ザラストロ≒ゾロアスター=ツァラトゥストラ
25日の記事でモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」とR.シュトラウスの「ドン・ファン」の根っこが同じものであると書いたが、この2人の「魔笛」と「ツァラトウストラはこう語った」にも共通するものがある。
モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart 1756-91 オーストリア)が書いた最後の歌劇である「魔笛(Die Zauberflote)」K.620(1791。2幕。台本=シカネーダー)に登場する、悪い奴なのか善い人なのかよくわからない高僧ザラストロ。
このザラストロという名はザラスシュトラ(ゾロアスター)から来ている。そして、ゾロアスターはゾロアスター教の開祖である。
一方、ニーチェが「ツァラトゥストラはこう語った(Also sprach Zarathustra)」を発表したのは1885年。
そして、R.シュトラウス(Richard Strauss 1864-1949 ドイツ)がこのニーチェの著作から受けた印象に基づき交響詩「ツァラトゥストラはこう語った('Also sprach Zarathustra' Tondichtung frei nach Friedrich Nietzche )」Op.30を作曲したのは1896年である。
つまり、モーツァルトの「魔笛」もR.シュトラウスの「ツァラ」も、ともにゾロアスター教の開祖と関係するということ。
驚いたですか?
そうでもない?
そうですか……
えっ、ブーレーズがツァラ?、とみんなびっくり
R.シュトラウスの「ツァラトゥストラはこう語った」(まだ中学生のころは「ツァラトゥストラはこう語った」と「ツァラトゥストラはかく語りき」のどっちが正しいのか真剣に悩んだことがあったが、どっちでもよいことだった)は、映画「2001年宇宙の旅」(1968)で、その序奏が使われすっかり有名になったが、今ならグリコのプッチンプリンのCMで使われていた曲と言った方がはるかに通じやすいだろう(ちなみに、私にとっても「2001年宇宙の旅」はちっとも知らない映画である)。
そしてまた、私個人の言い分だが、序奏はすごいですねぇ、カッコイイなぁと思うが、そのあとは悪くはないけどそれほど大きな魅力を感じない交響詩である。
そんなに好きでない曲を取り上げて申し訳ない気もするが、偏食はよろしくないということも大人なら考えなければならない。大人って大変なのだ。
なお、曲は9つの部分からなっており、序奏に続き、現世に背を向ける人々について/大いなる憧れについて/喜びと情熱について/墓場の歌/学問について/病より癒え行く者/舞踏の歌/夜のさすらい人の歌、となっている。
今日はブーレーズ指揮シカゴ交響楽団の演奏を。
大人っぽい演奏ともいえるし、なんだか人間味がない演奏とも言える。
この録音が最初にリリースされたときには、あのブーレーズが「ツァラ」を振るなんてと、驚きというか意外性をもって迎えられたが、演奏に対する評価もずいぶん分かれたようだ。
透明で明晰だが人間味がないというブーレーズの演奏によく起こる感想もあれば、けばけばしてなくて良いと評価する声もある。
私は(もともとこの曲自体に執着がないせいなのか)この演奏に大きな違和感を覚えることはないが、でも、同じシカゴ響との演奏ならショルティ盤に軍配を上げたい。
1996年録音。グラモフォン。