“良く売れてる楽譜”という意味ではなくて
「注文の多い料理店」は宮沢賢治の童話だが、『注文の多い楽譜』というと、ご存知の方も多いと思うが、マーラー(Gustav Mahler 1860-1911 オーストリア)である。
例えば、彼の交響曲第7番ホ短調「夜の歌(Lied der Nacht)」(1904-05)の楽譜を見るとこんなことが書かれている(掲載譜は音楽之友社のスコア)。
傷めちゃうかも
模倣ったって、聞いたことないし……
だいたい?
ちょっとだけ?
どんなポーズで?
はい……
これだけあーだこーだ注文をつけても、指揮者とオーケストラが違うと演奏も異なる。
最後の譜面の指示なんて、逆にとらえれば、ほかの箇所は書かれたとおりに演奏しなくてもいいのかなと思えなくもない。
そんなわけで、同じ曲のCDを何枚も買わなきゃならないハメになる。
数ある7番の録音のなかでも、ほかの多くの演奏とはまったく異質なのがクレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管弦楽団の演奏。
ここに書いたように、異様なまでにテンポが遅いのだ。
もしマーラーがこの演奏を聴いたとしたら大絶賛するのか?それとも激怒するのか?
興味深いところだ。
1968年録音。EMI。