観葉植物や多肉植物を育てることが好きな人にとって、バナナを育ててみたいという思いが多少なりともあるのではないだろうか?
私はある。
先日、ブログをリンクさせていただいているLimeGreenさんの記事にバナナの花と実の写真が載っていて、その思いがよみがえった。
むかし、北大植物園だったか円山動物園の温室で初めてバナナの木を見、熱帯オーラをプンプン放っている大きな葉、ちょいとやらしっぽい色の花、まだ全然食べられないだろうけど妙に園芸心をそそる濃い緑色の実に、「あぁ、こんな木が家にあったらなぁ。サル年生まれの父さんも喜ぶかも」と思ったものだ。あのときの衝撃は忘れられない(そのくせ見た場所の記憶があいまいだけど)。
そのころの私は夢あふれる少年だったのだ。学校の体育館のように広い部屋がある家を建て、そこには鉄道模型のレールを張り巡らす。庭にはバナナの木が育つに十分な広さと高さのある温室も建てる。
そういったアホなことを考えていたのだった。
当然のことながらそういう妄想はことごとく実現しなかった。
鉄道模型はNゲージの車両1つ買うにもこづかいが不足した。
バナナは店で買うものであり(それも私が買うのではない)、鑑賞用植物ではないことを理解した。
だいいち、“観葉植物の育て方”という類の本にはバナナの木なんて出てこない。
そんなわけで、その後-ずっとずっとあとになって-の私は那覇空港の売店で買ったミニパイナップルを育てることで満足していた。が、そのミニパイナップルにしたって育ててから5年以上たつというのに元気なのは葉っぱばっかり。一度も実がついたことがない。
小さいことはいいことだ!
と、ここまで書いてきて、あまり記憶にないが果たして“サカタのタネ”のカタログにもバナナは載っていなかっただろうかという疑問がわいてきた。
折悪しく、マンションに今春号のカタログがあった。
すると、何ということでしょう!
いままで見落としていたのだろうか?それとも魔法のように突如このページが出現したのか、とにかくバナナがあるではないか!
しかも“小ぶりなサイズで結実する極わい性バナナ”とある。樹高60~80cmで実がつく。写真の男の子も「甘くてとってもおいし~」と言っている。目が少々悲しげだが……
もちろん鉢植えで育てられるし、1本で結実するという。
まいった。
私の性格上、これを放っておけるわけがない。矮性種のバナナとは、まさに私の青春時代の夢を結実させるためにあるような品種ではないか!
即注文(折悪しく、と書いたのはそういう意味だ。予期せぬ出費)。
LimeGreenさんは罪な人……、いや、夢をかなえてくださってありがとうございます。
悲しげな黒人の歌
ゴットシャルク(Louis Moreau Gottschalk 1829-69 アメリカ)の「バナナの木(Le bananier)」Op.5(1845-46)。「黒人の歌(Chanson negra)」という副題をもつピアノ曲である。
私の今のやや過剰と言えるほどの気持ちの高ぶりとは反対に、ほの暗い哀愁に満ちた音楽だ。
ペナリオのピアノで。
1992年頃の録音。EMI。