Sakkyo188th  30分早く行動するか?乗り換えなしを選ぶか?
 19日。金沢に着いたのは11:48前だった。

 名古屋駅に行くまでは、名古屋9:19発の“ひかり503号”に乗って米原(9:45着)で降り、米原9:56発の在来線特急の“しらさぎ3号”に乗りかえて金沢に向かうつもりだった。それが池中さんが教えてくれた最短かつ最良の行程だからだ。

 しかし、早めに家を出た私は、理論通り早めに名古屋駅に着いた。
 すると、米原で乗り換える“しらさぎ3号”がまだ発車する前であった。発車前どころか、入線もしていない様子だった。
 この“しらさぎ3号”にここから乗るという手がある。

 いや、正直に言うと、朝起きたときから、どうせなら一気通貫で“しらさぎ3号”にしたほうが楽なのでは思いつつあった。
 時刻表を確認し、選択肢を知ってしまったのだ。だからこそそれに間に合うように家を出て来たのだった。

 どういうことかというと、当初予定していた新幹線利用の行程だとしても、その30分前に名古屋を出発するこの同じ“しらさぎ3号”に米原で乗り換えることになるのだ。

 つまり、あとから名古屋を出発するひかり503号が米原で追いつくので、勇んで“しらさぎ3号”に名古屋から乗りこまなくても金沢に着くのは一緒になるわけ。う~ん西村京太郎の世界だ(っつーのはオーバーだ)。
 ゆっくり出発したい人、総所要時間を短くしたい人はこの方法がベストだ。

 当初予定の8:20に名古屋駅に着いてしまった私としては、ひかり503号の発車時刻である9:19までただただ駅のなかをウロウロするしかない。ならば、「最初っから8:50発のしらさぎ3号に乗ってしまっては?、だってほんとはそのつもりなんだろ?」と、右脳と左脳とで協議した結果、いたってノーマルな結論を導き出したのだった。
 新幹線利用で乗り換えるより所要時間は30分多くなるが、駅でうろうろするよりは、しらさぎの車内で座ってゆったりちんたらと時間をつぶす方がずっとマシだ。
 それに何より、乗り換えなくて済む。ひかりやしらさぎの空席の有無を案じなくても済む。

 こうして、金沢に着いた。
 池中さんは自信が推奨するルートどおり行動し、私と金沢駅で顔を合わせた。

  待つこと覚悟で行ったのに、これって幸運?
 金沢では、東京から来た、10年前の私と同じ課にいて、いまは東京に転勤になっている“ベンちゃん”とも合流。
 まずは昼食ということで、池中さんのお導きに身をまかせ、行ったのは金沢FORUSというビルのなかにある“もりもり寿司”。
 池中さんは金沢に来たからにはいつも昼はここで食ているという。

 前回来たときにはすっごく混んでいたのに、この日は全然すいていた。
 さらに、おなじく前回はこの店の向かいにある、回転寿司の方の“もりもり寿司”は長蛇の列だったが、昼どき真っ盛りというのに、ガラス越しに空席が目立って見えた。
 いや、この商業施設(金沢フォーラス)のレストラン・フロア自体、人があまりいなかった。
 なぜなんだろう?

 寿司を食べ、そのあと取引先に伺うまで時間もあることから、お茶を飲みながらベンちゃんと事前打ち合わせをすることにしたが、場所はもりもり寿司と同じフロアにある麻布茶房にした。

 この店は札幌にもある。
 この店には担担麺がある。
 札幌店で担担麺を食べたことがある。

 ということで、寿司を食べた後だったので無理だったが、終始担担麺のことが気になってしょうがなかった。

  見るだけじゃダメだったんです……
 打ち合わせを終えてもまだ時間があるので、池中さんとベンちゃんを店に残し、4階に行ってみた。
 タワレコがあるのだ。その名も金沢FORUS店である。

 ただ眺めるだけのつもりだったのに、見るだけではどうにもがまんできず、アタシったら手を出してしまったんです。イケナイ旅人のアタシ……

 というのも、無茶苦茶プライスダウンした掘り出し物を見つけてしまったからだ。
 その掘り出し物のCDを3点と、近く買おうと思っていたノーマル価格のCDもここで買うことにした。

Bruckner4Sakkyo  金沢で札幌のものを
 そのノーマル価格のCDとは、朝比奈隆が札幌交響楽団を指揮した1978年12月14日の第188回定期のライヴ。

 曲はブルックナー(Anton Bruckner 1824-96 オーストリア)の交響曲第4番変ホ長調WAB.104ロマンティック(Romantische)」(1872-73)。使用楽譜はハース版。

 このコンサートにも私は行っている。

 私がナマ朝比奈を聴いたのはこのときが初めてで、朝比奈のファンってわけじゃ全然なかったが、多感な(もしくは権威主義な)世代だった当時の私は、日本指揮界の大御所の演奏に生で接することができるということだけで、すっかり気持が舞い上がり、そのくせこの「ロマンティック」がとにかく長く感じ、お尻も痛くなったことを恨みがましくしつこく覚えている。

 でも、あのときは良い演奏だとは思った。

 が、このCDを聴き、スケールは大きくないは、響きは厚くないは、音楽の深みがあまり感じられないはで、札響ってあのころこんな演奏をしてたんだろうかと、期待外れだった。思い出は美しすぎて……ってわけじゃないけど、ここまで“シケナイ”的とは……(←乾燥剤のことです)

 もちろん録音や会場(北海道厚生年金会館)の響きのせいもあるだろうが(SACDとして聴けばかなり違うのだろうか?が、CD再生でも第0番の方はここまでひどくなかった)、特に第1楽章の“軽さ”なんかは演奏そのものからくるもので、朝比奈ってこんなんだったっけ?と思った(私はほとんど朝比奈のブルックナーを聴いたことがないので、よくわからない)。

 いずれにしろ先日取り上げたの0番と比べると、ちょいとねぇ~、だ。

 タワレコによる紹介文は、

 ……朝比奈&札響の音源発売はこれが初。録音が多い"ロマンティック"の中でも、異彩を放つ貴重な記録です。

 ……オケの熟練度としても当時の演奏布陣は何ら他の日本のオケと比較しても劣らない力量を有しており、朝比奈の解釈を受け止めるだけのレヴェルにありました。この録音でも安定感のある金管楽器や響きの豊かな弦楽器群、端正な木管楽器の音色が朝比奈の指揮により見事に体現化されており、この組み合わせが決して違和感を持たない演奏に仕上がっています。数ある朝比奈の「ロマンティック」の中でも、今後注目される演奏のひとつとして評価されて行くでしょう。

 ってことだが、異彩を放っているのは確かにそうかも。
 “今後注目される演奏のひとつになる”のかどうかは、私には合議欄に判を押す勇気がない。

 ……金沢出張記はあと1回、しつこく続く……