MozartHarnoncourtEarlySyms  個性的な様式が確立
 アーノンクルール/ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスによる「モーツァルト初期交響曲集」のCD6。


 このディスクには、モーツァルト(Wolfgang Amadeus Mozart 1956-91 オーストリア)の以下の5作品が収録されている。


 ① 交響曲第20番ニ長調K.133(1772)
 ② 交響曲第21番イ長調K.134(1772)
 ③ 交響曲ニ長調K.161+163(K6.141a)(1773-74)【第50番】
 ④ 交響曲第22番ハ長調K.162(1773)
 ⑤ 交響曲第26番変ホ長調K.184(K6.161a)(1773)


 初期の交響曲について道しるべのように書かれている資料はそう多くないが、20番あたりからはぼちぼちと作品の解説も増えてくる。つまり、芸術作品として高い価値、意味を持ってくるわけで、音楽はぐっと“モーツァルトらしく”なってくる。


  イタリア旅行のあとザルツブルクで作曲
 モーツァルトは1772年10月から翌73年3月まで第3回目となるイタリア旅行に出かけている。
 交響曲第20番は1772年7月に、第21番は同8月に書かれたもので、第2回イタリア旅行からザルツブルクに戻っていた時期に当たる。
 また、第22番は73年4月に完成。第3回目イタリア旅行からザルツブルクに戻った翌月の作ということになる。

 番号が飛ぶが、第26番は73年3月の作品。ザルツブルクにもどってすぐに書かれた。

 実は、ここでも書いているように、1773年3月以降に書かれた交響曲の作曲順は、26-27-22-23-24-25-29-30-28で、ナンバリングが作曲順のとおりにはなっていない(だからこそ第26番のK6.番号(すなわち最新の時代考証順の番号)は、第22番のK.番号より若くなっている)。


 交響曲第20番は4楽章構成。第1楽章のトランペットの響きが華々しく、詳しいことはわかっていないが祝祭音楽として書かれたと考えられている。また第2楽章は1本のフルートと弦楽のみで奏され、素朴なかわいらしさを感じさせる。第3楽章のメヌエットは力強い舞踏であり、終楽章も祝祭的な気分にあふれている。


 交響曲第21番も4楽章構成。優しげなメロディーが躍動的で、フルートの音が印象的な第1楽章。モーツァルトらしいまったりとした、でもちょっぴり物憂げな第2楽章。優雅な第3楽章メヌエットに強弱のアクセントが効果的な第4楽章。すっかりモーツァルトらしさが確立されている。


 交響曲第22番は3楽章構成のイタリア式シンフォニー。この曲も祝祭的な気分にあふれている。アクセントを強調した第2楽章、そしてやんちゃな終楽章となかなかおもしろい。


 交響曲第22番よりも先に書かれた第26番もイタリア式の3楽章構成。とても激しい音楽で、C.P.Eバッハの疾風怒濤(シュトゥルム・ウント・ドラング)なシンフォニアを連想させる(ちなみにC.P.E.バッハの「6つのシンフォニア」Wq.182は1773年の作である)。
 モーツァルトの小ト短調交響曲と呼ばれる第25番が短調の怒りだとしたら、26番は長調の怒りってところだ。
 

 過去に第50番という番号がついていた交響曲ニ長調は、歌劇「シピオーネの夢(Il songo di Scipione)」K.126

(1770)の序曲が第1楽章と第2楽章となっており(K.161)、それに終楽章(K.163)が書き加えられた。ケッヘル目録第6版ではK6.141aとなっている。交響曲の形にされたのは1772年、あるいは1773~'74年と考えられている。いかにも序曲といった感じの曲だが、あとで付け足された第3楽章へも違和感なくつながっている。


 アーノンクールの演奏はCD1~5と同様、これらの初期作品が1ランクも2ランクもグレードアップしたように聴かせてくれる。特に第26番の暴れ方は聴いていてワクワクさせられる。


 録音は第20番が1994年、それ以外は1996年。ドイツ・ハルモニア・ムンディ。


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