Dvorak9Ancel  もうはや道南が熱くない?
 ちょうど1週間前に北海道新幹線が開業した。


 その日は朝からどのテレビ局もシンカンセン、しんかんせん、Shinkansen と、そればっかりを取り上げていた(にしても、いまだに“新しい幹線”って、なんかなぁ~)。

 あのはしゃぎようは観ている方としては、逆に興ざめし、挙句の果てにそんなに大騒ぎするほどのものかと反発心が芽生えたほどだった。

 だから初日は別としてそのあとの平均予約率が24~25%と聞いたときには、JRには申し訳ないが「ほら見たことか!函館までだったらそんなに利用されないって!」と、楽しい宴席でネガティヴな言葉を吐く嫌われ者のような自分の気持ちにほろ酔いしてしまった。


 嫌われ者といえば、それにしても甲子園への壮行会で負けちまえと言い放った県議はバカである、非常識である。
 見るからに偉ぶっていそうな傲慢な態度。県議がそんなに偉いのか?あんたらは県民に選んでいただいてる立場なんだぞ!私は道民だけど……

 えっ?嫌われてない?でも、多くの国民からは敵視されてるんじゃない?

 話はそれてしまった。戻さねば。

 テレビでは、いよいよ始発列車が発車しますとか、いま木古内駅に到着しましたとか、間もなく青函トンネルの中に入りますとか都度都度感激しながらご説明してくれていたいたが、そういう中継をいつまで観ててもなんら個人的生活に進展は見られないので、そして予約時間になったので床屋に行った。


 店に入り、バーバーチェアに座ると主人が「札幌まで来たら乗ってみるんですか?」と私に尋ねる。
 もちろん新幹線のことである。誘致しているオリンピックのボブスレーの話ではあるまい。

 「札幌まで来たら」という言い方が秀逸である。
 と書きつつも何が秀逸かわからないが、私が函館までわざわざ行って乗ったり、ご面倒でも名古屋から函館まで乗って、そのあとスーパー北斗に乗り換えて帰ってくるなんてありえないとわかっていることは確かだ。
 15年以上の付き合いである。長きにわたって髪を触っていると私の頭の中のこともわかるのだ。


 床屋のアシスタントの女性(主人の奥さんである)は、「自分の親が、一度でいいから北海道新幹線に乗ってみたい。新函館北斗から新青森まででもいいから乗ってみたいと言ってるんです」と言う。

 私にはそれを阻止する理由はまったくないが、それだと暗いトンネル体験をするようなものですよとアドバイスしておいた。

  前の日にも聞いた気がしたが、幻聴だったのか?
 店にはAIR-G(FM北海道)が流れていた。
 パーソナリティーの高山秀毅氏が北海道新幹線のことをあれこれ話していた。


 翌日。
 朝早くから車で1時間半ほど離れた町へ出かけた
 出かける用があったからだ。

 AIR-Gの“朝クラ”という番組を聴きながら運転した。


 前日の新幹線開業にちなみ、ドヴォルザークが尋常じゃない鉄道好きであり、彼の音楽のいろいろなところには列車のガタンゴトンというリズムが入っていると紹介していた。
 そして弦楽四重奏曲「アメリカ」と「新世界交響曲」が流れた。


 んっ?同じ内容を昨日床屋で耳にしたような気がする。
 でも気のせいかもしれない。あるいは気のせいじゃなくほんとに耳にしたのかもしれない。
 あいまいな記憶の私。

 が、間違いなく言えるのは、前に朝早く帯広から札幌へ車で移動したときにも同じような内容の話をしていた。

 ほれ!ここにあるとおりだ
 まったく同じではないかもしれないが、この話3回目ってわけ。

 同じことを言っても、それがくだらない内容じゃないので全然構わないのだが、あのときは土曜日だった。
 ってことは、放送の曜日が土曜から日曜に変わったってことなんだろうか?
 そうなんだろうな。私の疑問を解決するにはそう思うしかないよな。


 放送で流れた「アメリカ」の演奏はなかなかよかった。よかったのに演奏団体名を聞き逃してしまった。
 朝食のおにぎりを買うために、ちょうどそのときはコンビニに立ち寄っていたからだ。


  限りなくモノっぽいステレオ
 「新世界」の方はアンチェルの演奏だった。

 だから今日はアンチェルの指揮による、元祖・鉄道オタクのドヴォルザーク(Antonin Dvorak 1841-1904 ボヘミア)の交響曲第9番ホ短調Op.95,B.178「新世界より(From the New World)」(1893)。


 ただしここで紹介するのは放送で流れていたものではなく、ウィーン交響楽団を振った1958年録音。
 分離はひどく悪いがモノラルではなくステレオ録音である。


 この録音について発売元のナクソスは、


 アンチェルとウィーン交響楽団による「新世界より」は同年の1月録音のものが知られていますが、こちらは2月にオーストリアで録音された演奏です。


と紹介している。


 一方でHMVの通販サイトには、


 こちらの『新世界』のCD化にあたっては、LPからの板おこしがおこなわれていますが、盤の状態が悪いことに加え、トランスファーの方法が独特なのか、これまでのCDに較べるとノイズや歪、セパレーションなどにかなり問題のある聴きにくいものとなっています。また、録音日時についてはフィリップス盤とは異なるデータが記載されていますが、演奏自体は同じものです。ご了承のうえお求めくださるようお願いいたします。


と書かれている。


 フィリップス盤を聴いたことがないので私にはなーんも言えないが、このような見解(聴解)の違いがあることをお伝えしておく。

 第2楽章のテンポの速さは、早く家に帰ろうぜって感じで好き嫌いが解れるだろう。

 カップリングはスメタナの「モルダウ」。レーベルはWIENER SYMPHONIKER。