ソリストもオケもよく飽きなかったものだ
モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart 1756-91 オーストリア)のフルート協奏曲第2番ニ長調K.314(K6.285d)。
この曲は、札響に通い始めたころ何度か立て続けに聴いた。
というのも、当時鳴り物入りで入団したフルート奏者・細川順三をソリストとして、札響が演目で取り上げていたからだ。ただし、定期演奏会ではなかった。
当時の札響としては、新進の有望フルート奏者が入団ということで、本人に腕前を披露する場を設けるのと同時に、細川効果による観客増も狙ったのだろう。
ステージ上の細川は感じの良い人だった。
まだ若いというか、未熟な私には細川氏腕前のほどはよくわからなかったが、札響のなかでも看板奏者になったのは確かだ(その後N響で吹いていたくらいだから、やっぱりすごい人なのだ)。
が、このころ細川がソリストを務めたコンチェルトで私が聴いたのは、このモーツァルトの2番しか記憶にない。
この曲しかやってなかったのか、たまたま私が他の曲を聴かなかったのかはわからないが、あのころの札響といえば、この2番のコンチェルトとブラームスの第1交響曲の印象がとても強い。
冷たい奴だと言わないで……
私にとってもクラシック音楽を聴きはじめた、いわば有史初期に親しんだ曲の1つなのに、自分の過去記事を見てみると不思議なことにこの曲をほとんど取り上げていない。
なしてでしょうね?
でも、そんなこと聞かれても困りますでしょ?
でも、決して冷たい態度をとってきたのではない。
曲が書かれたいきさつはここの記事にちょこっと書いてあるが、フルート愛好家のオランダの金持ち商人F.ド・ジャンの依頼で作曲された。しかし前年に作曲したオーボエ協奏曲ハ長調K.314(K6.285d)を編曲したものだったので、報酬は約束した額の半分しかもらえなかったという。
なお、“順三さんと2番と私”についてはこの記事に書いてある。
曲はモーツァルトらしく健康的。軽快な両端楽章と、伸びやかにフルートが歌う第2楽章の、3つの楽章からなる。
今日はあまり知られていない ― ということは、名演の誉れが全然高くない ― タルマチウのフルート独奏、グレース指揮ヨーロッパ・シンフォニーによる演奏を。
だるまがチューしちゃったような名のこのフルーティストは1963年ルーマニア生まれ。今日紹介する録音は初のソロ・アルバムとなったものである。
フルートの演奏そのものは悪くない。伸びやかでおっさんくさくない。
管弦楽もこじんまりしており、残響の多さがサロン的な雰囲気を感じさせるが、響きすぎのような気もしないではない。
音楽誌では推薦マークがつく演奏ではないだろうが、初々しいともいえる愛らしさがある。
1995年録音。アルテノヴァ・クラシックス。
