SchnittkeFilm  センセ、お・し・え・て!
 先日、電子書籍に本宮ひろ志の青春アドヴェンチャー、でもスケベな漫画「俺の空」(第1部)の全9巻をダウンロードして読んだ。


 2年で高校を卒業して全国各地、あげくに海外にまで花嫁探しに出る大財閥の息子・安田一平の放浪記であるが、週刊プレイボーイに連載されていた当時、果たしてどこまで読んだか覚えていない。少なくとも結末がどうなったのかは知らなかった。

 私にとってはなんといっても、物語の最初、一平が卒業した夜に川村先生という美人教師に筆おろしさせてもらい童貞まで卒業しちゃううところが、いちばん印象的でコーフンものであった。
 こんな魅力的な女性教師は幼稚園(私は幼稚園を中退している)、小学校、中学校、大学を通じていなかった。


 晴れて男になった主人公・安田一平は旅に出るわけだが、どこに行ってもモテる。しかも本宮ひろ志の描く女性はみんな美人もしくはかわいい(鼻毛が飛び出た女囚人を除く)。
 初体験のあとすぐなのに、あちらのテクはすごそうだし、ケンカをしても負けないし、とにかく何をやってもうまくいく。
 そうでなきゃ物語が進まないのっだが、いま読み返すとかなりありえない内容だ。
 だからこそ青春アドヴェンチャーポルノチック漫画なんだけど。

  古尾谷雅人さんの奥さんになった人です
 「俺の空」は映画化もされた(1977年・東宝)。

 ゴレンジャーにも出ていた鹿沼えりが川村先生役で、イメージにぴったりだと思ったが、大人になり、家庭にビデオが普及し、自分でもビデオデッキを買ったときに、この映画のビデオを借りてみようと思ったが、探してもみつからない。

 ずっと不思議に思っていたが、ウィキペディアで先日調べたところ、あまりにも客の入りが悪く8日間で公開打ち切りになったそうだ。それならビデオ化されるわけがない。

 監督や俳優が気の毒だが、実写化してしまうとストーリーがあまりにも荒唐無稽であることが露呈してしまったのかもしれない。
 若き日の鹿沼えり演じる川村先生の“女体の神秘実技講座”のシーンを観てみたかったのに……


 揚げ足取りでちょっぴり申し訳ない気もするが、一平が北海道を旅しているときに列車が朝里駅に着く場面がある。朝里駅は札幌⇔小樽の間にある函館本線の駅だ。
 アナウンスが「朝里ォ~」と言うのだが、これは調査不足だろう。
 アササトではなくアサリだから、「朝里ィ~」が正しい。それ以前に、たぶん駅の規模からして列車到着時に駅員がアナウンスすることはなかったのではないだろうか。


  誰が放浪したのかはしりませんが……
 シュニトケ(Alfred Schnittke 1934-98 ソヴィエト→ドイツ)の組曲「放浪物語(The Fairytale Of The Wanderings)」(1982/83)。
 これまで3回にわたって紹介してきた「シュニトケ映画音楽集」の3枚目のCDに収録されている。
 A.ミッタ監督の同名の映画から、シュトローベルが以下の10曲からなる組曲にアレンジした。


 1. In The Bat Cave
 2. Crash Of The Carriage - The Sea
 3. Pledge Of Love - Orlando's Theme
 4. Cats and Mouse Game
 5. Mayday Dance - Dive Bar - Hunt
 6. Plague
 7. Minuet
 8. Dance - Waltz - Orlando's Death
 9. Destruction Of The Castle
 10. Finale


 ネコとネズミなんてトムとジェリーみたいだが、とにかくオルランドという人が出てくるようだ。
 この音楽も冒頭のしっとりしたメロディーが印象的で、これが全体を通じて現われる。
 8曲目のDeathの箇所は怪獣映画にも使えそうだ。終曲のもの悲しさも絶品。

  インドっぽくないです

 また、このCD3には組曲「リッキー・ティッキー・タヴィー(Rikki - Tikki - Tavi)」(1976)も入っているが、これはA.スグリジが監督を務めた子供向けのインドとの合作映画のための音楽を2003年にシュトローベルが組曲化したもので、次の5曲からなる。


 1. Title Music
 2. Menace and Rescue
 3. Night
 4. Fight
 5. Epilogue


 この曲も出だしから印象的。両端の曲はバロック時代の組曲のテイストだ。


 2004-05年録音。カプリッチョ。


 シュニトケは1993年の「巨匠とマルガリータ」を最後に、映画音楽を書かなかったようである。


 A.イヴァシキンの「シュニトケとの対話」(秋元里予訳:春秋社)の中で、イヴァシキンの「映画音楽を作るプロセスそのものがシュニトケさんにとっては不快なようですね?」という問いに対し、シュニトケは「ええ、自分を檻の中に追いやりました。新人が今、映画の世界に入り、シナリオをもらったら、おそらくもっと新鮮な決断をするでしょう。新人は慣習的な紋切り型の考え方にとらわれませんから。だから僕は映画から逃げなきゃならなくて、実際そうしたんです」(70p)と答えている。


 CD1の記事はこちら
 CD2の記事はそちら
 CD3の記事はいま読んでいるわけで、CD4の記事はあちら