BrittenChoralEdition2  商品在庫を隠しておいてくれたら……
 早いものであと2カ月でクリスマス・イヴである。

 浦河に住んでいた5歳から小学校低学年のとき、近くに品田商店というお菓子から文房具、おもちゃまで置いているいわば個人百貨店のような店、つまりはよろず屋があったが、そこの店主のおじさんが、毎年イヴの夕方、私たちが住んでいた一軒家の裏口にこっそりプレゼントを置いて行ってくれていた。


 商店のおじさんが私にクリスマス・プレゼントをくれたのではなく、事前に親が注文していたおもちゃを置いてくれたわけだ。

 そのころの私がサンタクロースの存在を信じていたかどうか記憶にないが、「これは品田のおじさんが置いてったのだ」と認識していたということは、つまりはサンタなんていないとわかっていたのだろう。
 だが、もしや品田のおじさんの名前が三太だったら傑作なのに、と今になって思う。

 それにしてもプレゼント決定までにどういう複雑ないきさつがあったのかわからないが、毎年私が事前にほのめかした希望の品が届いたためしがなかった。

 トミカで遊ぶガソリンスタンドが欲しいと思えばヘリコプターのおもちゃが届くし、青函連絡船の巨大プラモがいいと思ってたら鉄道模型が届いたという具合だった。
 そして、同じものが商店のウィンドウならぬ、窓ガラス越しに置いてあるのを、翌日に発見するのである。
 もしかするとおじさんが見込んで仕入れた商品を、積極的に親に勧めたのかもしれない。

 それにしても品田おじさんのテクはなかなかだった。物音ひとつ立てずそっと裏口のドアを開けプレゼントを置いていくのだ。もし発見が遅れれば、物音ひとつ立てずそっと裏口のドアを開けプレゼントを持ち去る者があっても気づかなかったかもしれないが、そういう被害には遭わずに済んだ。


 数年前に浦河町を訪れたが、残念なことに品田商店はすっかりなくなっていた。
 われわれが札幌に引っ越したあとほどなくしておじさんは亡くなったと聞いたが、店自体もその後畳まれたようだ。まぁ、いまやコンビニの時代だからなぁ。
 けど、コンビニにはお菓子の入ったブーツやクリスマス・ケーキは売ってても、箱がやや日焼けしたヘリコプターは売ってない。


BrittenChoralEditionBox  少年合唱の無垢な声とはまた違う魅力
 ブリテン(Benjamin Britten 1913-76 イギリス)の「キャロルの祭典(A Ceremony of Carols)」Op.28(1942)。
 少年合唱とハープのための作品で、ウェストミンスター大聖堂少年合唱団のために作曲された。


 曲は11曲から成るが、第1曲と終曲はグレゴリオ聖歌を引用、ほかの9曲は14~15世紀のイギリスの詩が用いられている。

 今日はスパイサー指揮フィンジ・シンガーズの演奏を(ハープはDrake)。


 フィンジ・シンガーズがどういう合唱団なのか私はよく知らないが、耳に届く声は少年合唱に思えない。女声だ。それも歌い回しが(変な言い方だが)本格的で、色気があり、表情づけも大人びている感じがする。

 少年合唱による演奏とはまた違う透明感もある。
 が、クセになる演奏だ。


 1996年録音。シャンドス。

 ブリテンの合唱作品集(3枚組)

 ウチの子どもたちが小さいときのこと。
 12月になるとドラえもんでのび太が「どうせサンタクロースなんていないんだぁ!」と叫ぶシーンがあった。
 子どもたちは何のリアクションもしていなかったが、サンタはいないものと知っていたのだろうか?
 それともそんな信じがたい言葉は耳に入らなかったのだろうか?