公園はそのむかし、競馬場だった
村上龍の「希望の国のエクソダス」(文春文庫)の希望の地ノホロは、江別市野幌の地をモデルにしているのは間違いない。
それはさておき、江別市関係の本を最近読んだ。
斉藤俊彦著「馬のいた風景 ユベオツの風に吹かれて」(中西出版)。
ユベオツは“チョウザメのいる川”という意味のアイヌ語で、江別の名の由来になったとされる(諸説あり)。
チョウザメのいる川なんて江別にあったのかな?
かつてここにキャビア御殿がありました、なんて話聞いたことないし……
ヤツメウナギならいまでもちょっぴり獲れるけど。
著者は江別市の郷土資料館長で、あとがきにあるように“江別をおもな舞台として馬と人々の暮らしとの関わりについて書いた”本。発行は2012年。
私は全然馬に興味はないのだが、江別市には関心があるので読んでみた。
江別市もかつては競馬でにぎわったということを初めて知った。
飛鳥山公園の場所に競馬場があり、競馬場が4番通りの北側に移転したあとそこは家畜市場となったという。
あとは江別の歴史に関心があるかないかでこの本の価値や評価が分かれるところだろうが、力作であることは確かだ。著者の馬に対する熱い想いがあったからこそ成し得たのだろう。
私がいちばんおもしろく、かつ、切なく感じた箇所は“えべつ百話(上)”という本からの引用ではあるが、江別で長く蹄鉄師をしていた渡辺長次郎さんという人の言葉。
まんず、まんず、北海道に馬いなくなったのは、あっという間だね。それというのは、みんなこれね、馬喰ばくろうがね、ハム、ソーセージにするのに買い集めてもっていっちゃったもの。ありとあらゆる馬が、全部ハム、ソーセージになっちゃった。なんぼでも売れたんだわ。農家の人、機械の方に金回すのに、みんな台車に積んでしまったんだわ。だからもう、馬喰もなりたたない。開拓から百年。みんなハムになっていなくなっちゃった。
最後の、みんなハムになっていなくなっちゃった、ていうところにキュンときた。
配合が“ニュー”ってこと?
最近コンビーフを食べることがないが、子どものころにたまに食べたコンビーフ。ただしわが家はニュー・コンビーフだった。
コンビーフは牛肉100%だが、ニューの方は馬肉が使われていたのだ。こういうのにニューとつけるところが、これまたなかなか悪よのぅ~。
まっ、“読後充実度 84ppm のお話”と“新・読後充実度 84ppm のお話”に通じるところがなくもない。
店舗に行って確かめてみてはいないが、ニューコンビーフは“ビーフ”が100%じゃないということで“コンミート”と名前が変わっているようだ。
で、ここに書いているように個人的には特に思い入れがあるわけではないもののなかなか便利なので、グールド(Morton Gould 1913-96 アメリカ)の「フォスター・ギャラリー(Foster gallery)」(1938)。
フォスターの歌曲というと皆さんにもおなじみのメロディーがたくさんあるはずだが、グールドはそれを管弦楽の13曲のメドレーに仕立てた。便利だというのは、この曲でフォスター巡りができちゃうから、という意味。
第1曲がいきなり「草競馬」。さらに第5曲、第9曲、第12曲が「草競馬変奏曲」である。草競馬への思い入れがハンパじゃない。
クチャル/ウクライナ国立交響楽団の演奏で。
1999年録音。ナクソス。