切れ目なしで演奏する曲なのに切れ目が……
CDからウォークマンに音楽を取り込む際、私はSONYのXアプリを使っている。
Xアプリを使わなくても取り込めるのだが、でも成り行き上、というかウォークマンを手にしてからというもの何にも考えずにこれを使っている。
音楽圧縮形式はもっとも一般的なMP3に設定、ビットレートはオプションで128kbpsを256kbpsに変更して使っていた。
専門的なことはちっともわからないが。128より256の方が音質が良くなるだろうと思ったのだ。かといって、それ以上大きく指定するとファイル容量も大きくなるし、大きくなっても構わないものの、果たしてどのくらい違いがあるのかわからないので、中途半端に背伸びして256にしたのであった。
こうして5年以上にわたってCD音源をパソコンに取り込み、さらにウォークマンに転送して聴いているが、いたしかたないとあきらめているものの、困ったことにCDのトラックが変わるときに一瞬音が途切れるという現象が生じる。すべてのCDにおいて、ということでもないのだが、音が途切れるのである。
これが美空ひばりや由紀さおり、あるいは三田明のCDなら問題はないのかもしれない。というのは、1曲1曲が独立しているからだ。
クラシック音楽でも、第1楽章と第2楽章、あるいは第2楽章と第3楽章というようにトラック分けされているものは何ら問題にならない。その合間は無音であるのが本来の形だからだ。
ところがバレエ音楽なんかでは非常に聴きづらくて困る。あるいは、ラフマニノフの「パガニーニ・ラプソディ」のように短い変奏が続けて演奏されていくものもそうだ。変奏を聴いているうちに変になりそうになる。
たとえばストラヴィンスキーの「春の祭典」。
LPコードなら第1部と第2部の間にだけ無音の時間帯があったが(あるいはA面B面に分けてプレス)、CDになってからはバレエの場面場面でトラック分けされている。
これは非常に便利である。が、この曲ではだいたいは3~4分で場面が変わり、トラックも変わる。
そのたびに音が途切れ、その途切れ方もまるでしゃっくりのようにヒックというように聴こえる。
とっても多い、“切れ目なく”の演奏指示
先日たまたま某大型カメラ店のオーディオ・コーナーに行ってみると、いまやUSB機器がつなげられるアンプやプレイヤーが当たり前。
現在のようにCDを聴いているうちはいいが、CDだっていつ腐ってしまうかわからない。となると、このようにPCに取り込んだ音源をUSB端子につなげて聴くことになるが(つながるからには再生できるということだろう)、それが飲み過ぎたときの私のようにヒックヒックだと、LPの傷音以上にタチが悪い。
「乙女の神秘的な踊り」、ヒック、「選ばれし生贄への賛美」、ヒック、「祖先の召還」、ヒック、「祖先の儀式」、ヒック、「選ばれし生贄の乙女」だと、「てめえを生贄にしてやる!」と切れた私はUSBデバイスに八つ当たりしてしまうかもしれない。
クラシックではこのように場面と場面、楽章と楽章が続けて演奏されるものが非常に多いのだ。
専門用語ではギャップというらしい
そこで今さらながらウォークマンの説明書を読んでみると、Q&Aのページに曲が途中で切れるケースについての記述があった。
そこに書かれているのはライヴ録音のCDと場合ということだったが、想像するにライヴを通しで収録しているCDでは曲と曲の間でトラック分けがされているのだろう。
説明書には解決策として(MP3ではなく)ATRACで取り込んでくださいとある。
ウォークマンのサポートページにも、このように載っている。
Q.ウォークマン本体で、曲間を空けずに再生する「ギャップレス再生」ができません。
(ウォークマンA/E/F/S/X/Z/ZXシリーズ)
•ライブCDなどから取り込んだ、ノンストップの楽曲を再生する際、曲と曲の間が途切れたり、
ノイズが入ったりします。
•曲同士の間を空けずにウォークマンで再生したいです。
•曲間に「プチっ」という雑音が入ってしまいます。
私の持っているウォークマンの機種に合致する答えが、
「x-アプリ」をお使いください。ギャップレス再生できるのはATRAC形式の楽曲です。
なるほど。よしっ!と思いかけたが、ATRACはSONY独自の音楽圧縮形式。MDで使われた形式だ。
すでに時代はデジタルだから、私もあてのない将来に備えて……
この先いつか新たに入れ替え導入する可能性のあるアンプやプレイヤーがATRACに対応しているとは限らない。
実際、そのカメラ店でもらってきたパイオニアのSACDプレイヤーの仕様をみるとATRACには対応していないようだった。
困った。
そういう機械を買うあては全然ないが困った。
そこでXアプリの取り込み設定をMP3の進化形であるAAC、ビットレートは256kbpsとした(一般的に256kbpsだとCDと音の違いが聴き分け音質だという)。
さて試した結果であるが、カッコよく言えば“ギャップ”なるものは、ゼロにはならなかったがかなり良くなった。
途切れはほんの一瞬になり、ヒックとかプチッという音も小さくなった。
Mの父
ショスタコーヴィチ(Dmitry Shostakovich 1906-75 ソヴィエト)の交響曲第8番ハ短調Op.65(1943)。
なぜ?
