私の夢はこんなもの
浅田次郎の新刊「BLACK OR WHITE」(新潮社)を購入、読み始めた。
ブラック・アンド・ホワイトならチョコレートの名前のようだが、オアだから黒か白かってわけで、オセロみたいなものだ。
まだ「王妃の館」(集英社文庫)を読み終えてないのだが(というか、上巻の後半で止まっている)、割り込み読みを決断した。
帯の表には、
あのバブルの夜、君はどんな夢を見ていた?
経済の最前線で夢現の境を見失ったエリート商社マンの告白がいま始まる。
近代日本の実像に迫る渾身の現代小説!
と書かれており、これじゃどんな内容か見当がつかないが、帯の裏表紙側には、
「近ごろ、よく眠れるかい」旧友の都築君はそう言って語り始めた。三代続く商社マンだった彼の輝かしい人生を暗転させた美しい悪夢、白い夢と黒い夢、そしてその果てに見たこの国の本性を――。
夢を見なければ人生の三分の一は空白だ。
それを罪だと思わないか。
ということで、どうやらこの国の本性を教えてくれるらしい。
私の場合、夢は毎晩見ていると思うが、多くの場合覚えていない。
先日の札幌への出張では、一緒に会議に出席した人の1人が「あそこは出るって有名ですよ」と過剰なる親切心から教えてくれた。
あそこというのはその日私が宿泊するホテルであり、出るものはゴキブリではなくお化けである。
非常に不安に思ったのだが、でもお酒を飲んで部屋に帰ったら、すぐに寝入ってしまった。
出るどころか、夢も覚えていない。
夜見る夢のことじゃなくて、お金持ちになりたいとか有名になりたい or 女性にもてたいといった意味での夢なら、いま現在、私が強く抱いている夢は蟹チャーハンを食べたいということである。
この小説のプロローグには次の一節がある。
ソファに沈みこみ、広い壁に不釣合なくらい小さいマティスに目を向けて、都築君は勝手に語り始めた。
音楽も画家も2つのマティス
ヒンデミット(Paul Hindemith 1895-1963 ドイツ→アメリカ)の交響曲「画家マティス(Mathis der Maler)]
(1934)。
ヒンデミットは当初後期ロマン主義の影響が濃い作品を書いていたが、第1次大戦後はロマン主義からの脱却をめざし、新即物主義、新古典主義を推進した。調性を否定したが無調ではなく、中心となる音をもつ無調っぽい作風で当時の音楽界に影響を与えた。
交響曲「画家マティス」は同名の歌劇と並行して書かれたもの。
歌劇「画家マティス(1934-35)」は、マティスが描いたイーゼンハイムの祭壇画を題材に自ら台本を書いた作品だが、交響曲「画家マティス」は歌劇の中の音楽を用いた3楽章からなる管弦楽曲である。
マティスというのはマティーアス・グリューネヴァルトのことで、中世のドイツの画家。
1542年、教会に対して農民たちに農民戦争を起こさせた。
で、ここでお断りってことになるが、浅田氏が「BLACK OR WHITE」で書いているマティスは、きっとフランスの画家アンリ・マティスのことで、マティーアス・グリューネヴァルトじゃないだろう。すいません。
交響曲は次の3つの楽章からなる。
1. 天使の合奏(Engelskonzert)
2. 埋葬(Grablegung)
3. 聖アントニウスの誘惑(Versuchung des heiligen Antonius)
それぞれの楽章はマティスの祭壇画のタイトルに基づくもので、ヒンデミットは絵画を見ているときと同じ心理状態を聴き手に与えようと試みたという。
初演は大成功だったが、これがヒンデミット事件を巻き起こす結果となった。
以前にも紹介した、ケーゲル指揮ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を。
1980年録音。ドイツ・シャルプラッテン。
無意識のうちにパパを……
ところで、原題をみておわかりのように画家のドイツ語はMaler(まさか der だとは思うまい)。この語は作曲家のMahlerと同じ発音になる。
フロイトによれば、マーラーと結婚を決めたアルマは、この語の響きに魅かれたという。
村井翔は「マーラー 作曲家・人と作品シリーズ 」(音楽之友社)のなかで、次のように書いている。
アルマには「父親への固着」が認められるという。アルマの父はエミール・ヤーコプ・シンドラーと言い、高名な風景画家だったが、アルマが13歳の時に腸閉塞で急死してしまった。アルマの母アンナ・(旧姓)ベルゲンはその後、父の弟子だった、同じ画家のカール・モルと再婚する。アルマはこの行動を決して許さなかった。たとえモルが父シンドラーに劣らぬ画家で、やがてクリムトら、分離派の中心人物の一人となるとしても。アルマがマーラー(Mahler)と結婚したのは、その名が画家(Maler〔発音は同じ〕)を意味するからである。
甘い物好きの女性が佐藤さんに、チョコ好きの男性が千代子さんにひかれるのと同じである、、、ワケがない。