SauntSaens94Baumann  保守的なおかげで模範的存在に
 グリエール(Reinhold Moritzovich Gliere 1875-1956 ロシア)のホルン協奏曲Op.91(1951)。

 グリエールはモスクワ音楽院を出たあと、同校でソヴィエトの作曲家を数多く育てた人物。

 作曲家としての作風は国民楽派と西欧派のチャイコフスキーの両方の影響を受けており、また最後までロマン派音楽の伝統の上に立って創作した。しかしながら、民族的な要素ももちろんある(交響曲第3番は傑作!)。

 グリエールのこのスタンスは、しかし、ソヴィエトにおいては大いにプラスに働いた。模範的な社会主義リアリズムの作曲家とみなされることになったからだ。

  良い曲なんだけど……
 ホルン協奏曲はボリショイ劇場管弦楽団の首席ホルン奏者だったポレックから依頼されて書かれたもの。
 非常にロマン主義の色合いが濃厚な作品だ。

 3つの楽章からなり、どの楽章も魅力あるメロディーが登場するが、そしてまた終楽章は熱狂的でもあるのだが、どこかモヮ~ンとしている。つまり、最後の一押しが弱い。刺激が弱い。気が抜けかかったハイボールのように。

 とはいえ、この作品でグリエールは、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲の独奏パートのように、ホルンを技巧的に扱おうと考えた。
 力強さ、息の長さ、高い音の持続といった奏者泣かせのテクが要求されているそうだ。

 そしてまた、ホルン協奏曲というジャンルの中では貴重な作品の1つでもある。

 先日サン=サーンスの演奏会用小品でも紹介したバウマンの独奏の演奏を。
 管弦楽はマズア指揮のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団。

 1985年録音。デッカ。