日没並みに暗くなって豪雨に
思い起こせばあれは一週間前の月曜日のことだった。
朝の日の出は順調(今朝=写真と同じだ。が、今日は38℃にまでなるという気ちがいじみた予報は私の身体を不順にするに違いない)。
朝食には一応野菜摂取ということで赤いミニトマト2個をバクっと食べた(今日はトマトの在庫はない。代わりにトマトケチャップを1口飲もうとしたが、非常識な行為に思えたしそういう経験を過去にしたことがないのであっさり中止した)。
地下鉄に10分ほど乗って、降りたあとはマチナカの道を歩いて出勤し(たぶん今日も田舎道は発見できないだろう)、いつもの一週間が始まった(今週もまた始まってしまう)。
異変が起こった。
それはまだ日没までには3時間はある16時ころだった。
空の東半分が真っ暗になり、その中で閃光がきらめき、ゴロゴロゴロゴロ、ドドドドドとすさまじい音が轟き渡った。
トドの食あたりか?
違う、雷だ。
その音と下界の雨は他人の不幸で治まらず、やがて私に襲いかかることになった。
熱心に窓から空を見上げている私がいるビルの上空一帯も暗黒化し、17時ちょっと過ぎにはすさまじい勢いで雨が降り出してきた。
豪雨である。 グローフェ(Ferde Grofe 1892-1972 アメリカ)の組曲「グランド・キャニオン(Grand Canyon)」。
1. 日の出(Sunrise)
2. 赤い砂漠(Painted desert)
3. 山道をゆく(On the trail)
4. 日没(Sunset)
5. 豪雨(Cloudburst)
の5曲からなる。
グローフェが書いたアメリカの景勝地などを題材にしたいくつかのセミ・クラシックの管弦楽組曲なかでもっとも知られているのが「グランド・キャニオン」である。
私は行ったことも、この先行く予定・見込みも、そもそも行ってみたいという願望もまったくないが、グランド・キャニオンはアリゾナ州にあるそれはそれは見ごたえのあるアメリカの国立公園(世界遺産でもある)。
コロラド川によって浸食されたこの峡谷は長さが350km、幅は15km~20km、断崖の平均の深さが1200mなんだそうだ。
1200mの深さってなると、手稲山がすっぽり入りこんじゃうってことになる。そう考えると、実に変な照らし合わせ方とはいえ、すごいものを感じる。
オーマンディ/フィラデルフィア管弦楽団の演奏で。
1967年録音。ソニークラシカル。
餌食から弱者共存へ
窓を叩きつける大粒の雨や、窓から小走りに逃げ惑う人々を目にし、私はざまあみろなんて思うはずがなく、事態をわが身に置き換え、「これはまずい。事態は極めてよろしくない」と思った。
なぜならこの日の私は50cm径の折り畳み傘しか持ってきていなかったのだ。
いくら肩幅が広くない私といえども、コロポックルじゃあるまいし、このどしゃ降りの中を歩くには50cmは小さすぎる。
私は決心した。
牛坂課長の傘を強奪するしかない。
が、彼に近づくと彼が手にしていたのは、やはり持ち運びに便利なもののひどく役に立つとは言い難い50cm径の折り畳み傘ではないか!
いや、同じどころか、もしかすると私のブツより頑丈さや持続力はさておき、大きさでは劣る48cm径かもしれい。
だめだ。彼は獲物にはならない。
作戦が意味をなさないことを思い知らされた私はうなだれてしまい、視線を床に落とした。
が、そのとき目に入ったのは、自分の靴の底の先の部分にかすかに入っていたひび割れだった。
なんということだ!
最近バレエダンサーのごとくつま先立ちしようにもうまくバランスがとれなかったのは、亀裂によってつま先部分が弱くなっていたからだ。
いや、そんなウソをついている場合ではない。
この微細な亀裂から歩道に1200マイクロメートル以上に及ぶ深さでたまっている雨水が浸入してくるのは間違いない。
天下の小林製薬のアカギレ治療薬・アットノンを塗ってもこれは防げないだろう。
ということで、つい今しがたまで私の餌食になりそうだった牛さんは、一転して猫なで声で私に勧誘される身となった。
「私と境遇を同じくする不幸な帰宅難民よ!雨宿りでもしていこうではないか!」
一瞬戸惑った表情を見せた牛坂課長だったが、「いいですねぇ」と言ってくれた。本音は「しょうがねえなぁ」だったような気もする。
いずれにせよわれわれは合意し、できるだけ近くの“山ちゃん”に行くことにした。
2人だけで雨宿りしていて愛が芽生えてしまっては困るので、凸川係長と雷にへそを奪われることを恐れていた平瀬さんにも声をかけ、仲間に入ってもらった。
エコだし入れやすい
“山ちゃん”で感心したのは、渡された傘袋がスーパーなどの入り口に用意されているペラペラのビニール袋ではなく、何度も使いまわしができる、同じビニール製でも厚手の物。
折り畳み傘でも入れやすいし、よほどひどい仕打ちをしない限り破けない。
が、あの店でいったいどのくらいの数を用意しているのだろう?収容人数からすれば、相当枚数を準備しなければならないだろう。
不思議なオーラを発している、だが感じは悪くない店の女の子に「雨宿りのために来ました」と恩着せがましく言ってみたが、反応はスカだった。
手羽先、串カツ、オクラの天ぷら、もやし炒め、山ちゃんサラダなどを、そして仕上げは鉄板ナポリタンをシェアして食べた。ナポリタンが思いのほか美味しかったが、この日私がいちばん美味しくいただいたのはもやし炒め(390円)だった。一方で、串カツ-お勧めされた味噌ではなく、もちろん“ふつうのソース”で食べた-は感動を呼び起こさなかった。
なお、ここのいちばんのウリである手羽先だが、私は“流浪人”や“ペンタ・グリーン”(いずれも仮称)に比べてもいちばん肉厚でジューシーだと思っている。
ただ、山ちゃんは札幌にもあるくらいなので、希少性がない。そのため、名古屋を訪れた方をご案内するということにはなかなかならない。
札幌に“ゆかり”をおみやげに買って行ってもかつてほど大喜びされなくなったのと同じだ。大丸札幌店に出店してしまったから……
ことのほか長居してしまい、20時前まで雨宿ってしまった。
店を出ると雨は上がっていたので、とりあえず私が思い立ち牛坂一派を巻き込んだ雨宿り作戦は成功したと言える。
全然関係ないが、おととい8月6日はハムの日だってことで、自分でハムサンドを作った。
申しわけないが、とてもうまかった(注:野菜ははさんでいないが、別にサラダとして摂取していることを申し添えておく)。
これだけ全部は食べられない。
半分ほどは翌日の昼食に。
TVをつけたら、“サンデー・ドラゴンズ”だかいう番組をやっていた。
“噂の東京マガジン”は放映してないのね。いや、別に支障ないけど……
やはり超壮大なところだけあって、“ハイキング”って感じじゃないんですね。