ローカルでの高速の必要性
さて、無線LANディスク(NAS)の話である。
前回書いたように、これまでもインターネットを利用する分には、さして遅さを感じていない私だった。しかし、PC と NAS(NAS というのは Network Attached Strorage の略) の間の通信速度の遅さに、「カメか?こいつは!」と、困ってしまってワンワンワワンになってしまった。
契約している光回線の速度以上の能力をもつ無線LANルーターを使う意味なんてないという人もいる。
だが、光回線による外界との通信以外の、室内の閉鎖されたネットワーク(ローカルネットワーク)の中では、高速な環境でないとみじめな思いをするケースもあるってわけだ。
私もNASを使い始めるまで、そんなこと考えたこともなかった。
無線ルーターの方は最大 867Mbps の能力がある。
なのにカメ並みの速度しか実現しないのは、PC側の事情による。
それはわかっているが、それにしても遅すぎないか?
私が使っているNASはデータ転送の速さを前面に打ち出しており、その最大転送量は116MB/s(理論値。以下も特に断らない限り同様)である。
だから、1秒間に116MBという最大値ははなから実現しないとわかっていても、せめてその半分、いや3分の1の恩恵を授かりたい。
8bps=1B
釈迦に説法かもしれないが、ここであらためて単位について説明しておこう。
通信速度で出てきた Mbps は Mega bit per second の略で、1秒あたりに送れるビット数である。
54Mbps なら 1秒間に54メガビットのデータを転送できる。
1B(バイト)は8ビットなので、bps をバイトに換算するには8で割ればいい。
300Mbps ならば1秒間に 300÷8=37.5 メガバイトのデータを送ることができる。54Mbpsだと 6.75MB だ。
逆にこのNASの転送速度116MB/sをビットに換算すると 、928Mbps。だからいま使っている867Mbps(108MB)の無線LANルーターでは能力不足。どんなにがんばっても最大値は108MB/sまでということになる。
ちなみにマウスやUSBメモリ、あるいは外付HDDを接続するUSBポートの速度は、USB3.0で5Gbps(625MB)、USB2.0 だと480Mbps(60MB)である。
つまり、このNASが理論値通り働いたあかつきには、同じデータならUSB2.0ポートに挿しこんだUSBメモリへ転送する場合に比べると、約半分の所要時間で済むことになる。
ところがである。
リッピングした音源ファイルをNASにコピーして、私は立ちくらみがした。 1ケタ間違ってません?
転送スピードが2MB/秒前後しか出ていないのである。
換算するのも虚しいが、16Mbpsである。
このPCの内蔵LANががんばってだしている平均通信速度は 54Mbps(6.75MB)だ。
だったらせめてそれに近い 6MB くらい出てくれてもいいようなものだ。私がPCならそのぐらいのことは果たしてご主人様を喜ばすに違いない。
単純な計算になるが、取り込んだCD1枚分のFLAC音源ファイルのサイズを 400MB と考えると(FLAC形式に圧縮しない、CDそのものの最大容量は700MB)、 この圧縮ファイルを毎秒 2MB で送るのに 200秒、3分もかかることになる。
6MB のスピードが出てくれれば約1分。
3分ぐらいならいいじゃないかって?
まっ、カップヌードルが出来上がると同時に、転送は終わる。
でも、1枚ならいい。がまんもできる。
先日、すでに外付HDDに取り込んであったCD約100枚分のファイルをNASにコピーしたところ、5時間以上かかった(コピー当初は終わるまで14時間かかるという途方に暮れる表示が出た)。
朝起きて作業を開始し、その間シャワーを浴び、朝食をとり、コーヒーも飲み、スーパーに買い物に出かけて帰ってきて、さてお昼は何にしようかしら(マルちゃん正麺のしょうゆと味噌のどちらにしようかしらん?)とぼちぼち考え出したころに、ようやくコピーが終わったのだった。
転送速度が 2MB って、いくらなんでもひどすぎないか?
NASが本来持つ能力の1.7%しか発揮していないことになる。
送るのが遅いということは、当然受けるのも遅い。
NASにある音源をPCで再生すると、それだけだと問題ない。
こういう計算が正しいのかどうか自信はないが、400MBに圧縮された音源ファイルが再生時間で70分とする。
1秒あたりのサイズは0.095MBなので、NAS→PCに毎秒2MB平均で信号が送られてくれば、音楽再生に遅れを取ることはない。
ただこのように再生しているときに別な作業でNASにアクセスすると、CDでひどい傷がある箇所にピックアップが差しかかって、そこで進めも戻れもせずに繰り返しキュインキュインするような状態になる。別なアクセスと競合し転送速度が極端に落ちてしまうのだ。
私は設定が間違っているのではないかと調べた。
だが、マニュアルを見ても「カメモードになっていませんか?」なんて書いてないし、そもそもマニュアルに書かれているとおりに設定したわけで、ほかに手の施しようがない(どういう原因が考えられるのか見当がつかない)。手の施しようがないので、設定に間違いはないと信じるしかない。本体の正面と背面のランプもみな正常に光っている。
NASはLANケーブルで無線LANルーターに接続しているわけで、この間の大きな減速は考えられない。
つまり、PCと無線LANルーターの通信速度を上げるしかない。
いまの平均速度 54Mbps をもう少し向上できないか?PCの能力限界の 300Mbps にできるだけ近づけることができないか?
