CouperinOrdreMoroney  バッハもクープランの著書で勉強した
 すでにご承知のとおり、現在このブログではクープラン・シリーズが進行中だが(って、ただ聴いてるだけじゃん)、ここで皆川達夫氏がクープラン(Francois Couperin 1668-1733 フランス)について書いている文を紹介しておこう(「バロック音楽」:講談社現代新書)。


 18世紀に入るとともに、クラヴサン愛好の傾向はさらに増大する。……フランソワ・クープランにいたって、フランス・クラヴサン音楽はひとつの完成点を迎えたといってよい。
 彼は、サン・ジェルヴェ大聖堂のオルガン奏者、また王宮礼拝堂オルガン奏者として活躍するとともに、4巻のクラヴサン曲集を刊行しているが、これらこそフランス鍵盤音楽史上もっとも重要な曲集である。
 その〈寵姫〉〈恋のうぐいす〉〈シテール島の鐘〉などの文学的ないし絵画的な標題が付されたクープランのクラヴサン作品は、基本的に舞曲のリズムを支えにし、短い流れるような旋律を何回も装飾音ゆたかに反復してゆく形が多いが、あふれるばかりの詩情とメランコリーをひめた愛すべき佳品である。比較的短い小曲でありながら、そこにはフランスのエスプリ、優雅、イロニー、知的な節度、均整感などすべてのものがこめられている。それらは、4曲ないし十数曲まとまってオルドル(組曲)を形づくっているが(全体で27の組曲)、しかしそれは決してひとつの有機的な統一体ではなく、個々の楽曲はそれぞれ固有の性格をもって独立した傾向をみせている。また、彼が1716年に刊行した「クラヴサン奏法」は当時もっとも重要な鍵盤奏法の教科書として知られ、ドイツの大バッハもこれを学んでいる。


  寵姫=愛妾=お気に入り
 作品のタイトルについては訳者によって違いがあるが、ここに書かれている「寵姫(ちょうき)」は、おそらく「クラシック音楽作品名辞典」(井上和男編:三省堂書店)では「お気に入り」と訳されている作品だと思われる(ボーモンによる抜粋盤では「愛妾(あいしょう)」となっている。愛妾とはお気に入りのめかけのことである)。
 また、「恋のうぐいす(恋のナイチンゲール)」と「シテール島の鐘」はともに「第14組曲」の中の曲である。


 今日は1713年刊の「クラヴサン曲集第1巻(Pieces de clavecin premier livre)」から「寵姫」を含む「第3組曲(Ordre No.3)」。
 第1巻は第1~第5の5つの組曲からなるが、第3組曲は次の12曲からなる。


  1. 陰気な女(アルマンド)(La tenebreuse(Allemande))
  2. クラント1,2(Courante1,2)
  3. 憂うつな女(サラバンド)(La lugubre(Sarabande))
  4. ガヴォット(Gavotte)
  5. メヌエット(Menuet)
  6. 巡礼の女たち(Les pelerines)
    ・行進(La marche)
    ・施し(La caristade)
    ・感謝(Le remerciement)
  7. ローラタン家の人びと(Les Laurentines)
  8. スペイン風(L'Espagnolete)
  9. 嘆き(Les regrets)
 10. プロヴァンスの水夫たち(Les matelotes provencales)
 11. お気に入り(2拍子のシャコンヌ)(La favorite(Chaconne a deux tems))
 12. いたずらな女(La lutine)


 このように第6曲「巡礼の女たち」は3曲からなり、また第2曲のクラントは、1と2を別々にカウントし2曲とする場合もある。


 「クラヴサン曲集第1巻」では、皆川氏の言う“文学的ないし絵画的な標題”ばかりではなく、舞曲の名がそのまま付いているものも少なくない。


 この「第3組曲」ではクラント、ガヴォット、メヌエットが舞曲名そのものズバリであるし、アルマンド、サラバンド、シャコンヌもそうである。
  
 今日はいつものボーモンではなく、モロニーによる演奏を。

 現在モロニーはクープランのクラヴサン作品全曲録音に取り組んでいるところだそうだ。
 今日ご紹介するCDには「クラヴサン曲集第1巻」の5つの組曲が収められている。

 モロニーのタッチは力強い。1音1音がしっかりしている。
 反対にボーモンの演奏の方が優雅でしゃれっ気がある。

 なおボーモンによるクープランの「組曲」全集のなかでも、2台のクラヴサンによる作品ではモロニーが第2クラヴサンの奏者を務めている。

 録音年の記載はないが、リリースは2012年。PLECTRA MUSIC。

 にしても、「お気に入り」が、訳によっては全然別な印象を与える「寵姫」とか「愛妾」になるのってなんだかすごい。
 もっとも、寵姫も愛妾もふだん見かける字句じゃないけど……