有力な情報をお寄せいただき再トライ
伊福部昭の碑を拝もうと音更町の“音和の森”に行ったのは夏真っ盛りのころだった。
その碑があることを新聞報道で知ったのだった。
が、場所がよくわからない。いや、皆目見当がつかない。
その森は地図をご覧になるとおわかりのように、異様に南北に長いのだ。
新聞記事には東和西2線という住所が書いてあるので、そこを目指した。目指したといってもかなり漠然とした住所だ。だって、あまりにも縦に長過ぎるではないか!
北端にある“展示場”に行っても碑はなく、だからといって数ある荒れた鬱蒼とした入口らしき小道すべてに足を踏み入れるわけにもいかず、ついには霊園入口という標識を見てあわてて引き返したりと、骨折り損のくたびれもうけであった。
ところが先日、私のブログ記事に、碑のある場所がわかり行ってきたというコメントが入った。Atsushiさんからである。
詳しくお教えいただくと、なんとなく目星がついた。なんともありがたい情報だ。
で、再度碑を目指した。
たまたま仕事で音更に行く用事があり、かなり寒かったものの天気が良かったし、次の訪問先のアポ時刻まで時間があったので寄り道したのだ。ちょっぴり、すいません…… ビジネスでの報告の鉄則は、結論から
そして、結論から言うと、この情報のおかげで私は伊福部昭の碑の前に立つことができたのだった。
「昭和小学校から4本西側の道路」というAtsushiさんからの情報。
たぶん、この昭文社のスーパーマップルにある西3線に違いない。実は前回もこの道を北上した。その結果、この地図よりさらに北にある霊園入口にたどり着いてしまったのだった。
が、今回の情報では「右手に大きな畑があり真ん中に砂利道」とある。
それらしき景色はすぐに目に飛び込んできた。
地図で“西3線”と書かれている“西”の字のすぐ上にある道だ(地図の①)。
そして、すっごく目立たないが、そこには一応“音和の森”の看板があった。写真でははっきり見えて目立っているように思えるが、実際に車を運転していると、高さが低いし看板の木の地色と文字のコントラストが乏しく、ほぼ完ぺきに見落とすような存在だ。
ここで右折して砂利道に入り、その看板のすぐ横にある銀色に光り輝く農機具庫らしき建物の前に車を停める。
確かに砂利道が畑の真ん中に森に向かってまっすぐのびている。
私はその道をジャリジャリ音をたてながら歩き出した。
なんだか人の畑のなかを勝手に歩いているような気がしないでもない。でも、間違いなくここは公道だろう。だって自然公園につながる道なんだから。 あたりには人っ子1人いない。
もしここでツチノコが現われ私を噛んだら、数時間誰にも気づかれずにそのまま死んでしまうかもしれないと思った。
でも、そんなことはなく、道の両側の畑が切れ、シラカバの横にたどり着いた。
道の先に森の入口が
シューマン(Robert Schumann )1810-56 ドイツ)のピアノ曲、「森の情景(Waldszenen)」Op.82(1848-49)。
作品についてはこちらの記事をご覧いただければと思うが、次の9曲から成る。
1. 森の入口
2. 待ち伏せする狩人
3. 孤独な花
4. 呪われた場所
5. こころよい風景
6. 宿にて
7. 予言の鳥
8. 狩りの歌
9. 別れ
このなかでは「予言の鳥(予言する鳥)」が有名で、単独で取り上げられることもあるし、村上春樹の「ねじまき鳥クロニクル」でも取り上げられ人気が上がった(のだろうか?)。
紹介するCDは前回と同じくカツァリスのものを。だって、この曲のCD、私はこれしか持ってないんだもん。
1986年録音。テルデック。
やはりわかりにくい案内図
入口には森の地図が描かれた看板があるが、“伊福部”の文字はない。
もう少し先に進む。
“馬の碑”というのが建っている。
違う、ちがう!
私が探し求めているのは“馬の碑”ではなくて、“伊福部の碑”なのだ。
まったく説明文を読んでこなかったけど、“馬の碑”って呪われた場所ってわけじゃないよな……
いや、お馬さんに感謝する碑なんだろう、きっと。 道は“馬の碑”の横をそのまままっすぐに上がっていくものと、左に伸びる車1台分の幅のもの(こういうのって片側一車線に対して、両側一車線とか言うのだろうか?)がある。
私はこういう時の王道である(と勝手に決め込んで)直進、つまり“馬の碑”の横の階段とも言えない階段がある道を選んだ。
その階段(というか、ただの坂なら登りにくいという配慮から細い丸太を置いてある。が朽ちかけていてかえって危ない)もだんだんぞんざいな造りになり、最後はほとんど斜面。
ガサガサガサ。
枯葉を踏む音が妙に響き、ちょっぴりアタイ、心細くなる。まるで今の自分は孤独な花だ。
The 貫通!
そしてほどなくして登りつめた。
そこには待ち伏せする狩人が「あずさ2号」を歌ってくれた、ってなことがあるはずもなく、目の前に開けた光景は、これまた私としては想定するはずもなかった畑。
森の反対側に通り抜けてしまったのだ。 こころよい風景……じゃなくて、碑はどこなんだ!碑は!
またはずしちまったわい。
何が王道だか!
唖然として、呆然として、愕然とした。
私は失意のまま、転ばないよう(齢をとるとけっこう簡単に斜面で滑って転んでしまうものだ)足元に十分に気をつけて(だってスーツのお尻が泥んこになったらこのあとのお客様のところに行けなくなる)“馬の碑”まで戻った。
「ひひ~ん」
小さな声でつぶやき、ここでへこたれるもんかと、私は根性を入れ直した。
鳥がチュンチュン鳴いていた。
……続く
まったくです。すっごく中途半端な案内板ですし。