確かに偏執的だが変態的でもある
ケーゲル/東京都響によるマーラー(Gustav Mahler 1860-1911 オーストリア)の交響曲第7番ホ短調「夜の歌(Lied der Nacht)」(1904-06。その後たびたび管弦楽配置を変更)。
1985年、東京文化会館での都響第218回定期のライヴ。
最初から最後までケーゲル特有の張りつめた雰囲気に支配された、異様でユニーク、しかし興奮もの、感嘆もののすばらしい演奏だ。
発売元はこう書いている。
東武レコーディングズ(Tobu Recordings)レーベルから超弩級の名演が登場です。WEITBLICKレーベルでは、ケーゲルのマーラーを数々リリースして参りましたが、演奏記録があるにもかかわらず、第5番、第7番の放送録音は幾ら探しても見つかりませんでした。
しかし、ケーゲルが東京都交響楽団に二回目の客演を果たした1985年の曲目が何と『夜の歌』だったのです! 東京都交響楽団様が良好な状態で録音を保存していたためついにその全貌が明らかになりました。
……
演奏の特徴はケーゲルならではの糞真面目偏執的演奏で、冒頭の第2ヴァイオリン以下をトレモロで演奏させないところなど、ギーレン、ベルティーニもやっていますが徹底振りはケーゲルに敵いません。そして、第4楽章冒頭のヴァイオリン・ソロにおけるグリッサンドの強調も如何にも闇の世界を描いた交響曲として相応しいものです。そして大騒ぎのフィナーレも厳格さがさらに強まる感があります。聴衆の熱狂も凄まじい! 「一般的でない」、「魅力に乏しい」と非難されることもある『夜の歌』を深く理解する指揮者、オーケストラ、そして聴衆の三位一体の幸福なコンサートがこの当時開かれていたことに感銘と驚きを禁じえません。(東武トレーディング) 独特だがすばらしい「夜の歌」ワールド
ケーゲルの演奏は聴き手にリラックスさせることを許さない。
つまり疲れる人なのだ。
いつも近くに居られるとたまらないタイプ……
いや、CDを聴いてる分には、コーヒーを飲んだり、ちょいと換気扇の下まで行ってタバコを吸ったり、欲求に促されトイレに行くことも貧乏ゆすりするといった自由はもちろんあるが、それでもながら聴きは罪悪である戒めるようなオーラがプンプン。
そして、あの怖い顔が頭に浮かぶ(ベートーヴェン交響曲全集のボックス写真(写真下)が強烈に私の頭に残っている)。
そしてまた、いきなりピストル自殺してしまったという事実が思い出される。
そんなこんなで、この7番、目が離せないがごとく耳が離せない。
その引力はすごい。
冷徹で不気味。が、しばしば暴走気味……
都響の各奏者も巧い。よくこの棒についていったものだ。
世界中に紹介したい名演だ。
あらためて書くと、1985年ライヴ録音。TOBU RECORDINGS。