合で来られなかったのだろうか?
が、こういう「ブラボー!」はいい。たった1人が強行する自己陶酔の儀式ではなく、聴衆たちの感動の自然な発露だから。
もちろん第4番の演奏もすばらしい名演だが、第7番はその上をいく。
フォンテック。
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