夜明け
日曜日。
5:20に目が覚めた。
もちろんまだ外は暗い。
私は明るくなるのを待ち、コンビニに向かった。
ホットシェフのフライドチキンを買いに行くためではない。目的は朝刊だ。
でも匂いに駆られて余計なものを買わないよう、所持金は新聞代ちょうどにした。
が、ひどく強い風だ。
さっきまでそうでもなかったはずなのに、私が一歩外に出るとビュービュー風が吹き荒れ、地吹雪。粉雪がビシビシと私の繊細な頬を打つ。
何度か挫折しそうになった。
悪天候にもかかわらず新聞を買いに行くという暴挙に出たため途中で生き倒れてしまいました。
そんなことになりたくはない。
でも、ここまで来たのだから引き返したくない。
強い向かい風と視界の悪さではっきりいって挫折しそうになったが、「しんぶん・しんぶん・しんぶんし」とはじめてのおつかいの子どものように気合を入れて目的を果たした。
が、気になったのは帰りの列車のことだ。
私は10時18分札幌発のスーパーとかち3号に乗る予定である。
朝食後
6時半にJR北海道のホームページで運行状況を確認した。
トワイライトエクスプレスとスーパーカムイ1号が遅れているとあるが、どうやら札幌近郊も帯広方面も平常運行のようだ。釧路や網走あたりの普通列車にも運休が出ているようだが、今日の私には関係ない。
ふぅ~。よかった……
が、家の外の風は一向に治まる気配がない。
私は自宅最寄りの駅から札幌駅までの列車に遅れが出ていないか不安になって来た。
7時50分に再び運行状況を調べる。
スーパーとかち2号 : 帯広駅停車中
んっ?
本来なら6:46に発車すべき列車が、まだ帯広駅でぐずぐずしているというではないか!
そして、この列車の遅れは私の移動に大きな影響をもたらすのだ。
というのも、私が乗るスーパーとかち3号は、2号の折り返し運転便なのだ。
このときはまだ余裕があった。
1時間ぐらいの遅れなら許す、と。
8時15分にまたチェック。
スーパーとかち2号は相変わらず帯広駅に停車中だ。
ここで異変に気づく。
後続の8:01帯広駅発のスーパーおおぞら2号については遅れているという案内がないのだ。
先行のとかち2号は停まったままなのに、後続は正常?じゃあおおぞらはとかちを追い越したのか?
となると、とかち2号が停まったままなのは天候のせいじゃなく車両不具合ってことも考えられる。
問い合わせ
私は南千歳駅に電話してみた。
なぜ南千歳駅かというと、札幌駅なら電話がつながりにくいだろう。でも、スーパーとかちが通る駅じゃないと話が通じにくいかもしれない。となると、私がすがれるのは新札幌か南千歳ということになる。でも、新札幌駅にかけても「現在使われておりません」と、美しいが冷淡な女性の声が流れるだけだった。どこで調べ間違えたのだろう?
私は「今日10:46にそちらの駅を出発するスーパーとかち3号は平常通り動く予定ですか?」
わざわざ南千歳駅の発車時間に置き換えて問い合わせるところが立派だ。私は。
南千歳駅の駅員が親切に説明してくれた内容を要約すると、
・新得あたりで吹き溜まりがあってスーパーとかち2号は運休になった。
・その車両を折り返しで使うスーパーとかち3号も運休になった。
・それ以外の列車は動いている。
そして指定券の変更について話していると「お客様、いま千歳市内からですか?」と言われ、いえ、「実は札幌です」と答えると、「それでは札幌駅の窓口で相談してみてください」と教えてくれた。
このあいだ書いたように、実はこの日は午後の列車の指定席がどれもすでに満席だったことを私は知っていた。
変更しようにも席がない。
混みこみの自由席で不自由な時間を過ごすのは勘弁だ。
救いの△
“考える人”のように悩み、一応JR北海道のホームページで調べてみる。
すると、なんということでしょう!
15:43札幌発のスーパーとかち5号の空き状況が△になっているではないか!