せめて最大値の半分の 150Mbps にまで上がってくれれば、単純に54から150へと3倍の 6MB は出るかもしれない(どっちにしろみみっちい話だ)。
速度アップというほとんど無理そうな困難な課題に、私は真正面から取り組むこととした。
ふだんは物置部屋になっていr部屋でゴソゴソと
まず、無線LANルーターの設置場所。
私はリビングでPCを使っている。しかし無線LANルーター(図のAirPort**)は、トイレの前を通って玄関側の別な部屋にある(といってもわからないだろうけど)。
というのも、光回線のジャック(モジュラージャック)がその部屋にあるからだ(図の地球の絵にあたる)。
まず、その部屋の隅に置いてあったルーターを壁から離し、できるだけ中央に置いた(部屋の一辺の中央ということで、部屋のど真ん中ではない)。これで少しは電波が強くなるかもしれない。
また電波干渉を避けるために、ワイヤーラックの上のルーターの横に置いてあるコードレス電話を、できるだけ離すために床に置いた。 電話が日常過ごす部屋にないのは極めて奇妙なことだが、上に書いたようにモジュラージャックがあるのはこの部屋だけ。だから、ホームゲートウェイ(図のPR-**MI)につながなければならない電話の充電器(台座)は、悲しいかな、この部屋に置くしかないのである。
もっとも、2.4GHz帯の電波はコードレス電話や電子レンジの干渉を受けると言われるものの、これまでの経験では電話を使ったりレンジを使ったときに通信が切れるといった現象に遭ったことは私はない。
それにコードレス電話機は、使わずにただ充電器の上に置かれている分には、電波は出していないだろう。たぶん。
アイ・オー・データ機器のサポート・ページを見てみると、USB接続した外付HDDが電波干渉することがあると書いてあった。
外付HDDはPCのすぐ横に置いてある。
これは改善につながるかもしれない。
HDDに付属していた 1m のUSBケーブルを、2m のものに取り換えてPCから離してみた。
にしても、そんな甘えた聞き方しないでぇ。
ついでに-関係ないと強く思っているが、絶対に関係ないとは(私の知識では)言い切れない-“ワイヤレスネットワークのプロパティ”で“インテル接続の設定を有効にする”を“無効”にした。
同じ画面で“さらに優先順位の高いネットワークが利用可能な場合は、そのネットワークに接続する”のチェックも外した。
こうすることで、もっといいところがないかなぁとキョロキョロせずにAirPort**一筋で腰を据えてくれるだろう。落ち着いてくれることで、通信が安定するかもしれない。
床に正座、から救われた電話機
そのあとで“ワイヤレスネットワーク接続の状態”を見てみると、おぉっ!
たまに 54.0Mbps の数値が出るが、78.0、104.0、117.0、130.0、144.0 という、大喜びでとまではいかないまでも、努力が報われる数字が表示されるようになった。
でも、ここに表示される速度って、PC⇔ルーター間の速度なんですよね?
そのことも、実は私には確証がない。
期待に胸ふくらませ、でもどうせだめだろうという自虐的な気持ちの中、ふたたび外付HDDからNASに音楽ファイルをコピーする試験を行なった。
▽※$◆
![](https://parts.blog.livedoor.jp/img/emoji/2/ic_break_heart.gif)
まったく速度は変わらない。
自虐は的中した。
まいった……
とそのとき、私はあいつのことを思い出した。……まだ続く
コンパクトだが、交響詩の傑作
ボロディン(Alexander Borodin 1833-1887 ロシア)の交響詩「中央アジアの草原にて(On the steppes of centrak Asia)」(1880)。
交響詩と呼ぶには小さな(身近な)作品だが、交響詩-標題音楽の1つの形式だが-で、これほど情景がわかりやすく描写されたものはない。
ひじょうに有名だが、ポピュラーになりすぎて、逆にいまでは演奏されたり、聴かれる頻度が落ちているかもしれない。
作品についてはこの記事で詳しく書いているが、場所は中央アジアの草原。
アジアの隊商がロシア兵に護衛されながら進んで行く様子を描いたもので、楽譜の扉には以下のように記されている。
《見渡すかぎり広々と広がる中央アジアの広原を平和なロシアの歌が不思議な響きを伝えてくる。遠くから馬とらくだのあがきに混じって東洋風の旋律が響き漂う。アジアの隊商近づく。かれらはロシア兵に護衛されながら果てしない砂漠の道を安全に進む。近くなり、やがて遠ざかっていくロシア人の歌とアジア人の旋律がうまく合して不思議なハーモニーを作る。そのこだまは次第に広原の空へ消えていく》(全音楽譜出版社のミニチュア・スコア解説より)。
ここに書かれている通り、ロシアの歌とアジアの歌が交互に聴こえてきて、それが融合し、遠のいていく。
いやまったく、いつ聴いても新鮮な気分にさせられる。
N.ヤルヴィ指揮エーテボリ交響楽団による、このような小さい曲ながらも丁寧に、そして民族色がきちんと表現されている演奏を。
1989年録音。グラモフォン。