王子が王子を賞賛
もともとは特に好きなわけではなかったが、正月に私はスモークサーモンが好きになった。
いや、煙に燻された鮭に恋したわけではない。食べても抵抗がなく、舌が慰撫され、好きな食べ物の1つに加わったという意味である。
スモークサーモンの独特の味-それはスモークサーモンの風味としか表現のしようがない-が、もともと生魚が苦手で、加熱したとしても魚よりも肉の方が好きな私には、積極的に摂取することをためらわせていた。
しかし、おせち料理の一環として購入した王子サーモン(の切り落としお得パック)を、マリネとかスモークサーモンらしい食べ方ではない食べ方をしたところ、好きになったのだ。
ただし、どこのスモークサーモンでも良いというわけではない。数少ない食べ比べの結果、王子サーモン以外のスモークサーモンは口に含んだときに生臭さというか鮭臭さが強く、そりゃ私だって酒臭いことはあるものの、苦手である。スモークサーモンは王子に限ると、王子のような私は確信している。
こんなところにもマッサンが!
王子サーモンは本社は銀座にあるが、本店は北海道の苫小牧市にある。
苫小牧といえば神の町だ。違った。紙の町だ。王子製紙もある。
1961年に当時の王子製紙の副社長たちがヨーロッパ視察に行ったときに、ロンドンのレストランで食べたスモークサーモンのおいしさに感動。そして、その原料が苫小牧沖で獲れたオースケ(時知らず)だと知り、なんとしても日本で美味しいスモークサーモンを作りたいと考え、試作を始めた。それが王子サーモンの誕生につながるのである。
副社長のOKがなかなか出ない日々が続いたが、スコットランドに滞在していた時にスモークサーモンも研究していたニッカの竹鶴政孝(そう、マッサンである)からウイスキーの樽が最適の材料と教えられ、原酒樽の廃材から作ったおがくずで燻したところ、あのロンドンのスモークサーモンの味が再現できたという。
そっか!寿司ネタにもなっているのか!
で、私も洋食としてスモークサーモンを食べるという発想しかなかったが、正月にわさびで食べてみた。
と、なんと美味しいことか!
なんでこういう食べ方を思いつかなかったのだろう。
そして何より、繰り返すが生魚があまり得意ではない私にとっては、サーモンの刺身よりも数十倍食べやすいのである。
考えてみれば、私が好きな(といっても人生の中で2回しか食べたことがないが)駅弁「サーモン寿司」はスモークサーモンをネタにした押し寿司だ。
わさびだけではなく酢かレモン汁を少しかけて(そのままでも十分に塩気はあるが)しょう油をちょこちょこっとつけて食べると、まさに「サーモン寿司」のしゃり抜きの味わいだ。ということは、もう説明の必要もないだろうが、これをおかずにしてご飯を食べると疑似的な「サーモン寿司」になってしまうのである。
イギリス、王子……ですけれども、今回はデンマーク
クラーク(Jeremiah Clarke 1674頃-1707)の「デンマーク王子の行進(The Prince of Denmark's March)」。
「トランペット・ヴォランタリー(Trumpet Voluntary)」の名の方が知られているかもしれない。また、作曲者についても、長い間パーセルの作と思われていた。
たぶん、誰でも一度は聴いたことのある輝かしく華々しい曲である。
とりあえずはニュー・イングランド・ブラス・アンサンブルのCDをご紹介。
1962年録音。ソニークラシカル。
偶然だが、21日の北海道新聞朝刊に王子サーモンの特集記事が載っていた。
いずれにしろ、私としてはサーモンは大王でも女王でもなく王子に限るし、ポケモンはピカチューがいちばん人気だろう。
はい、スモークサーモンは高いです。ですからウチで買うのは端切れを集めたお買い得パックです。サンドウィッチも一般的ですね。でも、やはり私にはちょいと……です。