唐突すぎない?
そう思ったあなたに、私はお教えしよう。
今回取り込み直してみた曲の1つがこれ。
というのも、第3楽章と第4楽章の終わりにはattaccaの指示、つまり休まず続けて演奏するようにとの指示があるのである。
つまり、第3楽章から第5楽章までは続けて演奏されるものの、各楽章はトラック分けされており、そこがギャップレスになっているかどうかを確認したのだ。
このときのCDの演奏はアルヴィド・ヤンソンス指揮ベルリン放送交響楽団によるもの。
アルヴィドは現在活躍しているマリス・ヤンソンスの父親。
1914年生まれ(おっ、伊福部昭と同じだ)で、1984年に亡くなっている。
発売・販売元の東武ランドシステムによれば、
マリスの父という敬称だけではあまりに惜しい名指揮者アルヴィド・ヤンソンス。ムラヴィンスキーの同僚にして盟友。同時代を生きたにもかかわらず録音に恵まれない巨匠。この第8番も初登場レパートリーとなります。お相手は繰返し客演した旧東ベルリン放送響。一聴して極めて重厚なまるでドイツ人が指揮するショスタコーヴィチと言ったら形容が妙でしょうか。遅めのテンポでじっくりと歩みを進める大河的名演。マリス氏も快諾の待望のリリースです。
ということだが、ここに書かれているとおり遅めのテンポで進められる。
奇をてらったところはなく、上品で誠実さを感じさせるが、物足りなさは感じない。
いや、なかなか聴かせてくれる。
ヤンソンスといえばマリスのことしか知らなかった私にとっては、またまた気になる指揮者に出くわしてしまったわいという、うれしくもあり、なんで今まで知らなかったの、このおバカ!という自責の念にもかられる(マリス指揮ピッツバーグ響のタコ8とは趣きがずいぶんと違う)。
生前はよく来日もしていたそうだが(死後来日されたら恐い……)、どうやら私にはお忍びで来ていたのだろう。
そしてこのCD、金沢のタワレコで在庫一掃なのかどうかはわからないが、かなりのお値引価格で売られていて、ほとんど迷わず買ったのだった(オンラインショップではふつうのお値段中)。最初にジャケット写真を見たときは、チェレプニンかと思ったけど……
1981年録音。Weitblick。
この曲、6月10~11日の札響第590回定期で取り上げられる(指揮は広上淳一)。
でも、私はこちらで仕事。希望と現実のギャップ……
ウォークマンの話に戻ると、こうなったらなんとかしゃっくり全快、つまりギャップレスの実現に向けてもう少し頭をひねろうとしている私である。
あっ、masaさん、メッセージありがとうございました。
新得のレトルトカレーもとっても美味しいですよ!
fkacはXアプリでは対応していない形式です。ハイレゾで使われているフォーマットですね。今日の記事で、私が最終的に選んだ方法を書いています。