世間に疎い人のために説明しておくと、△というのは空席少々という意味だ。
すぐさま自宅最寄りの駅に電話をし、私は今追い詰められており、ついては列車を変更したいと、疲れ果てたカゲロウのような声で訴えた。
親切な駅員さんは言った。
「おっ、1席だけ空いています。すぐ予約を入れましょうか?」
「ウイ、ウイ、ボンジュール!」
ということで、なんとか帰りの列車を、席を確保することができた。
ただ私の心を落ち着かせないようなことが続く。
そのあとスーパーおおぞら2号も遅れていることがネット上に公開され、またスーパーとかち2号と3号が運休となったことも全国民に明らかにされた。
10時20分時点での案内は次のとおりであった。
▲特急列車の運休
・札幌 10時18分発 帯広行き 特急スーパーとかち3号 : 全区間運休
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▲特急列車の遅れ
・釧路 6時26分発 札幌行き 特急スーパーおおぞら2号 : 帯広駅停車中
・釧路 8時38分発 札幌行き 特急スーパーおおぞら4号 : 約35分遅れ
・札幌 7時02分発 釧路行き 特急スーパーおおぞら1号 : 新得駅停車中
が、これが動かなかったら私が血圧を上げながらようやっと席をGETした列車だって大幅に遅れるか運休になってしまう恐れがある(スーとか2号はすでに本来の運行時間帯を過ぎているので、実にさりげなく運休したことが表示されていない)。
しつこくチェック。
11時10分時点の案内。
▲特急列車の運休
・札幌 10時18分発 帯広行き 特急スーパーとかち3号 : 全区間運休
--------------------------------------------------------------------------------
▲特急列車の遅れ
・釧路 6時26分発 札幌行き 特急スーパーおおぞら2号 : 約2時間40分遅れ
・釧路 8時38分発 札幌行き 特急スーパーおおぞら4号 : 約40分遅れ
・札幌 7時02分発 釧路行き 特急スーパーおおぞら1号 : 約1時間20分遅れ
おお、この路線、何とか動き出したようだ。
この間の私の心はブラームス(Johannes Brahms 1833-97 ドイツ)のピアノ四重奏曲第1番ト短調Op.25(1861)のようだった。
私の気持ちはこの曲のよう
いや、オリジナルではなくシェーンベルク(Arnold Schoenberg 1874-1951 オーストリア→アメリカ)によるすさまじい管弦楽編曲版の方である。
情報に一喜一憂したり、あきらめかけたり、なんとかならないかと奮闘したりと、まぁなんて刺激的なんでしょう。まるでそれはこの曲のよう。
この曲の演奏にはドホナーニによる(私としては)ほとんどケチのつけようのない録音があるが(⇒紹介記事はこちら)、今日はクラフト指揮シカゴ交響楽団による演奏を。
録音のせいもあるのかサウンドはざらついているが、ヤンチャ度、変態度ということではドホナーニ盤よりもこちらに軍配が上がる。まさに暴れん坊将軍である。
1964年録音。この曲の世界初のセッション録音となった記念碑的録音だ。ソニークラシカル。
出発進行ぉ~、だが
私が乗車したスーパーとかち5号は定刻の1分遅れ、平たく言えばほぼ定刻通りに札幌駅を出発。
だが、皆さんの期待を裏切ることなく、すんなりとはいかなかった。
そのことについては、さらにしつこく、続く……
土曜日にフロリダへと飛んだ義姉はポートランド空港でTVのインタビューにちゃっかり答えてました。
「私の便は遅れるけど、乗り換えのニュージャージーからの便も遅れるというから、ちゃんと間に合うと思います。」とぱきぱきと答えてました。
マサチューセッツ州の列車は片っ端からおおりついて動かない、線路も雪かきしてもまた風が吹いて線路に吹き溜まりが出来る、とそんな感じ(メイン州も出来るんだろうけど、何しろ鉄道を通勤に使う人はほとんどいないから…)。
そういえば、マサチューセッツもメインも1月末から「非常事態」が発令されたまんまでしたっけか。